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第四章 縛りと役目
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しおりを挟む体育館へ着くと、カイとレイが伸びをして車から出てきて、俺に擦り寄ってくる。
「カイ、レイ、家に居たら良かったのに……狭かったでしょ」
「キャンピングカー注文したんやけどな、まだ時間かかるみたいなんよ。カイとレイは最近、やたらと凛くんにくっついて行きたがるしなあ」
「カイとレイは凛が大好きやからな。ほんまに……俺等に噛みつけるのはお前等だけやぞ」
「え、兄さん達に……カイさん、レイさん、今度ブラッシングさせて下さい」
なんか変な序列作ったな。スイセンもニィニって呼んでるし……まあ、いいか。
「ユラ、おいで。ここからは霊体で居てもらうけど、カイとレイも居るし、洸とアキさんも居るから、ちゃんと言う事聞くんだよ。アキさんの事はこれから紹介するから」
「スイセンも一旦起きて、凛くんの中から出て来い」
「カカ様……もう動くの?? 僕まだ眠い」
「スイセン、俺がすぐに寝かせたるから、出てきて霊体になっとき。お前最近、寝ぼけて実体化しながら出てくるんやから」
渋々出てきたスイセンは、大きくなって霊体になり、カイとレイのところに行った。それを見たユラは、真似するように大きくなって霊体となり、俺を見て首を傾げる。
「うん、それで大丈夫。ユラには、今からアキさんとリュカさんを紹介するから、俺のそばに居てね。祐希さんと剛さんはどうしよう??」
「祐希と剛は別でええやろ。洸は自分でファルコンメンバー全員に、自己紹介な」
「分かった。どうしよう……緊張する。凛の眷属も居るんだよね?? リュカさんは優しかったけど……き、緊張が……」
「祐希さんと剛さんも、優しいから大丈夫や。他のみんなもヒトやけど、凛の事を一番に考えてくれる。鼻血出したり、倒れたりして変態っぽいとこあるけどな」
俺達は中に入り、先にカイとレイ達のスペースを作りに行くと、母さんとアキさんがちょうど来て、アキさんがピシリと固まってしまった。
「母さん、ユラは連れてきたけど、アキさん一人じゃ無理だと思って、洸も連れてきた」
「そうでしょうね。けど……洸も聖獣でしょ?? 柏木は大丈夫かしら」
母さんは、少し心配そうにアキさんを見るが、動く気配のないアキさんに俺が話しかけると、母さんの後ろにしゃがんで隠れてしまった。
「な、なんだアレ……ルシアン様……いや、違う。こっちの奴じゃない」
「柏木、口に出てるわよ。あの天狐はユラ……確かにこっちに居るべきじゃないけど、陣の子だからこっちで生まれた子よ」
アキさんは母様の事知ってるのか。あの怯えよう……ゼンとゼルも流石に心配してるし、耀はポカンとしちゃってるけど、あれは俺じゃないと無理かな??
「アキさん、大丈夫だよ。ユラは怖くないから。怯えないであげて」
俺は、可哀想なくらい怯えているアキさんの所へ行って、頭をひと撫ですると震えが止まり、ゆっくり俺を見上げてくる。
「凛、俺に何かしたか?? 震えが止まった。それと、楽になった気がする」
「良かったね。それじゃ、ユラおいで。この狐さんが、柏木アキさんね。言う事聞くんだよ」
「いや、なんでいきなり適当になるんだ。さっきまでとの温度差!!」
そんなの決まってるじゃんか。あっちの事を知ってて、母様の事を知ってるなら、バレたら面倒そうだからだよ。
「あの……俺、兄さん……ゼン兄さんと、ゼル兄さんの眷属で、凛に枷をつけて貰ってる黒川洸です」
「あぁ、話は聞いてる。俺の事は好きに呼ぶといい。敬語も無しで頼む」
「トト……僕寝たい」
「スイセンはここで寝とき。ユラと洸も、ここでカイとレイと一緒に居るんやで。俺等は準備してくるから。凛くん、ゼル、はよ行くで。みんな来る前に、リュカだけでもユラに会わせとかな」
「スイセン、眠れ」
俺達が急いで更衣室へ向かうと、リュカさんが練習の準備をしていた。
「おはよう……言われた通り早めに来たけど、祐希と剛はいいの??」
「祐希と剛には軽く紹介だけでええやろ。それより問題はユラや。あいつヒトが嫌いらしくてな……さっきも軽く注意しといたけど、子供やから感情のコントロールが難しいと思うんや」
「さっきも霊体になるまでに時間かかっとって、凛に確認しとった。普通自分が実体化しとるか、霊体かぐらいは分かるやろ?? それに気配がない」
やっぱりユラはこっちに馴染めないのかな。それとも他に何かあるのか……子供って難しい。変に知識があるから、尚更大変なんだよな。
「凛の子じゃないなら関係ない……って言いたいけど、陣の子だったら一応身内になるから……仕方ない。ユラは喋れないんじゃなくて、こっちの言葉じゃないだけなんだよ。本当は喋ってるし、ゼンとゼルが怒った事で、ユラの考えが変わったなら、俺が面倒を見てもいいよ」
「リュカさん、ユラがなんて言ってるのか分からないけど、ユラの感情は陣の中学時代に引っ張られてると思う。まだ生まれたばっかりだから……」
「凛……分かってるから大丈夫。でもゼンとゼルもそうだと思うけど、俺は凛の幸せが最優先なんだ。凛がバレーをしたいならそれごと守りたいし、凛には好きに生きてほしいと思うよ」
「分かった。それなら俺も……ユラが俺の仲間を傷つけたり何かしたなら、俺が責任を持ってあっちに連れて行くよ。ゼンとゼルには悪いけど、一緒に来てほしいな。リュカさんが守ってるのは、そこでしょ?? 行かないでじゃなくて、行かせないって言ってたもんね」
あの時のリュカさんは、いつもの落ち着きがなかったから、言葉がでちゃったんだろうな。俺が天界の事と、あっちの事を知ってたのが、相当ビックリしたんだと思う。
「リュカ、隠し事下手になったな。凛くんにバレバレやんか。まあ、俺等はどこだろうと、凛くんからは離れんからな」
「凛が行かんくてもええように、俺等もユラの面倒見なアカンっちゅう事やな。凛、仲間っちゅうのは、チームメンバーでええんよな??」
「うん。ファルコンメンバーと、高校の時の仲間。それと……ついでに不破さんかな。大学は正直、監督とお兄ちゃんと不破さん、それと天城さんしか関わりがないから……」
避けられてるし、練習しても楽しくない。話しかけても反応してくれないし、なのにすごい見られてて居心地悪いんだ。そのうち誰か怪我でもしそうで怖い。
「分かったよ。俺の負け……凛があっちに行かないように、ユラが凛のそばに居る時は、俺が出来るだけ面倒を見るよ」
その後は、ユラにリュカさんを紹介して、二人は黙って見つめ合っているように見えたが、何かを話していたらしく、その日のユラはリュカさんについて歩いていたため、俺達はこれで少しは落ち着くのだと思っていた。
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