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第三章 大事な繋がり
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しおりを挟むあの火獅子戦から数日が経ち、俺は今自分の回答用紙を睨みつけていた。
「終了。問題を回収します」
ふぁ~、やっと終わった。
今日は高卒認定試験で、陣と一緒に試験を受けに来ていた。
「凛、ちゃんと解答欄の確認したか??」
「何回もしたから大丈夫。そういう陣は大丈夫なのか??」
「当たり前だ。それより早く行かないと、あの人達ここまで乗り込んでくるぞ」
そう言って陣は外を見る。そこには、二人の死神がこっちに乗り込んでこようとして、警備の人に止められているところだった。
「ゼンはシーズン中なのに練習休んでまで来たし、ゼルもずっと勉強に付き合ってくれてたからな」
「いや、そんな眺めてないで早く行くぞ。あの警備の人が可哀想だろ」
俺は陣に引っ張られて外へ行くと、二人が俺に気付いて走ってきた。
「凛くん、どうやった??」
「ちゃんと解答欄の確認はしたんか??」
「うん、何回もしたから大丈夫だけど……まず、あの警備の人に謝ってきて」
二人は警備の人に謝りに行き、俺は陣と別れて家に帰った。
「そういや凛くん、明日から建築工事始めるらしいで。ほんまに凛くんの希望はなしで良かったん??」
「うん、ゼンとゼルが決めたならいい。俺が帰る場所は二人が居るとこだし、俺が住みやすいように考えてくれたんでしょ??」
「まあな、凛くん第一で考えたけど……」
「兄貴が考えたんは、猫部屋みたいになっとって、動物でも飼うんですかって言われたんやって。アスレチックみたいやったから、流石に俺がマシなようにしたけどな」
なんか想像できるな。でもゼルもゼルで、殺風景になってたりするんじゃないか??
「まあ、あとは家具で調整したらええやろ。それとな、発情期用の部屋も作ったんやけど、そこは凛くんの部屋にしとってええからな」
「……なにそれ??」
発情期って、俺そんなのあるのか?? そんなの本当にただの猫じゃんか。
「凛は一回発情期迎えとるで。そうやないと、番になれんしな」
ゼンとゼルにとっては、発情期は当たり前の事らしい。しかし俺は自分が猫の魂を持っていて、何度も死んだ事と、二人が死神だった事しか覚えてないため、最後の思い出からは、発情期の事は分からなかった。
「俺の熱だと思ってたのって……発情期??」
「せやなあ。凛くんが巣作りしとった時は発情期や。それ以外はちゃんとただの熱やったで」
巣作り!? あれか?? ゼンとゼルの服集めてたやつ。
「あん時は、兄貴が無理矢理引き起こしただけやったし、次からは何日くらい続くんやろうな」
「俺もそれが分からんのよなあ。リュカにでも聞いてみるか」
リュカさん?? なんでリュカさんなんだろう……猫好きなのかな?? というか、そんなに何日も続くものなのか??
「まあ、そん時なってみんと分からんし、凛もあんま深く考えんでええよ」
「分かった」
もう考えても分からないし、なるようになるか……頑張れ俺の身体。
考える事を諦めた俺は、試験の自己採点を始め、ゼンとゼルはネットで家具などを調べ始めていて、楽しそうにしていた。
それから更に数日後の夜、俺がぐっすり寝ていると、ゼンとゼルに起こされ、冷たい風にブルっとして目を開けると、そこは月明かりが反射した綺麗な海だった。
「綺麗……」
俺は裸足で砂浜に下ろされると、二人にブランケットをかけられた。
『凛……』
呼ばれて振り向くと、自然な動作でひざまづいた二人に、両手をとられる。
『誕生日おめでとう』
「やっと凛くんの誕生日祝えたな。ずっと……ずっと待っとったよ」
「凛、また生まれてきてくれて、ありがとうな」
ゼンは右手、ゼルは左手の薬指に、指輪を嵌めると、そこに口付けをして笑った。
こんなのずるいよ。まだまだ先の事だと思ってたのに……
「……ありがとう」
涙が溢れて、両手を胸持っていくと、二人は俺を抱きしめてくれる。
あったかい。
「一緒に買い行こう言うとったのに、先に買ってもうてごめんな。凛くん、俺にも嵌めてくれんか??」
「凛、俺のも嵌めて」
俺はゼンの右手とゼルの左手にも指輪を嵌めると、二人にキスされて車に運ばれる。
「はぁ……お前が来んかったら、今頃ここで凛くん抱けたし、指輪もちゃんと凛くんと選び行けたんやで」
「そんなん、二人きりでさせるわけないやんか。俺のプレゼント薄れてまうやん。凛、俺からのプレゼント、これなんやけど、バレーの時以外はつけといてな」
そう言ってゼルが俺の手をとり、タッチパネルの腕時計をカチッと付けた。
「プレゼントって、指輪じゃないの??」
「俺が夜の海連れてって、00時ピッタリで祝おう思っとったら、ゼルがついてくる言うて聞かんから、そしたら俺からのプレゼントないようなもんやんか。せやから、もう指輪あげて、二人からのプレゼントっちゅう事にしたんや」
「この時計、俺と兄貴のスマホに通知くるようなっとるから、凛の体調管理しやすいし、凛もスマホ使わんでも、それで連絡きたんが分かるから便利やろ??」
そうなんだ……でもまた鍵付いてるんだけど、俺じゃ外せないのかな。
「凛くん、鍵気になるんか?? 大丈夫やで、このネックレスとおんなじ鍵穴で作ってもろたから、外す時は俺等が外したる」
それならいいか。ちゃんと外してもらえるなら、不便じゃないし、寧ろスマホ使わないから便利だ。
「ゼン、ゼル、ありがとう」
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