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第三章 トルド村
第三十八話
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まるで、モンスターの咆哮のような声が響き渡り、家の中にいた者も、外の衛兵達も耳を塞いだ。
「な、なんだぁ!?」
突然、ゲルツの重量感ありそうなカラダが宙に浮かぶ!
「た、助けてくれぇ!」
手足をバタバタさせるが地面ははるか下だ。そのまま、衛兵の集団へゲルツのカラダが放り込まれた。
「うわぁ!」
ゲルツの重量に耐え切れず、数人の衛兵がなぎ倒され、下敷きになった。
「ハ、ハ、ハ! やはり、オマエだったか! エリオット!」
敵味方関係なく混乱しているという状況で、高笑いする男――マスケラだった。
「悪霊になるほど私が憎いか! オモシロイ。ならば私を殺せばイイ! そうすればオマエは本物の悪霊になって、この世界の脅威となろう!」
『――!?』
エリオットはわずかに残った意識でその声を聞いた。
(自分を殺せ?)
どうしてそんなことを言える? ヤツは何者なのだ? エリオットはマスケラを『鑑定』した。
(――!?)
マスケラのステータスを見て、エリオットは驚いた。
(ということは、ヤツは――)
そのステータスの意味を理解しようとするのだが、暴走した魂達が衛兵達を無差別に襲い始めたのだ。
(もうダメだ。悪霊を形成する魂の激高を止められない! このままでは自分も飲み込まれてしまう)
『グワァァァァァァ!!』
憎い。ルガーが憎い――ゲルツが憎い――
暴走した悪霊の魂が衛兵の集団へ、そして、その後方のマスケラへ向かう!
(ダメだ! アイツを――ルガーを殺しても意味はない!)
わずかに残ったエリオットの自我がそう叫ぶのだが、怒り狂った魂達を止めることはできない!
「そうだ! 私はココだ!」
鞍上で両手を広げ、猟奇的な笑いを見せるマスケラ。『殺したい』という悪霊の本能だけがエリオットを動かし、相手のムネに魔力の槍を突き刺そうとした。その瞬間――
「待て! エリオット君! 人を殺したら、もはや後戻りはできないぞ!」
(――えっ!)
人を殺したら、後戻りできない――? どういう意味だ?
わずかに残っていた理性がその言葉を聞き入れ、動きを止める。
『サラさん!?』
エリオットは思念を飛ばす。家から飛び出してきたサラがこちらに向かってきたのが見えたからだ。
「サラ――だと!?」
マスケラが帝国の魔女の姿を確認して、目を見開いた。しかし、すぐにいつもの不敵な笑みに戻る。
「ワ、ハ、ハ! アナタまで出しゃばってくるなんて! 凄い! 凄いぞ!」
異常なまでに、気分が高揚しているマスケラに誰もが言葉を詰まらせる。
「さあ、私を殺せ! 憎いだろ? 遠慮など要らん! 私を殺して、真の悪霊となれ!」
『――それって、どういう……』
「耳を傾けるな! エリオット君!」
サラの声をあざけ笑うマスケラ。
「どうした? 私を殺さないのか? 悪霊になっても、『あまちゃん』だな、オマエは!!」
その狂気な表情にエリオットは悪霊になって初めて恐怖を感じる。
(なんなんだ――コイツは?)
「アイザック! やめろ! これ以上罪を重ねるな!」
――えっ? アイザック?
サラがそんな名前を叫んだため、エリオットは混乱した。
「いまさら何を言う! 『姉さん』ぶるんじゃない!」
マスケラのそれは激しい口調だった。姉さん!? どいうことだ!?
「アイザック! オマエが生きていただけでも、私はウレシイ! だから、もうやめろ」
「うるさい! 今まで私がどれだけを地獄を味わってきたと思っているんだ! もはや、この世界に復讐するまで私は止まらない!」
マスケラは足元に倒れていたゲルツを持ち上げた。
「エリオット見ろ! コヤツは、相手の敵意を他人へ向けさせるスキルを持っている」
『――!?』
「それで、仲間を犠牲にしながら自分は出世してきた悪人だ」
他人に敵意を向けさせる? そんなスキルがあるのか? しかし、それが本当なら、ギルバートが言っていたこともうなずける。でも、どうしてマスケラがそのことを?
