1 / 10
夏
10年の夏
しおりを挟む
「この間、例の人にあったよ。相変わらず大学内で有名なだけあるなぁ。美人さんだったよ」
キャンパスの少し離れたところにある食堂で、カツカレーを元気よく頬張りながら、こないだ茶髪に仕立てたばかりの佳祐がそう話す。
「お前ほんとにそれ好きだよな。」
「だって、俺の好みにばっちりなんだよ。スタイルも性格も声の色も。」
「真優さんのことじゃなくて、今お前が食ってるやつのこと。」
「なんだ、カツカレーのことか。」
「だって安くて美味くてボリュームがある。お金がなくて学業に励む学生の味方なんだぞ?」
佳祐のこういう楽観的に過ごしてるのを見るのは嫌いではない。
食事のときに汗かきながら身振り手振り多く、口の中に最後までとっておいたカツを頬張りながら話をすること以外は。
同じ学部の佳祐とは、よくキャンパス東食堂で昼食をともにして、こうやって他愛もない会話をしている。
「ていうか、真優さんの話に興味ないのかよ。」
「なんの話。」
腹が減ったからと大盛りにしたカツカレーをまだ食べ終わっていない佳祐が、水滴のついたコップの水をぐっと飲み干して言った。
「今度真優さんの発表会があるんだよ。それも真優さんが主役なんだってよ。」
思わず佳祐につられて飲んだペットボトルのカフェオレを吹きこぼしそうになった。
「まじかそれ。」
「やっぱりすごいな、あの人。」
「ほーら、食いついた。やっぱりあの人はすごいんだよ。」
最後の一口のカツカレーをスプーンで口へ運び、飲み込んだ佳祐が一言。
「拓馬。一緒にその発表会行かないか?」
嬉しい言葉ではあったのだが、その時の俺は外の暑さとは関係ないぐらい冷静に話を続けた。
「そりゃあ行きたいけども。でもお前チケット持ってるのか?」
「心配なく。チケットを貰えるアテがあるんだよ。」
「まさかこないだ行った飲み会で…とか言うなよ。」
「よくわかったな!そう!正解!」
こいつが茶髪に染めた理由はそれのためだったのだ。
別の大学の女子大生との飲み会があるといって、張り切って似合いもしない茶髪でモテようと必死になったけども、結果は言わずもがなである。
それもそうだ。こんなマナーも悪くて楽観的なモテることに必死なやつだからな。
「おいおい、まさかとは思うが。それ真優さんの知り合いとか友達からもらったのか?」
「いや、そうじゃないんだよ。」
「じゃあどんな人から?」
「真優さんの妹さん」
キャンパスの少し離れたところにある食堂で、カツカレーを元気よく頬張りながら、こないだ茶髪に仕立てたばかりの佳祐がそう話す。
「お前ほんとにそれ好きだよな。」
「だって、俺の好みにばっちりなんだよ。スタイルも性格も声の色も。」
「真優さんのことじゃなくて、今お前が食ってるやつのこと。」
「なんだ、カツカレーのことか。」
「だって安くて美味くてボリュームがある。お金がなくて学業に励む学生の味方なんだぞ?」
佳祐のこういう楽観的に過ごしてるのを見るのは嫌いではない。
食事のときに汗かきながら身振り手振り多く、口の中に最後までとっておいたカツを頬張りながら話をすること以外は。
同じ学部の佳祐とは、よくキャンパス東食堂で昼食をともにして、こうやって他愛もない会話をしている。
「ていうか、真優さんの話に興味ないのかよ。」
「なんの話。」
腹が減ったからと大盛りにしたカツカレーをまだ食べ終わっていない佳祐が、水滴のついたコップの水をぐっと飲み干して言った。
「今度真優さんの発表会があるんだよ。それも真優さんが主役なんだってよ。」
思わず佳祐につられて飲んだペットボトルのカフェオレを吹きこぼしそうになった。
「まじかそれ。」
「やっぱりすごいな、あの人。」
「ほーら、食いついた。やっぱりあの人はすごいんだよ。」
最後の一口のカツカレーをスプーンで口へ運び、飲み込んだ佳祐が一言。
「拓馬。一緒にその発表会行かないか?」
嬉しい言葉ではあったのだが、その時の俺は外の暑さとは関係ないぐらい冷静に話を続けた。
「そりゃあ行きたいけども。でもお前チケット持ってるのか?」
「心配なく。チケットを貰えるアテがあるんだよ。」
「まさかこないだ行った飲み会で…とか言うなよ。」
「よくわかったな!そう!正解!」
こいつが茶髪に染めた理由はそれのためだったのだ。
別の大学の女子大生との飲み会があるといって、張り切って似合いもしない茶髪でモテようと必死になったけども、結果は言わずもがなである。
それもそうだ。こんなマナーも悪くて楽観的なモテることに必死なやつだからな。
「おいおい、まさかとは思うが。それ真優さんの知り合いとか友達からもらったのか?」
「いや、そうじゃないんだよ。」
「じゃあどんな人から?」
「真優さんの妹さん」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

どうやら貴方の隣は私の場所でなくなってしまったようなので、夜逃げします
皇 翼
恋愛
侯爵令嬢という何でも買ってもらえてどんな教育でも施してもらえる恵まれた立場、王太子という立場に恥じない、童話の王子様のように顔の整った婚約者。そして自分自身は最高の教育を施され、侯爵令嬢としてどこに出されても恥ずかしくない教養を身につけていて、顔が綺麗な両親に似たのだろう容姿は綺麗な方だと思う。
完璧……そう、完璧だと思っていた。自身の婚約者が、中庭で公爵令嬢とキスをしているのを見てしまうまでは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる