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夏
嵐の後は
しおりを挟むあれがあってから夢中に焼肉定食を食べていたから、気がついたら佳祐が同じ焼肉定食を持って席にやってきていた。
「お。お前も一緒じゃん!待たせてわりぃわりぃ。」
「おう。ほんとにだよ。」
「そうイライラすんなよ。待たせた上に定食被りってのは確かに嫌な感じするけどよ、そんだけ仲良いって証じゃんか」
「ちげぇよ。さっき散々な目にあったばっかりなんだよ。」
「なんだなんだ?早く食うから教えてくれよ。」
愚痴を吐きこぼすかのように佳祐にさっきまでのことを話したら、佳祐は口を腕で抑えて笑っていた。
「なんだそりゃ。拓馬、今日お前はついてない日だぞ。信号渡る時気をつけな。」
と、涙目にして笑いながら佳祐が皮肉を言う。そのままのテンションで話を続けてきた。
「その子どうだった?かわいかった?」
そういや、あの子の顔を見た時に感じたあの違和感を思い出した。
会ったことあるようで、はじめましてのようなあの感じ。
一体どこで会ったことがあるんだろうか。
「かわいかったんじゃねーの?そんなのじっくり見てるくらいの余裕がなかったからよ」
「それもそーか!恥ずかしくてそれどころじゃねぇよな!」
「お前声がでかいっての!さっさと飯食って講義室いくぞ。」
次の授業の講義室に早めに行って席を取っておいて、そこで予習と課題に軽く手をつけておこうと考えていた。
とりあえず、人の目が少ない講義室で落ち着いて何かに取り組みたいと思う気持ちが強かった。
食堂のすぐ横にある自販機でいつも通り紙パックのカフェオレを買って、講義室へ向かって佳祐と一緒に歩いていた時だ。
講義室の手前にあるゼミルームの前で、窓ガラスに貼られているプリントを眺めている女の子がいた。
なにしてるんだろう。くらいの気持ちで見つめていたら、彼女がこっちに振り返った。窓ガラスから照らされる夏日のおかげでよく顔が見えた。
さっきのあの女の子だった。
「あ!いた!!」
思わず大きな声を出してしまった。
女の子は小さく口を開いて、あっ。と言ったような感じだった。
少し駆け出して女の子へ近づこうとした時、佳祐が俺の腕を掴んで止めた。
「なにすんだよ。」
その声を消すかのように、佳祐は言った。
「さくらさんだ。」
「え?」
「真優さんの妹さんだよ。」
「まさか…」
駆け出そうとした俺とそれを引き止めた佳祐を見て、さくらさんはあの時と同じように何度も頭を下げていた。
そして、そのゼミルームの扉が開いて誰かが出てきて、さくらさんへ語りかけていた。
「さくら、おまたせ。」
そういうと出てきた真優さんはさくらさんの手を引いて、中庭へと続く廊下へ姿を消して行った。
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