129 / 361
第三章 大事な繋がり
12
しおりを挟む「大会前なのに、体調管理できなくてすみませんでした」
俺は、朝早くに学校へ行って、みんなに頭を下げた。
「いや、いいよ。熱なら仕方ないし、不安があったんでしょ??」
向井さんは、俺に優しくしてくれるが、熱を出したあげく、お楽しみ中だったとは言えない。
「凛、一応大会中のお前の様子を見て、火獅子戦は判断する。それでいいか??」
「は、はい……その前にちゃんと勝ち残れるように、集中しないと……」
「あー、分かった分かった。耳が痛いからやめろ。勿論勝つつもりで行くぞ」
俺達はバスに乗って会場へ向かうが、今回はなんと、シズは圭人と隣同士で座っていた。そしてトシさんは満足そうに、一番後ろで筋トレをしている。
「ゼル……なんか俺、前より不安じゃない。勿論不安は不安なんだけど、なんか落ち着いてる……気がする??」
「なんでそこ、疑問系なんや。まあ、落ち着いとるならええけど、あっちでは拘束しとくからな??」
あっちではって言ってるけど、今日は朝からずっと抱きしめられてるんだけど……今も手繋がれてるし。
会場に到着すると、俺はゼルにヒョイと持ち上げられて、ギャラリーへと向かった。
「あれ?? ここ前に陣の大会やってたところ??」
「今頃気づいたん?? 俺達の初めてのデート場所やったやんか」
デートって……手繋いでここまで来ただけじゃんか。うぅ、俺あの時なんかムカついた記憶ある。今思うとあの時は既に好きだったんだと思うけど……なんか恥ずかしい。
「ゼル……なんで笑ってるの」
「いや、別に……フフッ……かわええなあって思っとっただけやから気にせんで。そういや、兄貴が告ったんも……」
「もう分かっから、言わないで!! 恥ずかしい」
自分の顔を隠すように、ゼルの服にしがみつくと、ゼルがめちゃくちゃ笑っていて、みんなの小さい「えっ……」と言う声が聞こえた。
「あー、幸せやなあ」
「ほらそこ、イチャついてないで下行くぞ。そろそろ開会式だろ」
「トシさ……この雰囲気で、よく言えるね。ほんとそういうとこ凄いと思う」
「圭人、俺達もイチャイチャしようよ~」
「俺はそんな恥ずかしい事しないからな!! あれは、あのカップルだから許されるんだ!!」
あ、やっぱり付き合ってるんだ。良かったね、シズ嬉しそう。俺結局何にも相談にのれなかったなあ。
「あの……先輩方ぁ~。マイペースなとこ悪いんすけど、そろそろマジでヤバいっすよ」
山田が気まずそうに言うと、やっとみんな移動し始めた。
そして開会式、先生がゼルの背番号を9番にしてくれたため、俺の前にゼルがいてくれて、それだけで大分安心感が違った。しかし開会式の後ギャラリーに戻ると、火獅子の二人が俺とゼルのところへ来た。
「あーあ、俺のコレクションに、白色はなかったから欲しかったのにな。鹿島、お前があの時、間違えてなかったら今頃、女神様は俺達のだったのに」
「いや、普通に間違えるだろ。まさか発言と性格が真逆だとは思わねぇし。そもそも俺は本気で凛が欲しかったのに、お前が急かしたから、こうなったんだろうが」
「やだなぁ……俺は許可を貰った上で、写真だけ撮ってきてって言ったんだけどな。勝手に焦ったのは鹿島だろ?? マーキングされてたから焦ったんじゃないか」
な、何を喋ってるんだ。怖い、怖い、怖い。あの目が……やっぱり二人とも怖い。
「凛、眠れ」
俺はゼルのその言葉で、ガクッと眠りについた。
ーーーーーーーーーー
(sideゼル)
「あんた等、悪魔やったんか」
俺が鹿島と鳴海を視て言うと、二人は嫌そうな顔をした。
「盲目ヘズはやっとお目覚めみたいだな。悪いけど、悪魔なんて言わないでくれる?? 俺達の事は、悪戯好きのトリックスターとでも呼んでくれたらいい」
鳴海はそう言って笑うが、その目は不気味で悪魔としか言いようがなかった。
「確かに似てるが、ただ似てるだけで全然違うだろ。いい加減、ごっこ遊びに俺を巻き込むなよ。俺達はどう足掻いても、悪魔でしかない」
こいつ等……悪魔が神話ごっこでもしとるんか。ロキにでもなったつもりかいな。
「俺は女神様から許可を貰って、こっそり契約が理想だったけど、もしも鹿島が女神様を壊すなら、それでもまあ、悪戯完了って事で良かったんだけどなあ」
その時、俺のスマホに兄貴からの電話がかかってくる。
「凛くんに何があった」
「火獅子の二人……こいつ等悪魔やったわ。凛は今寝かせとるから大丈夫や」
「……そうか。番っといて正解やったわ」
番っていなかったらと思うとゾッとする。何せ悪魔は猫の魂が大好物で、契約した後すぐに魂を食う。だから猫の魂を持つ者は減り、猫を欲する死神とは対立関係にある。
「あ、バルドルから電話?? ねえねえ、ずっと気になってたんだよなあ。オディンズって、オーディンの事なの?? 俺さ、スポーツってこの時代で戦える、唯一の場所だと思ってんだよね。ヴァルハラってあるのかな?? 火獅子が風狼……女神様と戦ったらヴァルハラに行けるのかな?? あの時、戦えなくて俺ショックだったんだから」
こいつ……ぶっ飛びすぎやろ。そこらのオタクよりタチが悪いわ。
「鳴海、お前まじでキモいぞ。悪魔が天界望んでどうすんだよ。そろそろ諦めろよ」
「はあ!? 諦められるわけないだろ!! 俺だって好きで悪魔になったんじゃない!!」
はぁ……このタイプの悪魔か。居るんよなあ、こうゆう子供の頃に死んで悪魔になってもうた奴。子供は悪意なく悪さするし、親がちゃんと教えたげんと、そのまま成長してまう。せやから悪魔が増えてまうんや。俺等もあのままで、死ぬんが遅かったら、こうなっとった可能性あるんやもんな。
「……話は大体わかったわ。俺は凛くんが無事か、確認したかっただけやから、あとは任せたで」
兄貴はそこで一方的に電話を切り、俺はこの状態の悪魔を刺激しない為に、凛を抱えて静かにその場から離れた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
221
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる