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第四章 縛りと役目

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 みんなが帰った後、俺はゼンに髪の毛を染めてもらいながら、子供の名前を考えていた。


 二人は何がいいのかな。やっぱり花の名前がいいよな。


「ゼン、ゼル、この子の名前って考えてる??」


「いいや、考えとらん。今決めてもうたら、凛くんにまた影響出るかもしれんし」


「それにコイツは、凛に付けてもらいたいんやないか?? 俺等は凛が付けた真名から、仮名つけるから」


 それなら、真名は俺が考えようかな。候補とか色々考えておこう。花がいいから、どんな子なのか俺も視たいんだけど……


「どんな子なの?? 俺だけ視えないから、考えるにしても難しい」


『内緒や!!』


「目ぇ覚めてからのお楽しみやな」


「佐良さんは、大体1ヶ月くらいや言うとったし、6月か7月あたまには、目ぇ覚めて生まれてくるんやないか?? それまでは、凛くんも大変やろうけど」


 やっぱり……教えてくれないと思ったよ。そしたら、やっぱりあの花がいいかな。ス……


「凛、名付けしたらアカンからな。生まれてからにしぃや」


「名付けじゃないよ。ただアレしかないなって思って」


「それがアカンのや。凛くんの腹ん中居るんやから、心ん中でも言うたら、名付けになってまう可能性あるやろ。俺等もう、凛くんが痛がっとるんは見たない。少しでも可能性があるなら、それは避けたいんや」


 確かに、痛すぎるのは勘弁してほしいけど……苦しんでるのは見たいんだよね?? 確か俺と対人擬きしてる時とか、苦しんでる顔が好きだって、ゼルが言ってたよな。


「分かった。じゃあ1ヶ月後に、ゼンとゼルにも教えるね」


「凛くんの事やから、多分花なんやろ?? 何にするんか楽しみやわ」


「凛が決めたやつなら、コイツも文句ないやろうしな」


 二人はなんだかんだ言って、やはり自分の子供は可愛いのか、俺のお腹を優しく撫でてくる。


 あ……なんか少し喜んでる気がする。ゼンとゼルが反応しないって事は隠してるのか、それとも俺の表情筋みたいな感じなのか。


 その後、染まるまで時間をおいてる間、俺は急な眠気に襲われて、いつの間にか眠っていたが、夜ご飯にはしっかり起きて二人を誘ってしまう。それでもこれが正常なようで、気にせずに眠い時に寝るといいと言われた。


 翌日、大学の講義が入っていたため、ゼルの車に乗って大学へ行き、夕方には部活に顔を出すと、俺が暫く来れていなかったためか、監督や他のみんなが心配してくれた。しかし、それよりも気になったのが俺の首輪のようで、講義中は隠していが、部活に行けば嫌でも目についてしまう。


「ゼル、これ流石に外してほしい」


「……兄貴も居らんし、俺が凛の首絞めたら、誰も止められんやろ」


「じゃあ、俺からキスするから。ダメ??」


「ほんまに!? 外す外す!!」


 俺からの提案に、ゼルは急いで俺の首輪を外してくれて、その代わりに首を触られる。俺は、力を入れられる前にゼルのシャツを掴んで、思いっきり俺の方へ引き寄せキスをしたが、ガツンと鈍い音がする。


 う……歯痛い。強く引きすぎた。みんなに見られてたし……恥ずかしい。


 歯がぶつかった事で恥ずかしかった俺とは逆に、ゼルは離れようとする俺を押さえ込み、舌を入れて絡めてくる。


「んンッ……アッ……まっ、まって!! みんな見て……ッ」


「まさか、あんな強引なキス貰えると思わんかったわ」


 試したな!? 俺は恥ずかしかったのに……もう知らない!! 


「凛、怒っとるん?? なぁ、ごめんて。怒らんで……斗季が止めんかったんやから、今は普通にやばかったんやって」


「俺を巻き込まないで欲しいけど……本当だよ。今凛が止めなかったら、誰も止められなかったし、下手に不破あたりが止めてたら、大変だっただろうね」


「俺が斗季に止められとったけどな!! なんやねん、ほんまに……普通に止めるやろ」


 白雷虎高校だった不破龍さんと、土土高校だったお兄ちゃんは、大学に入ってからチームメイトになり、この二人とゼルの三人は結構仲良くしている……筈だ。


「なぁ、凛……ごめん。嫌わんで」


「嫌わないよ。恥ずかしかっただけだから……俺もごめん」


 俺がゼルに抱きつくと、ゼルは嬉しそうに俺を抱き上げて、何故かそのまま帰ろうとする。


「なに帰ろうとしてるんだ。本当に、お前達兄弟は……自由過ぎるだろ。というか、今年は問題児が多過ぎる。まずゼルは言わなくても問題児だが、斗季は何考えてるのか分からないし、龍は凛に構うなよ。こっちが見ててヒヤヒヤする」


「だって凛くん可愛いんやもん。俺の好みドンピシャで、しかも綺麗になっとるし。守らないけん気ぃするやん!!」


「お前は守る必要ないやろ。凛に嫌われとるくせに」


 いや……もう嫌いではないけど、好きでもないかな。なんというか……先生を相手にしてるような感じ。


 俺はゼルから下りて、監督に代表のマネージャーになった事を報告すると、先にゼルから聞いていたらしく、大会以外はファルコンの練習と、マネージャーとしての仕事を優先していいと言われた。


「どうせどこに居ても、凛とゼルは練習してる訳だし、週一で顔を出してくれたらいいが、夏と冬のインカレと、その一週間前にはこっちに参加してほしい」


「分かりました。でも、火曜と金曜以外はこっちに来ます。火曜は講義がないし、金曜は午前中で終わっちゃうんで、ファルコンの方に行こうかな……ゼル、それでいい??」


「ええんやない?? どうせこっち来るんやったら、あっち行くよりは練習出来るやろし」


 俺が監督と話したい事は取り敢えず無くなったため、ゼルを引っ張ってアップに入り、普通に練習に参加していると、2時間程経ったあたりで、突然倒れるように眠ってしまった。


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