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第三章 大事な繋がり

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「大会前なのに、体調管理できなくてすみませんでした」


 俺は、朝早くに学校へ行って、みんなに頭を下げた。


「いや、いいよ。熱なら仕方ないし、不安があったんでしょ??」


 向井さんは、俺に優しくしてくれるが、熱を出したあげく、お楽しみ中だったとは言えない。


「凛、一応大会中のお前の様子を見て、火獅子戦は判断する。それでいいか??」


「は、はい……その前にちゃんと勝ち残れるように、集中しないと……」


「あー、分かった分かった。耳が痛いからやめろ。勿論勝つつもりで行くぞ」


 俺達はバスに乗って会場へ向かうが、今回はなんと、シズは圭人と隣同士で座っていた。そしてトシさんは満足そうに、一番後ろで筋トレをしている。


「ゼル……なんか俺、前より不安じゃない。勿論不安は不安なんだけど、なんか落ち着いてる……気がする??」


「なんでそこ、疑問系なんや。まあ、落ち着いとるならええけど、あっちでは拘束しとくからな??」


 あっちではって言ってるけど、今日は朝からずっと抱きしめられてるんだけど……今も手繋がれてるし。


 会場に到着すると、俺はゼルにヒョイと持ち上げられて、ギャラリーへと向かった。


「あれ?? ここ前に陣の大会やってたところ??」


「今頃気づいたん?? 俺達の初めてのデート場所やったやんか」


 デートって……手繋いでここまで来ただけじゃんか。うぅ、俺あの時なんかムカついた記憶ある。今思うとあの時は既に好きだったんだと思うけど……なんか恥ずかしい。


「ゼル……なんで笑ってるの」


「いや、別に……フフッ……かわええなあって思っとっただけやから気にせんで。そういや、兄貴が告ったんも……」


「もう分かっから、言わないで!! 恥ずかしい」


 自分の顔を隠すように、ゼルの服にしがみつくと、ゼルがめちゃくちゃ笑っていて、みんなの小さい「えっ……」と言う声が聞こえた。


「あー、幸せやなあ」


「ほらそこ、イチャついてないで下行くぞ。そろそろ開会式だろ」


「トシさ……この雰囲気で、よく言えるね。ほんとそういうとこ凄いと思う」


「圭人、俺達もイチャイチャしようよ~」


「俺はそんな恥ずかしい事しないからな!! あれは、あのカップルだから許されるんだ!!」


 あ、やっぱり付き合ってるんだ。良かったね、シズ嬉しそう。俺結局何にも相談にのれなかったなあ。


「あの……先輩方ぁ~。マイペースなとこ悪いんすけど、そろそろマジでヤバいっすよ」


 山田が気まずそうに言うと、やっとみんな移動し始めた。


 そして開会式、先生がゼルの背番号を9番にしてくれたため、俺の前にゼルがいてくれて、それだけで大分安心感が違った。しかし開会式の後ギャラリーに戻ると、火獅子の二人が俺とゼルのところへ来た。


「あーあ、俺のコレクションに、白色はなかったから欲しかったのにな。鹿島、お前があの時、間違えてなかったら今頃、女神様は俺達のだったのに」


「いや、普通に間違えるだろ。まさか発言と性格が真逆だとは思わねぇし。そもそも俺は本気で凛が欲しかったのに、お前が急かしたから、こうなったんだろうが」


「やだなぁ……俺は許可を貰った上で、写真だけ撮ってきてって言ったんだけどな。勝手に焦ったのは鹿島だろ?? マーキングされてたから焦ったんじゃないか」


 な、何を喋ってるんだ。怖い、怖い、怖い。あの目が……やっぱり二人とも怖い。


「凛、眠れ」


 俺はゼルのその言葉で、ガクッと眠りについた。


ーーーーーーーーーー

(sideゼル)


「あんた等、悪魔やったんか」


 俺が鹿島と鳴海を視て言うと、二人は嫌そうな顔をした。


「盲目ヘズはやっとお目覚めみたいだな。悪いけど、悪魔なんて言わないでくれる?? 俺達の事は、悪戯好きのトリックスターとでも呼んでくれたらいい」


 鳴海はそう言って笑うが、その目は不気味で悪魔としか言いようがなかった。


「確かに似てるが、ただ似てるだけで全然違うだろ。いい加減、ごっこ遊びに俺を巻き込むなよ。俺達はどう足掻いても、悪魔でしかない」


 こいつ等……悪魔が神話ごっこでもしとるんか。ロキにでもなったつもりかいな。


「俺は女神様から許可を貰って、こっそり契約が理想だったけど、もしも鹿島が女神様を壊すなら、それでもまあ、悪戯完了って事で良かったんだけどなあ」


 その時、俺のスマホに兄貴からの電話がかかってくる。


「凛くんに何があった」


「火獅子の二人……こいつ等悪魔やったわ。凛は今寝かせとるから大丈夫や」


「……そうか。番っといて正解やったわ」


 番っていなかったらと思うとゾッとする。何せ悪魔は猫の魂が大好物で、契約した後すぐに魂を食う。だから猫の魂を持つ者は減り、猫を欲する死神とは対立関係にある。


「あ、バルドルから電話?? ねえねえ、ずっと気になってたんだよなあ。オディンズって、オーディンの事なの?? 俺さ、スポーツってこの時代で戦える、唯一の場所だと思ってんだよね。ヴァルハラってあるのかな?? 火獅子が風狼……女神様と戦ったらヴァルハラに行けるのかな?? あの時、戦えなくて俺ショックだったんだから」


 こいつ……ぶっ飛びすぎやろ。そこらのオタクよりタチが悪いわ。


「鳴海、お前まじでキモいぞ。悪魔が天界望んでどうすんだよ。そろそろ諦めろよ」


「はあ!? 諦められるわけないだろ!! 俺だって好きで悪魔になったんじゃない!!」


 はぁ……このタイプの悪魔か。居るんよなあ、こうゆう子供の頃に死んで悪魔になってもうた奴。子供は悪意なく悪さするし、親がちゃんと教えたげんと、そのまま成長してまう。せやから悪魔が増えてまうんや。俺等もあのままで、死ぬんが遅かったら、こうなっとった可能性あるんやもんな。


「……話は大体わかったわ。俺は凛くんが無事か、確認したかっただけやから、あとは任せたで」


 兄貴はそこで一方的に電話を切り、俺はこの状態の悪魔を刺激しない為に、凛を抱えて静かにその場から離れた。





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