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第三章 大事な繋がり
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しおりを挟む~sideゼル~
「ちょっとゼルさん。凛に何をした?? 凛との繋がりが切れた。これじゃ探してやれない」
陣……これやから犬は嫌いなんや。絆が強くて嫌んなるわ。
「探さんでええよ。墓守犬は大人しく、自分の縄張り守っとったらええわ」
「やっぱりあんた等、人間じゃないんだな。怖い訳だ……はぁ、凛をどうするのか知りませんが、俺は自分の家族を守らないといけません。家族の中で死者が出たら、案内人が来るまで魂を守る義務があります。でも凛がその枠から完全に外れた……これで俺は凛を待たずに、また違う家族のところへ行かないといけません。ちゃんと守って下さいよ……墓守犬になって初めて出来た、大事な可愛い弟なんですから」
「分かっとるわ。まあ、お前が墓守犬なら、凛とは死んだ後もちょくちょく会えるかもしれんな」
「まさか……案内人か。死神は猫を……そう言う事かよ。なら尚更守って下さい。守るならさっさと契約を済ませて下さいよ。俺は家族の魂しか視えないけど、凛が特別な存在なのは、一目瞭然なんですから」
「言われんでも、俺等の方が良く分かっとる。陣も自分の番くらい大事にしたれよ」
俺がそう言うと、陣は嫌そうにバスケ部の方に戻って行った。
番が気にならんわけでもないやろうに。ちゅーか、俺等の周りは犬が多すぎやろ。人間増えすぎとるんやから、墓守犬になる条件は分からんけど、もうちょい増やして欲しいわ。
俺は部活が終わり、家に帰ってから凛を起こすと、凛は俺を誘うように抱きついてくる。
もうそろそろ発情期きそうやな。毎日抱いとるから予定より早まっとるんか?? 大会に被らんとええけど……外に出したないな。あんな人多いとこで、フェロモンでも出してみぃ。騒ぎになってまう。
「ゼル……チュウして」
凛は口をあけて舌を出してみせる。その姿が可愛くて魂を視てみると、水色とグレーのオッドアイがキラキラと潤んでいて、ニ本の尻尾をピンッと上に立てたり、クネクネさせたりしている。これだけで明らかに誘っているのが分かった。
うわ、これ可愛すぎるな。兄貴はずっとこれ視とったんか?? これ視えとったなら、止められんかった気持ち分かる気ぃするわ。
俺は凛の誘いにのり、風呂場へ連れて行って抱いていると、兄貴が帰ってきて風呂場に来る。
「もうそろそろやな。やっぱ魂繋がると大分早まるんやな。大会にあたらんとええけど……凛くん、俺等の宝物、聞こえとるか??」
兄貴が凛に話しかけると、凛の猫が尻尾の先だけパタパタと動かす。凛は意識が朦朧としているのか、返事はないが、猫が尻尾で分かってるよと言っている。
「ゼル、今から準備してくるから、もうちょいそのままにしといてや。俺が先に番うから、お前は明日大会前だろうと休め。陣くんが上手い事説明してくれるやろ」
「は?? せやけど、まだ発情期きとらんで??」
「俺が発情期に引き摺り込む。番ったらお前のとこに連れてくから、自分のベッドに匂いついとるもん全部集めて待っとけ」
そう言って兄貴は風呂場を出て行き、俺は言われた通り凛の意識を飛ばさない程度に抱き続け、兄貴が凛を迎えに来るまで待った。
「ゼル、もうええで。凛くん、俺んとこおいで」
俺が抜いて、兄貴が凛を呼ぶと、凛は兄貴のところに手を伸ばした。
「あと、目休めとけや。お前ずっと使っとるやろ。肉体耐えれんで、失明しても知らんで」
せやった。あんま使うと、肉体の方が耐えれんくなるん忘れとったわ。
俺は凛と兄貴が居なくなってすぐに、風呂を出て自分の部屋へと向かった。自分の服やタオルを全部ベッドに出して、それでも足りないと感じ、今日着ていたものも、仕方なくベッドに置く。
「はぁ……こんなんやったら、もっと沢山買っときゃ良かったわ。今度もうちょい買っとくか」
番ってどんななんやろう。楽しみやけど、ちゃんと番えるんか不安やなあ。
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