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第二章
32.嫉妬
しおりを挟むサタナキアの説明から、双黒の最初の姿が属性を表しているものだったと分かり、ディディは新たな発見に目を輝かせて楽しそうに聞いていた。
「ディディの目……キラキラ……むぅ、双黒ずるい」
一瞬でもディディを奪われたような気がし、僕は獣化してディディの足元を掘って、わざと土をかけた。
ディディの気をひきたくて、意地悪をしてみるが、ディディは双黒の話に夢中で、僕のことを見てくれない。
双黒の五芒星や属性について、それから悪魔について詳しく知りたいようで、いろいろと訊いているが、僕はなぜかあまり興味がわかず、それどころかどんどんディディを奪われるような気持ちになる。
「ディディ! ディディー!」
ズボンの裾を噛み、引っ張ってみてもディディは尻尾を揺らすだけで僕を見てくれず、双黒はチラチラと僕の方を見てきた。
それもまた嫌で、僕は双黒に向かって毛を逆立てながら威嚇した。
「ディディは僕の! とらないで!」
その瞬間、癒したいという気持ちがなくなってしまい、ダンジョンが真っ暗になって何も見えなくなる。
そこで僕はディディの足にしがみつこうとするが、その前に大好きな匂いに包まれ、心底嬉しそうな声で僕の名前を呼ぶ。
「ユユ……あぁ、本当に可愛いね。可愛すぎて意地悪しちゃった。ごめんね」
「俺達がユユを優先にしない訳ねーじゃん。確かに、訊きてーことはあったけど、それ以上にユユの嫉妬が可愛すぎて意地悪した。許して」
僕のこと忘れてたんじゃなかったの? 本当に、僕のこと考えてくれてた?
「ディディ……ディディ、寂しかった。悲しかった」
「ごめんね、ユユ。泣かないで。意地悪しすぎちゃったね」
「けど、いつもと違うユユが見れて、俺達は幸せ。ユユの全部の感情が、俺達に向けられてんのが嬉しい」
そ、そうなの? 僕の全部がディディに……もしも、嫌いって気持ちもディディに向かってたらどうするの? ディディ、怒るかな? でも……こんな意地悪は嫌い。
これも、言ったら喜んでくれるのかな。
「……無視するディディは嫌い」
「「はあ? なんて言った?」」
「ぴゃッ」
ディディの闇がいっきに溢れ出し、双黒も魔物達も全員が逃げて行くような気がしたが、抱えられている僕は逃げることができず、プルプルと震える事しかできない。
そんな僕を、ディオは不気味なほど優しく抱きしめ、ディアも同じような雰囲気で僕を撫でてくる。
「ユユ、どうして嫌いなんて言うの? 本当に嫌い? それでも離れてあげないよ。絶対にどこにもやらない。ユユは俺達のツガイでしょ。忘れちゃった? 忘れちゃったなら、もう一回ツガイになろうか」
「何回も半殺しにしてんのバレたりしたか? いや、バレる訳ねーし、そもそも聖獣になってからはしてねーしな。なら、どこに嫌う要素があんだ? そもそも聖獣になった時点で、ユユを道連れで殺したようなもんだし、そこで嫌ったりはしねーよな?」
ひッ……ぼ、僕……殺されそうになってたの!? それに何回もって……い、いつの話なんだろう。
というか、僕はさっきのことを言ってたのに、ディディのなかでは、ディディが嫌いに変わっちゃってる。
「ディディ、僕はディディが好き! 大好き! で、でも……さっきみたいに、無視されるのは嫌い。悲しくて寂しかった。あと……どんな僕でも好きなら、喜んでくれるのかと思って……ごめんなさい。僕、ディディが好き」
僕はディディの反応が怖くて、ギュッと目を瞑りながらも、誤解を解く為に説明した。
すると、ディディの重かった闇が軽くなり、甘い香りが漂ってきて恐る恐る目を開けてみた。
「そっか……ごめんね、ユユ。怖がらせちゃったね。でも、嫌いなんて言われるのは、残念ながら受け入れられないかも。ユユがどんなに俺達を嫌っても、俺達はユユを手放す気はないからね」
「無理にでも俺達に縛りつける……つーか、普通に余計な事言ったかも。ユユ、今の全部忘れて。ユユが離れていきそうで不安な時に、殺してでも俺達に縛りつけようとしただけだから。想像しただけだから」
え……でもさっき、半殺しって言った。
僕は全然記憶にないけど、絶対に本当のこと言ってたよね。
闇が溢れる時のディディは、冗談なんて言わないもん。
「大好きなツガイから貰ったものは、どんな物や言動でも、忘れられないよ」
「……ユユ、家に帰ろうか。優しく可愛がってあげる」
「今のは、誰もいねー所で聞きたかったな。ほんと……どうやって可愛がってやろうかな」
そうして、本当に僕はディディによって家に連れて行かれ、双黒はダンジョンで僕達のことを待っていると言って、ダンジョンの奥へと消えていった。
その後は誰も戻ってこないまま夜を迎え、そのまた数日後にママさんが鏡のゲートを使って、シアくん達の食糧や僕のお菓子などを持ってきてくれるが、まだ誰一人として戻ってくることはなく、みんなの様子を把握できるディディは、イタズラ顔で楽しそうにしていた。
その間、僕達は悪魔について双黒に教えてもらい、ダンジョンは魔界が管理しているのだと知ったのだ。
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