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第三章 大事な繋がり
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しおりを挟む俺達は急いで家に帰り、やっと掃除が終わった頃、陣から俺の時計に通知が届いた。
「父さんと陣、マンションの前に着いたって」
「なら俺迎えに行ってくるわ。ゼル、寝室に凛くんの服準備してあるから、着替えさせといてや」
そう言ってゼンが二人を迎えに行くと、俺はゼルに着替えさせられる。
「ゼル、なんで着替えるんだ?? 別にジャージでも……」
「そんなんオカンに見られてみぃ。すぐに着替えさせられて、着せ替え人形にされるで!! それとチョーカーな。兄貴のと俺のつけとけ言われとるから、窮屈やろうけど我慢してな」
俺は最後にチョーカーをつけられて、着替えが終わると丁度よく、ゼンが二人を連れて戻ってきた。
「凛~!! うちの子可愛い!! 綺麗!! パパ、凛に会いたくて急いで来たんだ!!」
俺が父さんに抱きつかれて、苦しそうにしていると、陣が父さんを引き剥がしてくれた。
「凛、聖獣になったんだ。一瞬、跪きそうで危なかった……凛はそんな事されたくないだろ??」
陣に……それは嫌だな。なんか悲しい。
「だから大丈夫だって言っただろ。陣と凛は双子なんだから、そこは本能も何もない。家族に跪いたりしないだろ」
父さんってやっぱり天界の人なのかな?? まあ、そうだよな。母さんが神なんだし。
「陣は母さんと父さんの事聞いたのか??」
「凛に話したからって、天使の三人も集められて一緒に聞いたよ。父さんは知らないけど」
「俺の事話してくれてなかったのか?? 俺は涼子さんの番」
『へぇ……』
「酷い!! なんでそんな反応薄いんだ」
いやだって……それは夫婦なんだから、逆に番じゃない方がびっくりだろ。
「まあまあ、立っとらんで座ってや」
「凛もこっちにおいで」
俺はゼルに呼ばれて、ゼンとゼルの間に座ると、飴を口の中に入れられ、ボリボリとすぐに噛んでしまう。
「隆二さん、凛くんが小さい頃に噛んでたもんとかあります?? 歯痒いっぽくて、歯ブラシやと血出てまうんよ」
そう言ってゼンは俺の口に指を突っ込むと、父さんに俺の犬歯を見せる。
「あぁ、確か陣と凛はタオル噛んだり、ぬいぐるみ噛んだりしてたな。俺はペット用のオモチャ買って、よく与えてたんだが、毛が多いやつは涼子さんに取り上げられた」
「ペット用……凛くんには、ロープ状のやつとかがええんかな」
「やっこい方がええんやない?? シリコン系のやつ」
ゼンがパソコンを持ち出して、三人でネットを見ながら話し始めたので、俺は陣のところに行って少し話そうとすると、先に陣が俺の後ろに来てくれる。
「凛さ、ペット用でいいのか??」
「噛めればなんでもいい。本当に痒いんだよ」
「それは分かるけどな……親知らず生えてきた時とか、めちゃくちゃ痒かったし」
その後暫く話していると、チャイムが鳴ってゼルが立ち上がった。
「オカン迎えに行ってくるわ。凛と陣は写真撮られる覚悟しといた方がええで」
陣は何がおこるのかといった表情で俺を見てくるが、俺は一回経験してるため、着せ替え人形にさえならなければ良いかと思い、普通に寛いでいると、玄関の扉が開いた途端、凄い勢いでお義母さんが俺に抱きついてきた。
「凛ちゃーん!! 可愛すぎるわ!! どうしましょう、何で撮るのが一番かしら!! あら?? 貴方、陣ね?? 丁度いいわ!! 陣と……げっ……隆二」
「よおジュリ。相変わらずじゃねぇか。うちの息子可愛いだろ??」
「はあ!? うちの子も顔は良いわよ!! 凛ちゃんとお似合いじゃない!! ゼンとゼル以外で、凛ちゃんに釣り合う奴なんか居ないわ!!」
呆気にとられて、俺はゼンに引っ張られると、こたつの方に移動させられた。
「あの二人、どうしたらええんやろ。佐良さんしか止めれんくないか??」
「ちゅーか人ん家に来て、息子自慢って恥ずかしすぎん?? 凛が可愛いのも、凛と釣り合うのが俺等しか居らんのも、当たり前やんか」
サラッと恥ずかしい事言うな。というか、陣が一生懸命止めようとしてるけど……全然聞いてないな。
ゼンがスマホをいじりながら、音量を上げる仕草をすると、母さんの怒鳴り声が部屋中に響いた。
「人の家で迷惑かけるんじゃない!! 隆二、貴方何の為に行ったのよ。ジュリも仕事抜け出してまで、何しに来たのかしら?? 二人とも写真撮りたいならさっさと撮って、眷属について説明してあげてちょうだい。それじゃ、私はちゃんと言ったからね」
ブチッと電話を切った、母さんの声は相当怒っていて、父さんとジュリさんも大人しくなった。
「眷属について聞きたいんやけど、天使が凛くんの眷属になりたいんやって。眷属の契約ってどうすればええんか、聞きたかったんやけど……場合によっては断る予定や」
「それなら簡単よ。真名を受け取るだけでいいわ。あっちが勝手に誓いを立てるから、相手の真名と一緒に眷属とするって言うだけでいいのよ。でも絶対に自分の真名は言わないようにね」
おー、それなら簡単だ。でも真名ってなんだ??
「真名は魂に最初につけられた名前。要は魂の色そのものだ。真名を隠し、仮名を持って輪廻を巡る。本来の姿は隠して、仮の姿で生を全うしろって事だ。ギリギリまで教えたからな。あとは自分達で考えてみろ」
「本当にギリギリじゃないの。相変わらず危なっかしい……心臓に悪いわ」
「いいじゃねぇか。それより凛!! 写真撮らせて」
父さんの言った事は、なんとなく分かった気がした。それは多分、ゼンとゼルも一緒だ。
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