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第二章
37.暴れる理由
しおりを挟む~sideディア~
俺は、今のユユが可愛くて仕方ない。
外に出ても、遊んでいても、俺達のところから離れようとはしねーし、ちょくちょく戻ってくんのも可愛い。
それってさ、俺達に依存してるって事じゃん。
ユユは俺達から離れられねーって事じゃん。
そんなの、ツガイにされたら可愛くないわけねーよな? けど、俺は知ってる。
俺が満足してるって事は、ディオには不満があるって事になる。
そんで、闇を共有してる俺達は、どっちかの闇が癒されすぎれば、片方は闇を引き受ける事になるって事も……俺達二人が満足できるのは、結局ユユを抱いてる時だけだ。
こんな事、ユユは知らねーし、俺達もバレねーようにしてる。
バレれば、ユユはどうしていいか分からなくなる。
もしかしたら、俺達から逃げる可能性だってあるし、ずっと交わっててもいいって言うかもしんねーし……そんなのはユユの為にならない。
「はぁ……暴れるって、具体的には何してーの?」
俺がディオを自由にすると思ったのか、魔王達は絶望的な表情をする。
そして、ユユにどうにかしてほしいのか、やたらと闇に包まれたユユがいる部分を見ていた。
その行動が、ディオの闇を更に加速させているとも知らず、魔王達はユユに助けを求めていた。
「闇で覆えば、あとはどうとでもできる。とりあえず、いっきに闇をはき出す予定だったから、闇化で消える魔物や悪魔は多いだろうね。現時点で、闇化がかなり進んでると考えたら、半分くらいは減るんじゃない?」
ディオはまだ、闇で覆う話しかしていないにも関わらず、その発言にルキフグスは怯えだした。
闇の住人である悪魔だろうと、闇は恐怖の対象でしかないのだろう。
癒しもそうだが結局のところ、何事においても無ければ困るが、多すぎても毒にしかならないという事だ。
癒しが多すぎれば、俺達がいなくても人は自ら闇を作り出し、それすらもユユが癒してしまえば、何年後になるか分からないが次はユユが悪者扱いを受けるだろう。
「半分減らして、闇の調整をするなら俺は止めねーよ。魔界はダンジョンを自由に作りすぎだ。要らねーもんは引っ込めて、他が突破されれば新しく出せばいい。そんで、突破されたダンジョンは引っ込める。そうじゃねーと、またキメラの時みてーになる」
キメラの件を知っている魔王達は、俺達が睨めば目を逸らし、ルキフグスはとうとう部屋から出て行ってしまった。
「キメラの件は、そもそもダンジョンが原因でしょ。だったら、そのダンジョンを管理する魔界を、少しくらい壊してもいいと思ってね。暴れる口実があるから、ついでに発散しようと思ったんだよ」
「そんじゃ、例のダンジョンマスターでも呼び出して暴れてーの?」
「そうだよ。あの時のユユを知ってるなら、魔王も止められないよね? 民半分とダンジョンマスター、それだけの被害で済む。風ノ国だけを壊して、魔界を壊さないなんて不公平でしょ?」
「確かにな……分かった。じゃあ、ユユは俺が預かるから、闇をはき出したら魔王の誰かに頼んで、例の奴を連れてきてもらうか」
俺は、闇に覆われた無防備なユユを抱え、ディオがいっきに闇をはき出し、一瞬で魔界中を闇で覆った。
すると、案の定半分ほど闇化で消えてしまい、魔王アステロトがすぐに動いた。
おそらく、ダンジョンマスターを連れてこようとしているのだろう。
そうして連れて来られたダンジョンマスターは、なんと先ほどまで部屋にいたルキフグスだったのだ。
「へぇ~……こいつが、ダンジョンを放って逃げたダンジョンマスターだったのか」
普通、攻略されたなら新たに魔物や罠を配置したりするが、ダンジョンにこもって研究ができてしまうほど安全なダンジョンだったというのは、さすがに違和感があった。
一度攻略されれば、その後が攻略しやすくなるとは言え、研究なんてものは冒険者を雇ったとしても難しいだろう。
なにより、ダンジョンと外を行き来しての研究ではなく、こもって研究していたというのが、俺もディオもずっと引っかかっていたのだ。
「魔界にいるってことは、今でもあのダンジョンは放置してるって事になるね。まさか、本当に放置してるとは思わなかったよ」
「双黒はずっと向こうにいて、どれだけ弱っても帰ってねーのに、お前はこんなところで何してんだか。今は風ノ国がダンジョンを封鎖してっけど、それもいつまで封鎖できるか分かんねーんだしさ……さっさと引っ込めろよ」
「ヒッ……ひ、引っ込めたら───」
また何か、言い訳をしようとしているルキフグスに対し、俺達の怒りが膨れ上がった次の瞬間、ユユが俺達の闇を打ち消し、神々しい姿を見せてしまった。
「ディディ!」
なんで寝起きで獣化してんのに、こんなに神々しいんだ。
寝癖もついてんのに、意味わかんねー。
寝癖ついてて、可愛い姿なのに神々しいって、ユユくらいなんじゃね? とりあえず、すげー怒ってんのは分かる。
「ディディ、なんで起こしてくれないの! 僕だって悪役になれるのに!」
どうやら、ユユは自分も悪役になりたかっただけのようだ。
そして、俺達と一緒に怒りを露わにするユユは、眩しいくらいの光を放ち、癒しではなく攻撃系の聖魔法でルキフグスを覆ったのだ。
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