癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

文字の大きさ
上 下
103 / 109
第二章

32.嫉妬

しおりを挟む


 サタナキアの説明から、双黒の最初の姿が属性を表しているものだったと分かり、ディディは新たな発見に目を輝かせて楽しそうに聞いていた。


「ディディの目……キラキラ……むぅ、双黒ずるい」


 一瞬でもディディを奪われたような気がし、僕は獣化してディディの足元を掘って、わざと土をかけた。
 ディディの気をひきたくて、意地悪をしてみるが、ディディは双黒の話に夢中で、僕のことを見てくれない。


 双黒の五芒星や属性について、それから悪魔について詳しく知りたいようで、いろいろと訊いているが、僕はなぜかあまり興味がわかず、それどころかどんどんディディを奪われるような気持ちになる。


「ディディ! ディディー!」


 ズボンの裾を噛み、引っ張ってみてもディディは尻尾を揺らすだけで僕を見てくれず、双黒はチラチラと僕の方を見てきた。
 それもまた嫌で、僕は双黒に向かって毛を逆立てながら威嚇した。


「ディディは僕の! とらないで!」


 その瞬間、癒したいという気持ちがなくなってしまい、ダンジョンが真っ暗になって何も見えなくなる。
 そこで僕はディディの足にしがみつこうとするが、その前に大好きな匂いに包まれ、心底嬉しそうな声で僕の名前を呼ぶ。


「ユユ……あぁ、本当に可愛いね。可愛すぎて意地悪しちゃった。ごめんね」


「俺達がユユを優先にしない訳ねーじゃん。確かに、訊きてーことはあったけど、それ以上にユユの嫉妬が可愛すぎて意地悪した。許して」


 僕のこと忘れてたんじゃなかったの? 本当に、僕のこと考えてくれてた?


「ディディ……ディディ、寂しかった。悲しかった」


「ごめんね、ユユ。泣かないで。意地悪しすぎちゃったね」


「けど、いつもと違うユユが見れて、俺達は幸せ。ユユの全部の感情が、俺達に向けられてんのが嬉しい」


 そ、そうなの? 僕の全部がディディに……もしも、嫌いって気持ちもディディに向かってたらどうするの? ディディ、怒るかな? でも……こんな意地悪は嫌い。
 これも、言ったら喜んでくれるのかな。


「……無視するディディは嫌い」


「「はあ? なんて言った?」」


「ぴゃッ」


 ディディの闇がいっきに溢れ出し、双黒も魔物達も全員が逃げて行くような気がしたが、抱えられている僕は逃げることができず、プルプルと震える事しかできない。
 そんな僕を、ディオは不気味なほど優しく抱きしめ、ディアも同じような雰囲気で僕を撫でてくる。


「ユユ、どうして嫌いなんて言うの? 本当に嫌い? それでも離れてあげないよ。絶対にどこにもやらない。ユユは俺達のツガイでしょ。忘れちゃった? 忘れちゃったなら、もう一回ツガイになろうか」


「何回も半殺しにしてんのバレたりしたか? いや、バレる訳ねーし、そもそも聖獣になってからはしてねーしな。なら、どこに嫌う要素があんだ? そもそも聖獣になった時点で、ユユを道連れで殺したようなもんだし、そこで嫌ったりはしねーよな?」


 ひッ……ぼ、僕……殺されそうになってたの!? それに何回もって……い、いつの話なんだろう。
 というか、僕はさっきのことを言ってたのに、ディディのなかでは、ディディが嫌いに変わっちゃってる。


「ディディ、僕はディディが好き! 大好き! で、でも……さっきみたいに、無視されるのは嫌い。悲しくて寂しかった。あと……どんな僕でも好きなら、喜んでくれるのかと思って……ごめんなさい。僕、ディディが好き」


 僕はディディの反応が怖くて、ギュッと目を瞑りながらも、誤解を解く為に説明した。
 すると、ディディの重かった闇が軽くなり、甘い香りが漂ってきて恐る恐る目を開けてみた。


「そっか……ごめんね、ユユ。怖がらせちゃったね。でも、嫌いなんて言われるのは、残念ながら受け入れられないかも。ユユがどんなに俺達を嫌っても、俺達はユユを手放す気はないからね」


「無理にでも俺達に縛りつける……つーか、普通に余計な事言ったかも。ユユ、今の全部忘れて。ユユが離れていきそうで不安な時に、殺してでも俺達に縛りつけようとしただけだから。想像しただけだから」


 え……でもさっき、半殺しって言った。
 僕は全然記憶にないけど、絶対に本当のこと言ってたよね。
 闇が溢れる時のディディは、冗談なんて言わないもん。


「大好きなツガイから貰ったものは、どんな物や言動でも、忘れられないよ」


「……ユユ、家に帰ろうか。優しく可愛がってあげる」


「今のは、誰もいねー所で聞きたかったな。ほんと……どうやって可愛がってやろうかな」


 そうして、本当に僕はディディによって家に連れて行かれ、双黒はダンジョンで僕達のことを待っていると言って、ダンジョンの奥へと消えていった。
 その後は誰も戻ってこないまま夜を迎え、そのまた数日後にママさんが鏡のゲートを使って、シアくん達の食糧や僕のお菓子などを持ってきてくれるが、まだ誰一人として戻ってくることはなく、みんなの様子を把握できるディディは、イタズラ顔で楽しそうにしていた。
 その間、僕達は悪魔について双黒に教えてもらい、ダンジョンは魔界が管理しているのだと知ったのだ。





しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

処理中です...