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第二章 新しい生活

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「凛、やっと捕まえた」


 暗い中、耳元で囁かれる声。その声に聞き覚えがありすぎて、ゾッとする。


「な、なんで」


「写真撮らせてって約束だったじゃん。まさか忘れたとか言わないよな?」


「し、写真なら父さんに……」


「んー、そう思ったんだけどさ、なんか欲しいのと違うなって思って、考えたんだよなあ。そしたら、凛のこの目……違うか、空中で合わさった時の、あの真剣で綺麗な目が欲しいと思ってさ」


 こ、こわい……だ、誰か。


「それであの目をレンズに向けるには、どうしたらいいのかって思ってたら、今日ちょうど良く、ヤン先にゼルとその兄貴二人と、付き合ってるから手を出すなって情報もらった訳。なあ、この首のやつ、マーキングだよな? ここ触ったら凛は首を守る為に、あの表情してくれるのかね。それとも犯せばいいのか?」


 い、嫌だ……じん……ゼンたすけて。声が出ない。


「ほら、ガーゼ取れた。守らなくていいのか?? あんな強気なんだから、怯える性格でもないだろ?」


 嫌だ嫌だ!! 触るなッ!! ゼル、ゼル 


「ゼル……たすけて」


バンッ


「鹿島テメェ!!」


 何かを殴るような音が聞こえる。それと共に複数の足音と、大きな声。けど俺の求めるのはコレじゃない。


「ゼル……ゼル……こわい。助けて。ゼル、ゼル」


 俺はうずくまり、何も見えない。身体の震えがおさまらない。複数の足音は、あの時の記憶を呼び起こす。誰かに触られる感触がする。


「ヤダ!! 触らないで!! ゼル、ゼル!!」


「凛!! 俺を見ろ!! ちゃんと見るんや!!」


 焦点がハッキリしてきて、よく見ると、そこにはゼルがこっちを見ていて、そのまま抱きしめてくる。


「ぜるぅ……おそ……い。こわ……かった」


「せやな、遅なってごめん」


 俺は抱きしめられてる安心感で、気を失うように眠りについた。


ーーーーーーーーーー

(sideゼル)


 部室へ行くと、凛がらんかった。HRでも長引いとるんやと思っとったら、体育館には陣の姿がある。


「陣、凛はどうしたん」


「え? 部室にいませんでした? 一緒に来たんですけど」


 は!? 居らんかったから聞いとるんや。


「なんか嫌な予感がします。中学の時もこんな感覚……」


 まさかッ!!


 陣の嫌な予感なら、悔しいけど信じるしかない。そう思って、部室に着くまでの部屋を全て開けていく。しかしそこには凛の姿が無く、最後に部室を通り過ぎて掃除用具室を開けた。そこには必死に首を隠してうずくまる凛の姿と、そこにのしかかるように迫る鹿島の姿があった。


「鹿島テメェ!!」


 思いっきり鹿島の顔を殴ったと思ったら、誰かに後ろから掴まれて、鹿島の顔をかすめる。


「誰や!! 邪魔すんなッ」


「殴ったらダメです。凛が悲しみますよ」


 ムカつく程冷静な陣によって止められ、ムシャクシャする気持ちぶつけるように壁を殴る。


「何してんの……って鹿島と凛くん!? まって凛くんパニックになってない!?」


「何したの~?? え……凛? なんで……あんな凛見たことない」


「おい、お前等ここで何してんだ。早く練習……凛!? と火獅子の……おい、お前等どけ。部室に行ってろ、誰にも言うなよ!? 陣は両親に連絡とれ。ゼル、お前殴ってないんだろ? だったら凛のとこ行ってやれ。お前の事必死で呼んでるぞ」


 先生にそれを言われて、急いで凛の元へ行く。しかし凛のパニックがおさまる気配がない。ただただ俺に助けを求めている。


 これ見えとらんな。焦点があっとらん。


「凛!! 俺を見ろ!! ちゃんと見るんや!!」


 顔を掴んで、思いっきり呼びかける。すると、認識できるようになったのか、だんだん落ち着いてきて、意識を失うように眠ってしまった。


「センセ、あとは任せてええか?」


「あぁ、殴ってないなら問題ない。あとはこっちに任せろ。こうなったら仕方ないからな、バレー部には凛の事全部説明しとくわ」


 あいつ等なら大丈夫やろ。守れる奴等増えんのやったらええわ。


「陣、俺はお前がムカつく。けど止めてくれんかったら、俺はアイツを殴っとったわ。ありがとな」


「いえ、ムカつくのは意味が分かりませんけど、俺は中学の時相手殴って停学くらったんで。その経験からしてみたら、今日のはまだいい方ですよ。間に合って良かったですね」


 ほんまムカつくわ。けどまあ、凛が俺を呼んでくれとったからええわ。それより両親に連絡て、必然的に兄貴にも知られてまうよな。一発くらいは覚悟しとこか。


 俺は意識のない凛をおぶってうちに帰り、兄貴の部屋の方へ凛を連れて帰った。

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