癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

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第二章

34.自分の立場

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 毛玉の悪魔達が、ディディの言葉を聞いて僕から離れると、魔物と動物も離れていき、自由になった僕はディディに手を引かれる。


「ユユ、双黒のところに行くよ。ギンとアスルは、シア達を空島まで連れて行ってあげて」


「それと、ハクの面倒も見ておいて。あいつ、俺達の気配がなくなったら暴れそうだし」


 確かに、ハクは暴れそうだけど……何も知らされてないスイの方が心配。
 大丈夫かな……というか、スイって暴れたりするのかな?


 僕達はみんなとわかれてダンジョンへ行き、僕の月によって明るくなったダンジョン内を進む。
 毛玉達はダンジョンの外にいたため、月がある事に驚いた様子で、癒しの効果で進みが遅くなる。
 そのため、僕達は先に奥へ行き、属性ごとにわかれて眠る双黒の元へ来た。


「双黒! フワフワ毛玉いたよー!」


 僕は、何度か会ったことで慣れてきた双黒に手を振って報告すると、双黒は姿を変えて嬉しそうに口を開こうとするが、なぜか急に怯えだして僕から目を逸らした。
 原因を探る為に、とりあえず一番に原因になりそうなディディを見てみると、ディオは笑顔で機嫌が良さそうだが、ディアは不機嫌ぎみに僕の手を見ている。
 そこで漸く、原因が自分だった事に気づき、手を振る為に放してしまったディアの手を、急いで握る。


 ふぅ……危なかった。
 気づかないうちにディアの闇をためて、意地悪されるところだった。


「ユユ、なに安心してんの? つーか、なんで誤魔化せると思ってんのかな」


「ぴッ……ディ、ディア……怒ってる?」


 僕が安心したところで、ディアに尻尾を掴まれてしまい、僕とは真逆で楽しそうに尻尾を振るディアが、僕の目元にキスをしてくる。


「可愛い。そんな怯えても可愛いだけだし、むしろ俺もディオも興奮するから」


「ディア、巻き込まないでくれる? 事実だけど、今は魔界に行かないといけないんだから。機嫌が直ったなら、その殺気抑えなよ。双黒もだけど、あの毛玉達もこっちに来れないでいるから」


 どうやら、毛玉達がいまだに来れないでいるのは、癒しの効果もあるのだろうが、ディアの殺気が原因だったようだ。
 ディオに言われて殺気を抑えたのか、ディアがフッと息を吐くと、双黒はこちらに近づいてきて、毛玉達もすぐに合流できた。
 それからは、双黒が地面に描いた五芒星の陣に、悪魔全員の毛を綺麗に並べていく。
 毛玉が陣を囲むように並び、緑、赤、橙、黄、青の順で、五芒星に合わせるように色のついた光の柱ができると、陣の中へ入れば魔界へ行けると双黒は言う。


「双黒と毛玉は来ないの?」


「この陣を維持する為に、そこの毛玉も含めて魔界へは行けせん。それに我々はこちらの世界に干渉し、神話時代からこのダンジョンにいました。もはや、魔界に我々の居場所はありません」


「月神が消えて回復もできなくなった俺達は、弱ったことで魔界にも帰れてねェし、ここのダンジョンは誰も来ねェから、贄がなくて更に弱る一方だった。それに、回復もできてねェ状態でこのダンジョンから出れば、サタナキア・バフォメットは消えちまう。そこの毛玉も弱ってる分、ダンジョンからは出れても島からは出れねェんだ」


 そうなんだ……知らなかった。
 悪魔とか魔界については……僕は遊んでてあんまり聞けてないけど、ディディは聞いてた。
 でも、双黒の話はほとんど聞いてないのは知ってる。


「癒し子様、そんなに悲しまないでください。我々は長年耐えてきたからこそ、今の幸運が巡ってきたのだと思っています」


「そうだぜ。向こうの奴らは、聖獣様に会いてェって言ってる奴が多いみてェだし、今更こっちに来ようとしてる悪魔もいるらしいからな」


 でも、居場所がないなんて悲しいよね。
 僕だって、居場所がなかった時は辛かった。
 だからといって、双黒に僕の考えを押し付けるのも良くない……のかな? 


「……ディディ」


「ん? どうしたの? 口に出して言ってごらん。もしかしたら、双黒は迷惑なんて思わないかもしれないよ」


「つーか、迷惑なんて言ったら、俺達の手か足か口が出るだけだしな」


 ……手か足か口って、もう全部出ちゃってるよ。
 僕の考えてることも気づいてるみたいだし、言ってみてもいいのかな? でも、ここで言ったら双黒に押し付けちゃう感じがする。
 というか、僕が言っちゃうのはあんまり良くないんだ。
 ディディとか眷属とか、あとは精霊とシアくん達神官とママさん達には、言ってもいいと思うんだけど……その他はちょっと……立場的に駄目だと思う。


「やっぱり言わない。ディディになら言ってもいいけど、今はやめておく」


「ふふっ、ユユは本当に可愛いね。いいよ、ユユが決めたなら黙っててもいいし、言葉を発するのも怖いなら、無理に喋らなくていいからね」


「ユユ、最近喋らねーように獣化してんじゃん? 楽だからってのもあるんだろうけど、話も聞かねーようにしてるみてーだし。思った事とか、口に出さねーようにしてんじゃねーの? 聖獣になってから、前よりは思った事を口にするようになったから尚更な」


 うっ……なんでバレてるの。
 ディディに分かってもらえるのは嬉しいけど、ちょっと遊びたい気持ちもあるし、興味がない事も多くなったの。
 もしかして、それもバレちゃってるのかな。


 今回思った事は、双黒には伝えないと決めると、僕はディディに手を引かれて陣の中へ入り、目を開けられない程の光と少しの浮遊感の後、ゆっくりと目を開けた。


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