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第三章 大事な繋がり

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「凛くん、はよ起きんと遅れるで」


 やだ……まだ眠い。


「兄貴、凛起きられんのやない??」


「まあ、そうやろな。昨日動画観る前は眠そうやったし、消耗した分眠っとるんやろ。飯多めにするべきやったな。ゼルん時に完全に変わったんやろし」


「むっちゃ痛そうやったもんな……このまま会場連れてくしかないんやない?? 兄貴は弁当多めに作ってや。俺は凛の着替えさせるから。試合始まるまでに起きてくれたらええんやけど」


 試合……そうだ今日が最後……あれ?? 身体が起きてくれない。なんで……


 その後意識は起きているのに、身体が起きなくて金縛りのような状態のまま、会場に連れて行かれると、みんなが俺を起こそうと声をかけてくれるが、俺の身体は全く起きようとはしない。そして今日の1試合目である、白雷虎と高花の試合が始まったのか、ホイッスルの音やボールの音が聞こえてくる。


「凛くん起きんな。試合の音聞いたら、起きると思ったんやけど」


「んー、無理にでも口ん中に、飯詰め込むか??」


 え!! やだやだ!! それだけはやめてくれ!!


「それしかないか?? 起きないんやったら、飯食べさせて補給するしかないし……凛くんの口ん中に細かくしたの入れて、水で流し込むか」


 やだ!! 起きたいのに!! というか起きてるのに!! ゼン、ゼル気付いてくれ!!


「ん?? 鈴……兄貴、ちょいと車行かん??」


「せやな……どうやら起きとるみたいやし」


 俺は何故か車に連れて行かれると、ゼンとゼルが何かゴソゴソとやっている。


「凛くん、身体だけが起きとらんなら、はよ呼んでくれんと」


「呼ぶの遅いやろ。身体だけなら、抱けばええんやから」


 俺は車の中で服を全部脱がされると、二人が同時に俺の中に入ってきて、奥に数回出されると、やっと身体が起きてくれた。


「うぅ……恥ずかしかった」


「凛くん、やっと起きたな。俺等んとこ呼んでくれたら、ちゃんと気付けるんやから、なんかあったら呼んでや」


 俺は服を着せられながら車の中を見ると、ちゃんとカーテンで外から見えないようになっていた。


「兄貴、それなんやけど……凛は無意識なんやない??」


「……せやった。ずっと言うの忘れとったわ。凛くん、俺等が凛くんと契約してからは、凛くんが呼んでくれると、俺等の頭に綺麗な鈴の音が響くんよ」


「鈴?? だから二人とも、よく鈴の事言ってたの??」


 まさかそんな事になってるとは……試しに呼んでみようかな。気付いて欲しいって思いながら、今まで呼んでた気が……ゼン!! ゼル!! 


「おー、ちゃんと呼べとるな。それ、昨日みたいに俺が暴走してようが、離れていようが気付けるから、ちゃんと俺等の事呼んでな」


「分かった」


「凛くんも起きたし、あっち戻って飯食べようか。試合中に寝ても大変やろ??」


「ぐっ……分かった」


 俺達がギャラリーに戻ると、みんな俺が無理矢理起こされたと勘違いしたのか、あからさまに目を逸らされたが、俺はもう気にせずに黙々とご飯を食べて、ついでに歯磨きも済ませると、やっとスッキリして目が覚めた。


「今から2セット目なら、もうアップに行かないとだよね??」


「そろそろ行くんやないか?? センセが呼びに来ると思うで。さっき話し合う言うとったし」


 少し待っていると、先生が呼びに来たのはいいが、俺の目の前で転けて膝をつく。


「えっと……先生大丈夫?? 膝痛くないんですか??」


「凛くん、これ多分……」


「仕方ないだろ!! 本能的に身体が動いちまうんだから。頼むからどっちか凛を抱えてくれ。俺より下にするな」


 先生が焦ったように早口で喋ると、ゼンが俺を抱えてくれるが、もう少し上にしろだの、自分の目線より上にしろだのうるさく、結局ゼンの腕に乗せられるように持ち上げられて、俺的には身長が高くなった気分だ。