「そのスキルを与えたのはプレセルタの盟主、『選ばれし者』だ」
『――えっ?』
ゲルツはスキル持ちになりたいため、プレセルタで『魔人化』の施術を受けたらしい。
「最初は役に立たないスキルだと思ったが、コヤツはそのスキルで冒険者としてのランクを上げて、高ランク冒険者優遇によって衛兵に入隊した。それからは知っての通りだ」
王都衛兵隊長まで出世したゲルツはマスケラ達を王都内部へ潜入させる手助けをした。他にも役人として入り込んでいたプレセルタはいたのだが、魔法省長官暗殺未遂後、そのほとんどが摘発された。しかし、ゲルツは自分のスキルによって、捜査の目から逃れていたのだ。
「許せないクズだろ? 殺したいだろ? 遠慮はいらん。さっさとトドメを刺せ!」
「ダメだ! 話を聞くな!」
「オマエの中にこいつに裏切られた冒険者の魂もあるのだろ? さあ、復讐だ!」
なぜ、そんなことも知っているんだ?
しかし、もはや、エリオットにそれを冷静に考える余裕はなかった――
『ウオォォォォォォォォッ!』
再び悪霊の魂に飲まれかけたエリオットの精神が、ゲルツとマスケラに目掛けて突進した!
「そうだ! 怒りに飲み込まれるんだ!」
刹那――
エリオットの気配がマスケラの前から消えた! あの禍々しい巨大な魔力の塊が!
「な、なんだ!? いったいどうなった!?」
慌てるマスケラにサラは、「ふ……なんとか、間に合った」とつぶやく。
「いったい何をしたんだ!?」
「なに、弱点を逆手にとっただけだ」
「――どういう意味だ?」
マスケラの質問に応えることはせず、サラはこう告げた。
「アイザック、オマエと話がしたい。一対一で」
「な、なんだぁ!?」
突然、ゲルツの重量感ありそうなカラダが宙に浮かぶ!
「た、助けてくれぇ!」
手足をバタバタさせるが地面ははるか下だ。そのまま、衛兵の集団へゲルツのカラダが放り込まれた。
「うわぁ!」
ゲルツの重量に耐え切れず、数人の衛兵がなぎ倒され、下敷きになった。
「ハ、ハ、ハ! やはり、オマエだったか! エリオット!」
敵味方関係なく混乱しているという状況で、高笑いする男――マスケラだった。
「悪霊になるほど私が憎いか! オモシロイ。ならば私を殺せばイイ! そうすればオマエは本物の悪霊になって、この世界の脅威となろう!」
『――!?』
エリオットはわずかに残った意識でその声を聞いた。
(自分を殺せ?)
どうしてそんなことを言える? ヤツは何者なのだ? エリオットはマスケラを『鑑定』した。
(――!?)
マスケラのステータスを見て、エリオットは驚いた。
(ということは、ヤツは――)
そのステータスの意味を理解しようとするのだが、暴走した魂達が衛兵達を無差別に襲い始めたのだ。
(もうダメだ。悪霊を形成する魂の激高を止められない! このままでは自分も飲み込まれてしまう)
『グワァァァァァァ!!』
憎い。ルガーが憎い――ゲルツが憎い――
暴走した悪霊の魂が衛兵の集団へ、そして、その後方のマスケラへ向かう!
(ダメだ! アイツを――ルガーを殺しても意味はない!)
わずかに残ったエリオットの自我がそう叫ぶのだが、怒り狂った魂達を止めることはできない!
「そうだ! 私はココだ!」
鞍上で両手を広げ、猟奇的な笑いを見せるマスケラ。『殺したい』という悪霊の本能だけがエリオットを動かし、相手のムネに魔力の槍を突き刺そうとした。その瞬間――
「待て! エリオット君! 人を殺したら、もはや後戻りはできないぞ!」
(――えっ!)
