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第四章 縛りと役目

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 朝起きると、俺の身体はプルプルしすぎて、全然動けなかった。


 俺が心配かけたのが悪いんだけど……ここまで激しく抱かれると思わなかった。噛み痕も凄い事になってそうだな。でも首は無事だったし、やっと反動がなくなったのかな。


「凛くん……おはよう。頭打ったとこは?? もう痛みないか??」


「おはようゼン。頭は昨日の時点で痛くはなかったよ。それよりも……身体が動かない」


「そらそうやろ。昨日は凛くんが、動かれんように抱いたんやし。眠る時間帯、ちゃんと把握しとかんと昨日みたいになるやろ」


 それはそうだけど……母さんには、みんなの事見ててって言われたんだよな?? 俺の為にもなるし、いろんな所から見たかったんだけどな。


「凛……おはよう。打ったとこは??」


 俺とゼンが喋っていると、ゼルが珍しく早めに起きて、俺の頭の心配をしてくる。


「ゼルもおはよう。頭は大丈夫だよ……身体は大丈夫じゃないけど」


「凛が発情期の時は、あれよりもっと……」


「分かってるから、言わなくていいよ!! それより、どっちか起こして欲しい。本当に動かないんだ」


 俺がお願いすると、ゼンは俺を抱えて嬉しそうに世話をし始め、三人でファルコンの体育館へ向かうと、人気の無い体育館で、母さんが誰かと喋っていた。


「はよざいます。佐良さん、それと……レオ」


「(ゼンとゼルは久しぶり。それと初めまして凛。僕はレオナルド。みんなからはレオと呼ばれてる。涼子と同じだからよろしく)」


「(あ、えっと……凛です。よろしくおねがいします)」


「おー!! 凛、イタリア語上手くなったやん!!」


 軽くだが、自己紹介できた事にホッとすると、優しく頭を撫でられて、少し懐かしいような、落ち着くような気がした。


 なんだろう。この人……母さんと同じで、神だからかな?? ホッとする気がする。


「凛……この人が代表の監督よ。安心できた??」


「うん、この人なら大丈夫。母さん……なんか懐かしい気がするんだけど、俺この人と会った事って……」


「ないわよ。でも……そうね……凛が安心出来るなら良かったわ」


 何故か歯切れの悪い言い方をする母さんに、少し戸惑いながらも、練習中はずっとレオさんに話しかけられていた。


 むっ……流石に気が散る!!


「か、母さん……助けて。あの人、流石にうるさい。しつこい。集中できない」


 俺はこっそり母さんに助けを求めると、どこか寂しそうにしていた母さんは、吹っ切れたように笑い出した。


「あはは!! 凛、貴方それは……はぁ……可笑しい。レオ、凛が邪魔するな、ですって」


「(それはすまない。つい嬉しくてね……けど、そうだな。話を聞く限り、もう少しでゼンとゼルが……そうだ!! 試練を与えようか)」


「ッ!! 何するつもり!? レオ……お願いだから、やめてちょうだい」


「(だって、凛一人を守れないようでは、天界に帰った時に困るんだよ。それくらい重要なんだ。大丈夫、凛には眷属もいるだろ??)」


 ん?? ゼンとゼルの様子が……なんか変だな。


「レオ……私は貴方を恨むわよ。隆二もジュリもジョンも……貴方の大切な人も」


「(涼子、これは必要な事なんだ。大丈夫、あの二人なら上手く……あれ?? やばい、間違えた!!)」


「最低よ。本当に……凛を殺したいの!?」


「(ち、違う!! 俺は凛の方を弄ろうと……どうしよう。凛が……凛が壊れる)」


 なんでぼーっとしてるんだ?? なんか危ないな……やっと動けるようになってきたし、声でもかけて……


「おい、ゼル……こんなとこに白猫が居るで」


「ほんまやな。なんやあの猫……身籠っとるっちゅうか……なんで俺等二人と契約しとるんや。番にもなっとるやん」


「最悪やんか……あいつ死んだら俺等も死ぬで」


 え……なんか嫌な予感が……ゼン、ゼル??


『うるっせぇな!!』


「ぜ、ゼン……ゼル……どうし……」


 俺はフラフラしながら二人に近寄ると、思いっきり突き飛ばされて、近寄るなと拒絶される。


「おい!! 何してんだ!! 凛くん……大丈夫??」


「お前等、今何したのか分かってんのか」


「凛……どこかぶつけてない??」


 祐希さん、剛さん、リュカさんが真っ先に駆けつけてくれて、俺は放心状態で無意識にお腹をさする。


「(凛、ごめん。僕が間違えて……二人の凛との記憶、一時的に消しちゃった)」


「凛、落ち着いて。大丈夫よ。大丈夫だから、お願い……壊れないで」


 レオさん……母さん、何言って……


「佐良さん、俺帰るわ……なんでよりによって白猫なんかと」


「兄貴が帰るんやったら俺も帰るわ。けど、お前はついてくんなや。面倒はごめんや」


 ゼンとゼルが、俺の名前すら呼んでくれず、完全に虫でも見るような目で拒絶される。


 ゼン、ゼル……なんで。さっきまで、普通だったのに……待って!! 置いていかないで!!


「あー!! うっさいねん。その頭に響く鈴!! 呼べばええと思ったら大間違いやぞ」


「契約と番、どうやって解除できるんやったか……佐良さん、知っとるなら教えてや。白猫なんか、俺等には面倒なだけや」


 俺は頭が真っ白になり、ゼンとゼルが俺を嫌っている事だけは分かった。物凄く嫌がっていて、この子にも一切愛情がない事も。


「ここではダメよ。一晩考えなさい。これは命令よ……それでも解除したいのなら……私は凛を連れて消えるわ。誰も連れて行かない。私がこの子を守る」


「分かったわ。どうせ結果はでとるけどな」


「明日ちゃんと教えてや。俺等は違うちゃう猫探すんやから」


 ダメだ……俺じゃ……もうダメなんだ。記憶がどんなに大事なのか……やっと分かった。俺は……やっぱり幸せになりすぎたんだ。俺が二人を縛ってたんだ……ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。


 俺の意識はそこで途切れ、その後どうなったのかは分からなかったが、お腹の子と一緒に、長く眠りについた事だけは分かった。

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