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第五章 もう一つの世界
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しおりを挟むいつの間に寝ていたのか、俺は大好きな匂いに包まれて、スッキリ起きることができた。
「凛くん、おはよう。折角染めたのに、髪色戻ってもうたな」
「ゼン……おはよう。俺、発情してた??」
「しとったけど、可愛かったで。俺等の匂い、足りんかったんやろ??」
確かに匂いが足りなかった。昨日寝室に入った途端、一気に身体が熱くなって、発情期じゃないのに、発情期みたいになってた。
「なんか、寝室行くって話になってから、匂いが気になって……部屋に入った途端に、俺の大好きな匂いしたから、嬉しくて……その後はあんまり覚えてない」
「もし匂いが必要なら、好きな時に抱きついてきてええんやで。こうして顔くっつけると、匂いするやろ??」
ゼンは俺を包み込むように抱きしめてくれ、ゼンの匂いに包まれているような感覚になり、顔をスリスリすると、自分にゼンの匂いがついたように思える。
「可愛いすぎる!! 匂いつけか?? アカン……可愛い、可愛い!!」
これがゼンの可愛いツボだったのか、ギュウギュウに抱きしめられ、興奮したようにキスをされると、後ろからゼルに引っ張られた。
「凛……何したんや。兄貴がここまで、可愛い言うん珍しいやん」
「チッ……折角可愛かったのに、ええとこで起きやがって。凛くん、さっきのゼルにもやったら、何処に居っても安心するんやない??」
俺は言われた通り、ゼルの方を向いて抱きつくと、ゼルの匂いがしてきて、同じように顔をスリスリすると、安心して眠くなってくる。
「うっ……アカン。これは可愛すぎる!!」
するとゼルは俺を抱きしめて、同じように俺の頭にスリスリしてきて、余計に眠くなって寝そうになると、ゼンも俺の後ろから抱きついてきて、かなり苦しくてそれどころではなくなってしまった。
「ゼン、ゼル……俺、お腹空いた。久しぶりに、ゼンのご飯食べたい」
力強すぎる……どうしたらこんなに筋肉つけれるんだ。俺も筋肉つけたい。
「何食べたい?? なんでもええで!! こっち居るうちに、いろいろ作ってタッパーに詰めとこ!! そしたらあっちでも食えるやろ??」
「ほんなら、凛は先に風呂入ってまおうな。今日、陣の応援行きたいんやろ??」
そうだった!! 早く準備しないと。何処でやってるんだろう。
俺はゼルと一緒にお風呂に入って、髪の毛を乾かしてもらっていると洸が起きてきて、スイセンもみんなと一緒に庭で寝ていたのか、起きてくると俺達が居る事に喜んでいた。
「凛、兄さん……おはよう!!」
「カカ様居る!! やったー!!」
二人とも嬉しそうに起きてきて、洸はまた取れそうな程、尻尾をブンブン振り、スイセンは俺に擦り寄ってくる。
「スイセン、洸、おはよう。みんなも体調とか大丈夫??」
配下のみんなはコクリと頷いているため、体調的には特に問題は無さそうだ。
「洸、陣の試合どこでやるか、耀から聞いてない?? 内緒で応援に行きたいんだ」
「それなら、確か神奈川の緑ヶ丘総合体育館だって言ってたよ。耀が陣の不調を気にしてたんだ。凛は高校の方に行くんだって、伝えたんだけど……」
神奈川か……シズ達の方に行くのは明後日だし、会場も同じ神奈川なら……いや、ダメだ。いつ呼ばれるか分からないし、愁と駿の部屋を整理しないと。
「ほんなら新幹線やな。明日は変態部屋の整理せなアカンし、凛くんも少しはボール触りたいやろ??」
「いいの?? 愁と駿の部屋、どのくらい時間かかるか分からないし、いつ呼ばれるかも分からないのに」
「ええんや。全部凛が優先やし、呼ばれたらすぐに行かなアカン訳でもないやろ。それよりはよ着替えるで。兄貴、髪色どないする??」
「そのままで、深めのフードのやつにするわ。それと今日は、動きやすいように、引きずらんやつにしような。俺等は帽子でも被ればええやろ」
そしてご飯を食べた後、ゼンとゼルで俺の服や髪の準備をし、すぐにでも出れる状態になってから、一度みんなを空間の中に入れた。
「洸も一緒に行く??」
「ううん……俺は耀の方に行くよ。ただ、凛の友達には会いたいから、明後日は一緒に行きたい」
「分かった。あと耀には愁のノートの事、あとで渡すからって伝えておいて。じゃあカイ、レイ、ウサがどうしても入りたがらないから、一緒にお留守番よろしくね」
そうして俺達は、家を出て神奈川へと向かった。
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