「獣は大変やなあ」


「ゼン、なんか知ってるの??」


 俺はゼンの首に抱きつきながら、移動中に聞いてみると、目を使ってみろと言われた。


「狐だ。モフモフだけど触れないんだよね??」


「凛は動物好きよな。今度動物園でも行くか??」


 動物園!! 動物触れたりするのかな。触れなくても行きたいな。


「なら、来週の日曜にでも行こか?? せやなあ……陣くんペアも連れてダブルデートでもどうや?? 高卒試験と大学の合格祝いしとらんやろ??」


「……あれ?? 俺いつの間に合格してたの」


「言っとらんかった?? ちゅーか佐良さんが、自分で伝える言うとったんやけど、忘れてたんかな」


「俺も受かったから、凛と一緒に行けるで!!」


 母さんシーズンで忙しそうだったし、忘れてたんだろうな。陣はどうだったんだろ。


「おい!! デートの話は分かったから、取り敢えずこっちに来い。あー、でも待て!! 俺より上に座っ……」


「面倒やな。もうええやんか。凛はなんも考えとらんって」


 まあ、俺が猫なのと一緒で、先生が狐だとしても、いきなりそこまで……ん?? 先生って視える人なのか??


「先生、俺の事視えるの??」


「視えます。視えますから……あー、違う!! どうしたら……」


 なんか可哀想だな。みんなも不審者を見るような目で見てるし。


「凛くん、監督サンに黙れって言ってやり。全然話し合い出来んやろ」


「先生、静かにしてて下さい。言いたい事があるなら、スマホのメモで話して」


 コクコクと頷いた先生が大人しくなった事で、土土戦について話し合いを始めたが、最終的に向井さんが泉くんの自慢話を始めたので、俺はゼンとゼルと先生の四人で、周りに聞こえないように静かに喋る。


「監督サン、正直に答えてな」


「ぐっ……頼むから凛の事しか聞かないでくれ。俺は、凛に聞かれたら喋っちまう」


「俺等も無理矢理聞こうとは思っとらんから、そんなに怯えんでもええよ。ただ聞きたいんは、凛が何になったかっちゅう事なんや。早めに聞いとかんと、後から困るんや」


 俺は天界について詳しくはないため、理解できる部分だけを黙って聞いていようと思ったのだが……


「まず、俺は妖精だ」


「ブッ……ふふッ……ご、ごめん。続けて」


 まさか妖精発言するとは思わなかった。不意打ちすぎて……ダメだ。


「まあ、凛くんは知らんから、これだけ聞くと笑ってまうよな。凛くんも一応妖精になっとるで。ケットシーになったらしいわ」


「ケットシーって、喋る猫の事??」


「そうそう、そんで妖精は肉体から離れると精霊になるから、精霊とも言うらしいんやけど……そこが俺等には重要なんや。昨日の夜、オカンにも視てもろたんやけどな、精霊かそれ以上かは分からんらしいわ。そんで、そこら辺知ってそうな、獣の本能とやらが必要なんやけど」


「はあ!? 凛が精霊!? それはない!! そしたら俺はこんな風にならねぇ!! 凛は聖獣だ!!」


 聖獣……聖獣って聖なる獣だろ?? 俺がそんな存在にはなれないと思うけど。ダメだ……やっぱり話についていけない。ゼンとゼルに任せて……


「凛くん、これからは外で興奮したりしたらアカンよ。耳と尻尾、みんなに見えてまうから。それと髪も染めような。髪と目は色が出てきてまうんやって」


 ゼンはそう言って俺の髪を一房つまむと、写真を撮って俺に見せてきた。


「白い……これ、俺大丈夫なの??」


「オカンが言うには、色変わったり感情で耳とか尻尾が出てまうだけらしいから、ちゃんと誤魔化せば大丈夫やって。俺が凛くんの髪染めたるからな」


 そうなんだ。じゃあ俺は取り敢えず、感情を抑えるのと、髪はゼンが染めてくれるって言うし、目は……目はどうなるんだ??


「ねぇ、ゼン。目ってどうするの?? 母さんが心配するんじゃ……」


 俺の言葉に、ゼンはスマホをいじると、ホッとした様子で画面から目を離し、俺の頭を撫でてくる。


「……凛くん、今日佐良さんが応援に来てくれるんやって。試合頑張ってな」


「ん?? 分かった。頑張ってくるよ」


 その後はゼンにぬいぐるみを渡してから、ゼルとみんなでアップを始める。先生は試合の様子を見に行き、2セット目は高花が取ったのか、試合は3セットまでいったようで、暫く経ってから白雷虎が勝ったという知らせを聞き、俺達は初めてのセンターコートへと向かった。
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