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第三章 大事な繋がり
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しおりを挟むいよいよ10月に入り、俺はゼンの誕生日とシーズン、ゼルの誕生日と春高県予選の組み合わせなど、気になる事が多すぎて、俺は二人しか居ない空き教室で、陣に相談していた。
「陣……誕生日って何あげたらいいんだろう。バイトでもした方が良かったかな」
「そんなのしてみろ。お前、あの二人に閉じこめられるぞ」
そんな事しないと思う。してもせいぜい一週間くらいだろう。それに俺が本気で嫌がったら、割とひいてくれると思う。
「陣はどうなんだ?? お兄ちゃんと」
「お前まだ言ってんのか。俺と斗季にぃはそんなんじゃないからな」
「えー、でも陣は好きだろ??」
「好きじゃない!! つうか、お前は本人達に聞けば良いだろうが」
「こういうのは、こっそりサプライズの方が良いって書いてあった」
「……お前の場合はオープンすぎるけどな。今だってソレで撮られてるだろ」
陣が指を差したのは、ぬいぐるみに付けてるカメラだった。
忘れてた。でも今は授業中だし、ゼンも練習中だから、リアルタイムでは見れないから大丈夫だ。
「凛……バイトなんか許さんで」
「ヒッ……ぜ、ゼル」
俺と陣は背後からの声に、ビックリして後ろを向くと、いい笑顔でスマホ片手に、ゼルが立っていた。
「授業は??」
「俺優秀やからな……それより、兄貴から連絡入ってきたんや。バイトの話しとるから、止めろってな」
だって……俺も何かしたい。誕生日くらいなんかしてあげたいし。
俺が下を向くと、ゼルはしゃがんで俺の顔を覗いてきて、優しく頭を撫でてきた。
「俺等の誕生日、気にしてくれたんは嬉しいけどな、凛に何かあったらそれどころやないやろ?? それに、俺等が欲しいんは凛だけやし、俺の部屋見たやろ?? なんも無いんよ。欲しい物が無いんや。兄貴の部屋も、凛の物が増えてく一方で、服以外増えとらんやろ??」
だからこそあげたいのに、本当に何も欲しい物ないのかな。
「俺は一日二人っきりで一緒に居りたいな。めちゃくちゃに抱き潰して、俺だけで凛の事満足させたい!! 俺が凛にどうしても、やってもらいたい事あんねんけど……」
「ンンッ!! ちょっと、そのディープな話は家でして下さい。凛も分かっただろ。この人達、本当に凛しか見てないんだから、変な事は考えんなよ。つうかサプライズなんか、お前どこで得た知識だよ」
「陣、何言ってんの?? 今はスマホがあるんだから、調べれば出てくるだろ」
「いや……お前スマホ使わないじゃん。まあいいや。ゼルさんも暇なら、勉強教えて下さい。凛の集中途切れたのも、分からないところがあって、ネットで調べようとしたら、ちょうどサプライズプレゼントがニュース欄にでも出てきたんだろうし」
なんで分かるんだよ。お前その時俺が聞こうと思って話しかけても、気づいてなかったじゃんか!!
「ほぉ~……凛にそんな要らん知識つけたサイトは、どれなんやろうな。凛はテレビもスマホも見んから油断しとったわ。そんで、どこが分からんかったん??」
ゼルに身体が持ち上げられると、俺の座ってた椅子にゼルが座って、両足で挟まれるようにして俺は座らされる。
「ここ、ゼルのノートに書いてなかったから、教科書見たんだけど、それもよく分からなくて」
「んー?? この問題、俺等の一学期の期末か。ノートに書いとらんかった?? これこっちの問題の応用やで」
う……応用問題か。俺応用問題苦手なんだよ。
「そういや、凛は期末テスト何位やったん?? 合併してから初めてのテストやろ??」
「……2位。また陣に負けた」
「いや、凛は応用問題出た時に、空欄で出すからだろ。なんでもいいから書けばいいのにさ」
「だって分からないし……分かったやつは書くけど、分からないやつは、空白の方が後で答え書いた時にごちゃごちゃしないじゃん」
「凛は変なとこで几帳面やな。テスト用紙とか全部ファイリングしてあったし、この間なんかこっそりイタリア語の勉強しとったやろ」
なんでバレてるんだ!! ここで勉強してたはず……あ、カメラか。どうせバレてたなら教えてもらえば良かった。
「俺等が教えたるから、隠さんでや。なんなら他のも教えたるし」
「え!! いいの!? 俺ちゃんと覚えたい!!」
「ええよ。もしもの時ように覚えとくとええわ」
この時陣は思った。もしもの時とは、バレー関連ではなく、他の意味があるんだろうと。しかしそれは絶対に口に出さない。深く考えていない可愛い弟が、どこか遠くに離れていくような気がして怖かったから。
その日の夜、俺はゼンとゼルの二人と話し合いをした。勿論、昼間の事についてだ。
「凛くん、頼むからバイトなんかせんで。するんやったらうちの会社のオフィスで、ゼルと一緒やないと許さん」
「わ、分かった。でも二人の誕生日……」
「ゼルが良い提案しとったやん。二人っきりでって……00時から20時ってとこか??」
「まあ、そんくらいやない??」
本当にそんなのでいいのか?? もっと他にないのかな。折角の誕生日なのに。
「凛くん、俺等が欲しいのは凛くんや。その凛くんを、独り占め出来るなんか、一番のプレゼントやし、完全に自分一人だけで凛くん抱けるなんか、俺は正直どうなるか分からん。もしかしたら、物あげるより凛くんは大変かもしれんけど……ええよな??」
ゼンの目が一瞬ギラついた気がしたが、すぐに戻って嬉しそうに俺に抱きつく。
「凛も楽しみにしといてな!! 俺もはよ誕生日こんかな~。誕生日が楽しみなんか思うん初めてや」
ゼルも嬉しそうにしているのを見て、俺は本当に何もできないから内心ホッとした。
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