人を殺したら、後戻りできない――? どういう意味だ?
わずかに残っていた理性がその言葉を聞き入れ、動きを止める。
『サラさん!?』
エリオットは思念を飛ばす。家から飛び出してきたサラがこちらに向かってきたのが見えたからだ。
「サラ――だと!?」
マスケラが帝国の魔女の姿を確認して、目を見開いた。しかし、すぐにいつもの不敵な笑みに戻る。
「ワ、ハ、ハ! アナタまで出しゃばってくるなんて! 凄い! 凄いぞ!」
異常なまでに、気分が高揚しているマスケラに誰もが言葉を詰まらせる。
「さあ、私を殺せ! 憎いだろ? 遠慮など要らん! 私を殺して、真の悪霊となれ!」
『――それって、どういう……』
「耳を傾けるな! エリオット君!」
サラの声をあざけ笑うマスケラ。
「どうした? 私を殺さないのか? 悪霊になっても、『あまちゃん』だな、オマエは!!」
その狂気な表情にエリオットは悪霊になって初めて恐怖を感じる。
(なんなんだ――コイツは?)
「アイザック! やめろ! これ以上罪を重ねるな!」
――えっ? アイザック?
サラがそんな名前を叫んだため、エリオットは混乱した。
「いまさら何を言う! 『姉さん』ぶるんじゃない!」
マスケラのそれは激しい口調だった。姉さん!? どいうことだ!?
「アイザック! オマエが生きていただけでも、私はウレシイ! だから、もうやめろ」
「うるさい! 今まで私がどれだけを地獄を味わってきたと思っているんだ! もはや、この世界に復讐するまで私は止まらない!」
マスケラは足元に倒れていたゲルツを持ち上げた。
「エリオット見ろ! コヤツは、相手の敵意を他人へ向けさせるスキルを持っている」
『――!?』
「それで、仲間を犠牲にしながら自分は出世してきた悪人だ」
他人に敵意を向けさせる? そんなスキルがあるのか? しかし、それが本当なら、ギルバートが言っていたこともうなずける。でも、どうしてマスケラがそのことを?
「そのスキルを与えたのはプレセルタの盟主、『選ばれし者』だ」
『――えっ?』
ゲルツはスキル持ちになりたいため、プレセルタで『魔人化』の施術を受けたらしい。
「最初は役に立たないスキルだと思ったが、コヤツはそのスキルで冒険者としてのランクを上げて、高ランク冒険者優遇によって衛兵に入隊した。それからは知っての通りだ」
王都衛兵隊長まで出世したゲルツはマスケラ達を王都内部へ潜入させる手助けをした。他にも役人として入り込んでいたプレセルタはいたのだが、魔法省長官暗殺未遂後、そのほとんどが摘発された。しかし、ゲルツは自分のスキルによって、捜査の目から逃れていたのだ。
「許せないクズだろ? 殺したいだろ? 遠慮はいらん。さっさとトドメを刺せ!」
「ダメだ! 話を聞くな!」
「オマエの中にこいつに裏切られた冒険者の魂もあるのだろ? さあ、復讐だ!」
なぜ、そんなことも知っているんだ?
しかし、もはや、エリオットにそれを冷静に考える余裕はなかった――
『ウオォォォォォォォォッ!』
再び悪霊の魂に飲まれかけたエリオットの精神が、ゲルツとマスケラに目掛けて突進した!
「そうだ! 怒りに飲み込まれるんだ!」
刹那――
エリオットの気配がマスケラの前から消えた! あの禍々しい巨大な魔力の塊が!
「な、なんだ!? いったいどうなった!?」
慌てるマスケラにサラは、「ふ……なんとか、間に合った」とつぶやく。
「いったい何をしたんだ!?」
「なに、弱点を逆手にとっただけだ」
「――どういう意味だ?」
マスケラの質問に応えることはせず、サラはこう告げた。
「アイザック、オマエと話がしたい。一対一で」
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