癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

文字の大きさ
上 下
108 / 109
第二章

37.暴れる理由

しおりを挟む


~sideディア~


 俺は、今のユユが可愛くて仕方ない。
 外に出ても、遊んでいても、俺達のところから離れようとはしねーし、ちょくちょく戻ってくんのも可愛い。
 それってさ、俺達に依存してるって事じゃん。
 ユユは俺達から離れられねーって事じゃん。
 そんなの、ツガイにされたら可愛くないわけねーよな? けど、俺は知ってる。
 俺が満足してるって事は、ディオには不満があるって事になる。
 そんで、闇を共有してる俺達は、どっちかの闇が癒されすぎれば、片方は闇を引き受ける事になるって事も……俺達二人が満足できるのは、結局ユユを抱いてる時だけだ。


 こんな事、ユユは知らねーし、俺達もバレねーようにしてる。
 バレれば、ユユはどうしていいか分からなくなる。
 もしかしたら、俺達から逃げる可能性だってあるし、ずっと交わっててもいいって言うかもしんねーし……そんなのはユユの為にならない。


「はぁ……暴れるって、具体的には何してーの?」


 俺がディオを自由にすると思ったのか、魔王達は絶望的な表情をする。
 そして、ユユにどうにかしてほしいのか、やたらと闇に包まれたユユがいる部分を見ていた。
 その行動が、ディオの闇を更に加速させているとも知らず、魔王達はユユに助けを求めていた。


「闇で覆えば、あとはどうとでもできる。とりあえず、いっきに闇をはき出す予定だったから、闇化で消える魔物や悪魔は多いだろうね。現時点で、闇化がかなり進んでると考えたら、半分くらいは減るんじゃない?」


 ディオはまだ、闇で覆う話しかしていないにも関わらず、その発言にルキフグスは怯えだした。
 闇の住人である悪魔だろうと、闇は恐怖の対象でしかないのだろう。
 癒しもそうだが結局のところ、何事においても無ければ困るが、多すぎても毒にしかならないという事だ。
 癒しが多すぎれば、俺達がいなくても人は自ら闇を作り出し、それすらもユユが癒してしまえば、何年後になるか分からないが次はユユが悪者扱いを受けるだろう。


「半分減らして、闇の調整をするなら俺は止めねーよ。魔界はダンジョンを自由に作りすぎだ。要らねーもんは引っ込めて、他が突破されれば新しく出せばいい。そんで、突破されたダンジョンは引っ込める。そうじゃねーと、またキメラの時みてーになる」


 キメラの件を知っている魔王達は、俺達が睨めば目を逸らし、ルキフグスはとうとう部屋から出て行ってしまった。


「キメラの件は、そもそもダンジョンが原因でしょ。だったら、そのダンジョンを管理する魔界を、少しくらい壊してもいいと思ってね。暴れる口実があるから、ついでに発散しようと思ったんだよ」


「そんじゃ、例のダンジョンマスターでも呼び出して暴れてーの?」


「そうだよ。あの時のユユを知ってるなら、魔王も止められないよね? 民半分とダンジョンマスター、それだけの被害で済む。風ノ国だけを壊して、魔界を壊さないなんて不公平でしょ?」


「確かにな……分かった。じゃあ、ユユは俺が預かるから、闇をはき出したら魔王の誰かに頼んで、例の奴を連れてきてもらうか」


 俺は、闇に覆われた無防備なユユを抱え、ディオがいっきに闇をはき出し、一瞬で魔界中を闇で覆った。
 すると、案の定半分ほど闇化で消えてしまい、魔王アステロトがすぐに動いた。
 おそらく、ダンジョンマスターを連れてこようとしているのだろう。
 そうして連れて来られたダンジョンマスターは、なんと先ほどまで部屋にいたルキフグスだったのだ。


「へぇ~……こいつが、ダンジョンを放って逃げたダンジョンマスターだったのか」


 普通、攻略されたなら新たに魔物や罠を配置したりするが、ダンジョンにこもって研究ができてしまうほど安全なダンジョンだったというのは、さすがに違和感があった。
 一度攻略されれば、その後が攻略しやすくなるとは言え、研究なんてものは冒険者を雇ったとしても難しいだろう。
 なにより、ダンジョンと外を行き来しての研究ではなく、こもって研究していたというのが、俺もディオもずっと引っかかっていたのだ。


「魔界にいるってことは、今でもあのダンジョンは放置してるって事になるね。まさか、本当に放置してるとは思わなかったよ」


「双黒はずっと向こうにいて、どれだけ弱っても帰ってねーのに、お前はこんなところで何してんだか。今は風ノ国がダンジョンを封鎖してっけど、それもいつまで封鎖できるか分かんねーんだしさ……さっさと引っ込めろよ」


「ヒッ……ひ、引っ込めたら───」


 また何か、言い訳をしようとしているルキフグスに対し、俺達の怒りが膨れ上がった次の瞬間、ユユが俺達の闇を打ち消し、神々しい姿を見せてしまった。


「ディディ!」


 なんで寝起きで獣化してんのに、こんなに神々しいんだ。
 寝癖もついてんのに、意味わかんねー。
 寝癖ついてて、可愛い姿なのに神々しいって、ユユくらいなんじゃね? とりあえず、すげー怒ってんのは分かる。


「ディディ、なんで起こしてくれないの! 僕だって悪役になれるのに!」


 どうやら、ユユは自分も悪役になりたかっただけのようだ。
 そして、俺達と一緒に怒りを露わにするユユは、眩しいくらいの光を放ち、癒しではなく攻撃系の聖魔法でルキフグスを覆ったのだ。




しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

処理中です...