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第五章 もう一つの世界
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「そんで?? 俺等のこと呼んだっちゅう事は、あのババァに繋がっとる奴等は、全員始末したんやろな??」
凛くんが気持ちよさそうに、月光浴を始めたところで話をきりだすと、愁は顔色ひとつ変えずに勿論だと答えた。
「せやけど、なんで全員って分かるんや?? どっかに隠れとるかもしれんやん。愁さんが知らん奴も居るかもしれんやろ??」
「それは大丈夫。この国の王を変えたし、名前も新しくした。そうすれば、王への裏切り者はすぐに見つかる。国の名前も俺の仮名を混ぜて、俺の国にしたから王が俺の裏切り者だとしても分かる」
二重で裏切り者を探ったっちゅう事か。その王はどんな奴なんや?? 愁と駿が王にさせたっちゅう事は、信用できるんよな??
「その王はどんな奴なん?? ヒトなんやろ??」
「王弟だった奴だよ」
『あ!?』
「愁、お前何考えとんのや。王族は全員始末する予定やったやろ」
「愁さん、あんた俺等に嘘ついたんか?? 俺等より演技上手いやんか」
俺とゼルで愁を睨むと、リュカが珍しく止めに入ってきたかと思えば、凛くんが変な事をしていると言ってきた。
凛くん?? 何しとるんや?? 喋っとるように見えるけど……凛くんは訳が分からんって感じやな。
「あ、あれ寝るで。月光浴終わったんか??」
いや、終わっとらんな。ルイが守るように囲っとるっちゅうことは、俺等に渡すつもりないんやろ。先にこっちの話片付けんとアカンか。
「愁、お前はなんで王弟を王にした。凛くんを危険にさらす気か??」
「一番危険じゃないからだよ。王弟は他国で冒険者として活躍していたんだ。王弟はなんで他国で冒険者なんてやってたと思う??」
逃げたか、もしくは厄介払いでもされたか?? どっちにしても、凛くんを近づけるのは難しいな。獣なら別なんやけど……あぁ、そういう事か。
「愁さんが、わざわざ連れ戻すっちゅう事は獣人か?? 凛に危険がないんやったら、獣人しかあり得んやろうな。せやけど、獣人の国はあるやろ。確かアーシッド国やったっけ?? この国まで獣人を王にしたら、アカンのやない??」
アーシッド国、本には雪山にある獣人の国やって書いてあったな。凛くんは寒がりやから、魔物関連やない限り行く事はないやろな。
「大丈夫だよ。彼は獣人でもヒトでもない。竜獣と言って、かなり貴重な存在だ。ルシアンから、言われたんだよ。竜獣という存在を、保護して欲しいとね……凛くんではなく、俺に言ってきたという事は、この国に竜獣という種族を、受け入れて欲しいって事だったんだろう。あの女はそれを無視したから、王弟になった彼を追い出したんだと思うよ」
「ん?? 愁、そいつは王弟や言うとったやんな?? その話やと竜獣は王族としての、血縁関係はないっちゅう事か??」
「そういう事。まあ、俺にもこれ以上は分からない。あの王は喋れないからね……ぶっちゃけて言えば、この国は魔物と共存する国になるって事。それでも、言葉が分からない魔物は狩るし、暴れている魔物も狩る。襲わない魔物との共存ってだけで、今までと殆ど変わらない」
それでも冒険者をしとったんやったら、コアと同じように人形になれるんやろうな。しっかし、まあ……喋れんのに、よく連れてこれたな。一回追い出されたんやったら、素直に帰ってくるとも思えんのやけど。
「愁さん、よく連れてこれたな。金星が変わっても、普通は素直に帰ってこんやろ。なんかしたんか??」
「それは……王がコアを気に入ったようでね。普通についてきた……」
全員でコアを見ると、コアは会いたくないと言うように、顔を横にブンブン振って、凛くんをチラチラと見ている。
ん?? 王はコアやなくて、凛くん目当てか?? どっちもかもしれんけど、俺等が会う必要はないか。
「そんで?? 貴族も全部綺麗にしたんやろ?? 俺等はあと自由行動でええんか?? 凛くんの為に家建てたり、稼がんとアカンのやけど」
「いや、ギルドと領主の所には、一緒に来て欲しい。特に凛くんは、今までより大切な存在になる。暫くの間、魔物とこの国の仲介役になってほしい」
「はぁ……凛の役目が大きすぎや。凛は断らんやろうな」
凛くんのストレスは確実に増えるやろうな。さて、どうしたもんか……
「別に全部をなんとかしてほしいって訳じゃない。ただ、暫くは帰らないでくれると嬉しい。凛くんがこっちの世界に居なくなると、凛くんを探しているのか、獣タイプの魔物が活発に動き始めるんだよ」
「それなら、別にええんやないか?? こっち居るだけでええなら、凛のストレスも減るやろ」
「あとは移動に凛くんの配下達を使わせてや。馬車は遅すぎる。この国のこれからを考えるんやったら、別に問題ないやろ??」
「コア程の大きさじゃなければいいよ。こっちでも従魔を連れてる奴等は居るしね。ただ、凛くんの場合は配下だから、タグに登録はされない。だから何か目印をつけておいて。コアが鈴をつけてるから鈴が一番かな。取り敢えず、凛くんにとって不便があるなら、改善するから暫くは帰らないでくれるか??」
俺等はええけど、あとは凛くん次第やな。凛くんが帰りたくなったら俺等は帰る。俺等は凛くんが一番やからな。
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