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第一章 出会い
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しおりを挟む「陣……俺って男に好かれる体質なのか? いや、別に偏見とかはないんだけど」
「ブフォッ! 今更かよ。お前あんなに色んな奴等に、恋愛対象で見られてんのに気づいてなかったのか!? まあ俺も教えなかったけど」
陣……お前知ってて言わなかったって事は、俺で遊んでただろ!!
「面白がるな。真剣なんだよこっちは」
「関西弁の人にでも告られたのか?」
「ッ!! だ、だって俺告られた事なんてないし」
「お前ずっと前に好き好き言われてなかったか?」
「なんか後輩としてだと思ってた。それに、お兄さんの方にも告られたんだ」
「ん? もう一人の人は?」
もう一人?? 誰の事だもう一人って。まさかシズか!? シズはアレ恋愛対象というより、友達の執着みたいな感じなんだよなあ。今思うとゼルさんとはちょっと違う。執着すごいし怖いけど、基本チャラチャラしてて、ずっと俺にベッタリってわけじゃないし。友達としてちゃんとシズの事も構ってやれば、それで満足してるとこあるしなあ。
「凛……多分そっちじゃない。まあいいや」
「そっちってどっちだよ」
「俺から言えるのは、お前は年上の男に恋愛対象に見られるって事くらいだな。あとは信者が多いぞお前」
「信者って……そういう陣はどうなのさ。俺の双子なんだから、お前だって男に好かれてもいいだろ」
「安心しろ、俺は友人枠だ!!」
「安心じゃねぇ!! 寧ろ道連れにしてやる!!」
「俺って男前だから、ムリムリ。そもそも恋愛してる余裕なんかねぇの。俺は凛がバレーをやめない限り、バスケで生きるんだからな」
なんかムカつくな。まあ俺も恋愛経験なんてないし、部活はやってなかったとしても、今までずっとバレーに注いできたからなあ。
結局陣に相談しても、ムカついただけで終わり、俺は動画を何度も見て確認してから眠りについた。
「凛、昨日陣の方は大丈夫だったか?」
大会会場へ行く時は、学校集合なので、朝早くに学校に行くと、先生からいきなり陣のことを聞かれた。
「……?? あぁ、勝てましたよ」
「違う!! あいつ試合に間に合ったのか? 佐良さんからいきなり連絡きて、凛にゼルをつけて陣の試合を見せてやってほしいって言われたんだよ。そんで、陣も方向音痴なんだろ? 俺からしたら、お前等二人そろって方向音痴なんて想像もつかんが、佐良さんがわざわざ連絡してくるんだ。よっぽどだろ?」
「いやぁ、ほんま二人とも徒歩でナビ使ててビックリやったわ。そんでナビ使てるのに、なんで目的地の周りグルグルすんねん」
いきなりゼルさんの声が聞こえて、少しドキッとしたが、それより今俺は反論したい!!
「だって……ナビって目的地に着きましたって、いきなり放り投げるんですよ」
「そらそうやろ。着いとるんやから」
「いや、せめて入り口に着いてから終わって欲しいんです。だから陣みたいなのが出てきちゃうんですよ」
「あー、なんだ。凛が大変だろうから、今後学校以外のとこで練習する時バス出すから。だから落ち着け? な?」
違う。そういう話じゃないんだ。バス出してくれるのはありがたいけど、今はナビの話なんだよ。
「俺専用のナビ欲しい」
「俺が居るやん!! 彼氏がナビもしてくれんねんで? お得やない? お得やろ?」
正直それは凄い惹かれる。でもそんなんで決めちゃダメだろ。
「りーん、おはよう。どうしたの~? 難しい顔してるけど」
みんなだんだんと集まってきて、シズはきた途端に俺にのしかかってきた。
「シズ、お前最近重いんだけど、全体重かけてない?」
「だってどうせするなら、凛が鍛えられるようにしろってトシさんに言われたんだよ~。それなら何も言わないって言うから、凛に抱きついても最近何も言われないでしょ~?」
みんな慣れてきてるだけだと思ったら、そういう事だったのか。トシさんは俺をどうしたいんだ? 俺筋肉仲間だけは嫌だぞ。
「よし、全員集まったな。今日の試合は昨日伝えた通り、美澄が相手だ。大丈夫だとは思うが、油断はするなよ」
『はい!!』
俺達はバスに乗りこみ、全員で動画を見て思った事や、注意点などを話し合いながら、会場へと向かった。試合会場はそこまで遠くないため、すぐに着いてしまったが、これと言って注意する選手も居なかったため、話し合いには丁度いい時間だった。
「初っ端だからな。すぐにアップして着替えろよ~」
アップをして、今日も向井さんと着替え。そしてコートに入り、なぜか俺だけ一人、先生と軽くパスをしながら、隣コートのスパイク練を見てろと言われた。
隣は……菱洋高校?? 確か同じブロックだから、勝ち上がっていけば準決勝であたるのか。
「前回うちが負けたところだ。凛から見てどう思う」
「んー、パス練しながらだとあんまり見れませんけど、正直なんで負けたのか分かりませんね。敗因はレシーブなんでしょうけど、何がそんなにダメだったんです?」
「今年からは居ないが、去年居た新垣清って奴のスパイクがなあ……アタックラインより手前の、超インナーに打ってくるんだよ。そんでユース合宿にも選ばれてたな」
それは凄いな。肩が相当柔らかくないと無理だ。それとも身体の向きごと、助走からインナーに向かって打ってたのか??
「でもその人が居ないなら、先生は何を警戒してるんですか?」
「後輩全員だ。流石に化け物じみた奴は居ないだろうが、それなりに細かい打ち分けはしてくるはずだ。あの学校は優れたコントロール力で勝負するチームだ」
「それは試合にならないと、なんとも言えないですけど……俺が抜けたローテで確認してしろって事ですか? 俺が打ち分けを見破れるのか」
「そうだな。勿論この試合と次の試合を勝たなければ、菱洋とはあたらんが、前もって確認しておくに越した事はない。それにここまで近くで見れるなら、凛としてはラッキーなんじゃないか?」
そりゃそうだけど、目の前の試合に集中しないと、負ける可能性だってあるんだから、先生がそんなんじゃダメだろうが。
「まあ少しくらいは見ておきますけど、俺は目の前の試合を優先しますよ。そうじゃないと相手に失礼だ。俺はどんな相手でも手は抜かないし、特にスパイカーには紳士でありたいんですよ。俺は攻撃をしてもらわないと、居る意味のないリベロなんでね」
「……悪かった。まさかそんな事を考えてるリベロが居るとは思わなかった。というより考えが凄いな。味方に対してなら、みんなそれぞれ何かしら思うとこがあるだろうが、敵に対してそこまで考えられる奴は、そうは居ないぞ。あいつ等が楽しそうに、凛にスパイクを打つ理由が分かった気がするわ」
いや、それは流石に大袈裟だろ。なんか恥ずかしいわ。
「でも先生が、俺達を勝たせてやりたいって気持ちは、ちゃんと伝わりました。だから先生は、そのまま先を考えて行動してください。俺達は目の前の試合から、コツコツ頑張って、先生が考えた先に追いついて、追い越しますから」
それだけ伝えれば十分だと思い、パス練をやめてボール拾いに向かった。
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