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第六章 加速する愛
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しおりを挟む「わっ!! 身体重っ!! 待ってゼン、下ろして!!」
「なんでや?? 下ろす必要ないやろ。家に着いたら下ろしたるから、それまで我慢しぃや」
「今の俺、重い……」
「凛は元々重くないで。それに体重全部戻った訳やないやろ?? 俺等は凛のとこ、なんだかんだ歩かせとらんしな」
いや、俺だって歩いて……あれ?? 俺歩いてたよな??……殆ど担がれてた記憶しかない!!
俺は家に着いてゼンに下ろされると、自分の身体の重さに、何故か少しホッとした気がした。
「凛!! お帰り!!」
「うわっ!! 洸?? あんなにあっさり帰ったのに、今は震えてるの??」
「うっ……ごめん。凛と兄さんには、迷惑かけたくなくて……」
洸は俺に抱きつき、匂いを確かめるように擦り寄ってきて、耳と尻尾が出てしまっていた。
「洸、さっきの話聞こえてた?? 全然反応してくれなかったから、どうしようかと思ってたんだけど」
「聞いてたよ。俺にとっても凛は宝物だ」
洸は尻尾を振りながらスンスンと一緒懸命、俺の匂いを嗅いでくるが、ゼルが俺の服を洸に渡すと、洸は嬉しそうに服を貰って俺から離れてくれた。
「カカ様!! ユラ連れ……」
「待て!! まず、ここ玄関やし、落ち着いてからでええやろ。洸までは許すけど、スイセンとユラは待ってろ」
「スイセン、嬉しいんは分かるけどな……今はユラを連れてくるんはアカン。凛からオッケーが出てからや。お前等をどうするかは、話し合いが必要やろ。今までこの家に、ユラを勝手に出入りさせとらんよな??」
「してないよ。そこは僕だってちゃんと分かってるし、コウとユラにも注意されてるもん」
いや、ユラに注意されたらダメだろ。うちの子で大丈夫かな?? なんか、ユラに負担がかかりそう。
俺達は家の中に入り、相変わらずのウサを見て、平和だなと思いながら、空間を開いてみんなを出してあげる。
「ウサ、太った?? ダメだよ、少しは運動しないと。カイとレイに遊んでもらうといいよ」
「(ウサは動きたくても、身体が重いんだって)」
「(リンが帰ってきたから、動きたかったけど、動けないみたいだよ)」
それってデブまっしぐらじゃん。大丈夫なのかな??
「ごめん、俺がいろんな餌をあげてたから、ウサがどんどん太っちゃったみたいで……」
「デブすぎやろ。ルベロにでも踏んでもらい。少しは動かさんと、病気になるで。凛くんが家の中居る時は、ランもくっつけとけば、脂肪燃焼するんやない??」
ゼンは俺からランを離してウサの上に乗せると、ランはルベロと一緒にウサのマッサージをし始めた。それから俺達は、洗い物や荷物の整理をした後、スイセンとユラと話し合いをする事になった。
「ユラ、久しぶりだね。それと、スイセンと番ってくれてありがとう」
「凛様、お久しぶりです。勝手にスイセンと番ってしまい、申し訳ございません」
ユラもスイセンと同じくらい大きいけど、なんか綺麗な狐になったな。それと、凄い礼儀正しい。
「ユラ、楽に話していいよ。スイセンは、無理させてない?? ゼンとゼルに似てるから、多分凄いと思うんだけど……なんか色々と……」
俺はチラッとスイセンを見ると、スイセンは俺と目が合った途端、目を逸らして何もしてないアピールをする。
「ゼン様とゼル様よりは、大丈夫だと思います。でも……行動の意味や、言葉の意味がよく分からない時があって……」
「ユラ!! 僕は父様達みたいにはしてないもん!! ユラがカカ様と違うのは知ってるから、何もしてないよ」
「スイセンが嘘ついてるのは分かるけど、確かにゼンとゼルに比べれば可愛いかもしれないね。縛りはないみたいだし、喧嘩したら俺が相談にのるよ」
「スイセン、こっそりやるんならバレへんようにせんと。凛くんは気づいても、そのままで気にせんけど、ユラには怒られるんと違うか??」
「何しようとしたかは知らんけど、凛とユラは性格全然違うやろ。捨てられたくないんやったら、慎重に行動せな」
なんのアドバイスしてるんだ。しかもユラの前で堂々と……揶揄ってるとかじゃなくて、本気でアドバイスしてるし。
「それで、スイセンとユラは今後どうするの?? 隣の家だとしても、離れて暮らす訳にもいかないでしょ。うちの残りの空き部屋は、愁の部屋にしたいし……」
「僕達は、夜だけ天界に帰る。それ以外は、カカ様を守りたいし、ユラも陣ニィを守りたいって」
「スイセン、俺は凛様も守りたいんだけど。しれっと自分だけで凛様を守るように言うな」
「カカ様は僕が居れば十分だもん。ユラは陣ニィをちゃんと守りなよ」
「母さんのことは常に守ってるし、分身して父さん達のことも守ってる。俺だって、凛様を守りたい。母さんは、俺をスイセンと凛様の為に生んだんだ!! 何度も言ってるだろ」
ユラの口調に驚きながらも、スイセンとユラの会話を静かに聞いていると、二人はだんだんとヒートアップしていき、お互いの首や尻尾を噛み始めた。
「ストップ。まずユラ、俺とスイセンの為に生まれたって言うなら、それに抗えないのは分かってる。でも、スイセンは陣を一番に優先してほしいと思ってるんだと思うよ。それからスイセン、ちゃんと言わないとユラだって分からないだろ。恥ずかしくて素直に言えないにしても、言い方が悪い。俺じゃないんだから、言わないと伝わらない事だってあるし、俺は分からなければ諦めるけど、ユラは違う。そういう相手には、しっかり言葉にしないとダメだ」
『喧嘩してごめんなさい』
取り敢えず、どっちが誰を守るとかの話は、二人で話し合ってもらうしかないな。それよりゼンとゼルが限界そうだ。それに、俺も愁を呼ばないと落ち着かない。
「ほんなら、話は終わりや。俺等は寝室にこもるから入ってくるんやないで」
「洸は呼んだらすぐ来れるようにな」
そうして、俺はゼルに抱えられて寝室に連れて行かれ、タガが外れてしまった二人に勢いよく押し倒された。
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