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夏
トライ、アゲイン。
しおりを挟む翌日も翌々日も俺と佳祐は、昨日と変わらない学生生活を送っていたと思う。
いつもの食堂でいつもの定食を食べながら、中身のない会話をして、課題に追われて愚痴をこぼし、そして帰りの電車で揺られて帰る。
でもどうしても昨日のままで残っているのは、あの真優さんのことだ。
これが恋心なんて執着あるやつじゃなくて、不安や心配みたいなネガティブなやつだから余計にタチが悪い。
そんな俺を気にしていないのか、それとももう忘れてるのか、佳祐はあっけらかんとしていて、まさにこの季節の日差しみたいなやつだった。
今日最後の同じ授業が終わり、共に教室を出て、学校の最寄り駅まで向かっている最中だった。
「そういや、今年はいついくよ、海!」
本当にこいつのこういうところが良いところであり、気にかかるところだ。
背負ってるリュックの肩ひもをぐっと掴みながら楽しそうに佳祐が話を進める。
「去年のバーベキューはよかったよなぁ。春の時期の花見みたいな感じでさ、水着美女を見ながら食べる焼き肉…。夏の極楽浄土ってまさにこれだよなぁ。」
染めたてのあの髪がまだ明るい日差しに照らされてなんだか嬉しそうに見えた。
「お前は相変わらずそういうのが好きだよな。そのままじゃまた今年も海になっちまう。」
「じゃあどこかいい案があるんか?」
「んー、キャンプとかは?」
「えー、山行くのー?水着美女いねぇじゃんかー…」
「お前は水着美女が最優先事項なのかよ」
若手漫才師のやりとりみたいな話をしていたら、不意に冷たい釘みたいな無邪気なことを言い出した。
「もし行くとしたらまず真優さんに声かけにいかねぇと。」
たぶんそのとき、俺は驚いた顔をしたと思う。けれど、佳祐は気にせず見もせずに話すのを続けた。
「せっかくこの間、真優さんとお話できたんだし、このチャンスを逃すわけにはいかねぇからな。」
「それもそうだな、声かけるだけかけてみるか。」
きっと心の声がそのままぽんと出てきたんだと自分でも思った。
佳祐のその無垢な勢い加減に相乗りしたような感じにも思った。
そんな気持ちのままに、携帯のメッセージを開いて一言送った。
「もしよかったら、8月にぜひ佳祐と一緒に出かけませんか?」
送ってすぐ我に帰ったかのように、スマホをすぐポケットへ入れ、なんと送ったのか教えろよと戯れてくる佳祐と帰り道を共にした。
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