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第二章 新しい生活

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「凛くん、おはよう。今日は……ネコの日なんだ」


 更衣室に行くと、向井さんは何があっても、そこそこスルーできる人なのに、今日はあからさまに俺から目を逸らす。そしてみんなも、俺を見ないで話しかけてくる。


「凛……今日なんか……目のやり場に困るんだけど~」


「ゼル……さっき監督から聞いたが、午前中だけでも上に何か羽織らせておけ。俺等は大丈夫だが、他校とナニか間違いがあったら困るだろ」


「んー? あぁ……コレの事か。噛んだん兄貴なんよなあ。隠してもええんかな」


 ゼルが俺のシャツを少し引っ張って、首元を見てくる。そこには、ゼンが昨日噛みまくった痕があり、どうやらチラチラと見えていたらしい。


「頸のとこは俺等は慣れたけど、そこは慣れないな。それに他校の人達は、頸のとこも見た事なかったよな?? ゼンさん……すげぇ独占欲だな」


 圭人は引き気味に言ってくるが、もはやこっちが普通にしてた方が、みんな慣れてくれるんじゃないかと思った。どうせいつ見ても、何処かしらには絶対に痕があるわけだし。


「ゼンだけじゃないけどな……ゼルのは背中側だから見えないのか」


「やっぱりか……兄貴は気付いとったけど、そのままにしといたんやって。自分が居らんから隠すな言うとるわ。そんなら頸のテーピングも要らんよな。凛も毎日テーピング付けとったら、流石にかぶれてまうやろうし。俺のだけ見えへんのも嫌やからな」


 そう言ってゼルは持っていたテーピングをしまい、満足気に俺の頸にある、自分の方の噛み痕を撫でてくる。


「ヒッ……ゼ、ゼル!!」


「凛、可愛い!!」


 なんかゼル、昨日のアレからずっと俺の事、可愛い可愛いって言って、今みたいに抱きしめてくるんだけど、なんかあったのか?? 俺なにも変なことしてないよなあ……新しい扉でも開いたか?? ゼンは噛み癖、世話焼き、エッチ中はドS。ゼルは噛み癖と、キス好きで少し乱暴、エッチはゼンとは逆に結構優しい……これ以上新しい扉いらなくない??


 抱きついてくるゼルの頭を撫でると、ゼルはみんなが居る前でキスしてきて、察したみんなは更衣室を出て行ってしまった。


「ッ!!……ぜ、ぜる」


「あー、可愛い。なんか昨日思ったんやけど、凛が苦しそうにしながら、声出んほど感じとるとこかわええなって。プルプルしとるのが可愛い。今日も起きた時から、腰キツイんやろ?? それが可愛くてたまらんわ」


 コレは……新しい扉だ。うん……別に構わないよ。全部受け入れるって言ったしね!! でも……イコール抱き潰したいって事だよな……開かなくていい扉だったと思う。


 ゼルはもう一度キスしてきて、うっすら目を開けて見てみると、ゼルもうっすら目を開けていて、まさかの目が合ってしまった。


「凛、可愛い」


 唇を離すと、妖しく笑ってギュッと抱きしめてくる。


 うぅ……その顔ずるい。俺の事色気凄いとか言うくせに、ゼルもゼンもこう言う時の色気が凄いよ。それにめっちゃ眠い。


「もうそろそろ、あっち行かないけんな。腰抜けてしもうてる凛は、俺が連れてってやるからなあ」


 そう言って俺を横抱きすると、さっきまでの色気はなくなり、普通のゼルに戻っていた。その後最初の練習の時、シズをリベロ組の方へ連れてきて、俺が頑張って教えるが、他校のリベロ達に凄いガン見される。


「あ、あの。何か??」


「いやぁ……その噛み痕さ、独占欲凄いなって思って。ずっと隠してたんだ。凛くんを見ると目に入っちゃうから、痛くないのか気になっちゃってさ」


「触ったら痛いです。でも二人が薬塗ってくれるし、消毒してくれるんで、結構すぐに治ります。首はずっとありますけど」


 俺が志麻さんと話しながら、シズと新田のプレー動画を、教える為に撮っていると、俺のスマホにゼンからの通知がきた。


 なんだろ?? 今ってちょうどアップしてる頃だよな??


「ぬいぐるみ横に置いて、俺の事映してって……あっちでずっと見てるのか?? ちゃんと練習してるのかな」


 俺はゼルと離れている今、ぬいぐるみを横に置く事は出来ず、仕方なくぬいぐるみにつけていたカメラを横に置いた。


「え……もしかしなくても……本当に監視してるの!?」


「コレ凄いですよね。リアルタイムでゼンのパソコンでも、こっちの様子見れるんですけど、録画機能もあって、GPS付きみたいですよ。なんか配信してる感覚ですよね」


「……いや、俺は凛くんが凄いと思うよ」


 志麻さんは引き気味に言ってくるが、俺としてもこうして見られてるのは、近くに居るって感覚になるし、何をしてても忘れられてないんだって思えるから、結構ぬいぐるみと一緒で、精神安定剤になってたりもするんだ。それに……


「俺は凄くないです。どんな二人でも、受け入れるって決めてるだけですから」


「……やっぱり凄いな」


ティロン


 凛くんカッコいい!! 大好きや!!


 なんだろ……ここに居ないのに存在感が凄いな。というか、本当に練習ちゃんとしてるんだよね??


 その後も心配になりながらも、午後には練習に参加し、不破さんは今日はしっかりスパイクを打ってくれた。しかし、ゼンのスパイクに慣れてる俺は、しっかりと拾う事ができ、シズのレシーブも、圭人のスパイクも、だいぶ良くなってきていた。そして一番驚きだったのが、力任せに打っていたトシさんが、フェイントを入れるようになった事だった。


 ゼンは教えたっていうより、フェイントも入れろって言っただけなのかな。トシさん脳筋だから……頭使わないというか……でも意外とそれが決まっちゃったり……でも春高いくなら、確かに駆け引きはしてもらわないとだよな。俺もトシさんは脳筋っていう先入観で、トシさんのフェイントとかは考えた事なかったから、ゼンには感謝しないとな。

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