癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

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第二章

30.新天地

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 今更だが、空島が移動した場所は、すぐ真下に自然豊かな美しい高地が広がっており、魔物も動物も縄張り争いをする事なく生きていた。
 空には多くのドラゴンが飛び、高地には強そうな魔物ばかりで、大型の魔物が多いなか、小さな魔物も水辺でのんびり寛いだり、魔物が動物の面倒を見たりしている。


「ディディ、下に行きたい!」


「いいよ、行ってみようか。気になってる生き物もいるし」


「あの見た事ねー生き物な。近くのダンジョンから出て来た可能性もあるよな。とりあえず、シアとショウとノエルも連れて行ってみるか」


 そうして、僕達はギンとアスルも連れて地上へ行き、スイは眠そうだったため、空島でお留守番してもらう事にした。
 地上へ行けば、魔物や動物達が集まってきて、ディディにも懐く様子に嬉しくなる。
 ディディの闇のベールから出て、獣化して尻尾を振りながらその場で跳ぶと、小さい動物達が僕の遊び相手をしてくれるようで、魔物達はディディのそばでこちらを見守るように座る。
 そうして、僕は新しい場所を短い足で探検したり、癒力を解放したり、満足するまで遊びまわった後は、ディディの膝の上で自分の毛繕いをした。


「ユユ、楽しかった?」


「久しぶりに動けてスッキリしたんじゃね?」


「うん! いっぱい探検して、癒力も解放したら、ちょっとスッキリした!」


 やっぱり走りまわって遊ぶのは楽しい! それに、ここなら癒しても嫌がられない!


「探検って……あんま移動してなくね? チラチラこっちも見て、たまに俺達のところに寄ってくるし。まあ、可愛いからいいけど」


「ディア、ユユにとってはあれでも探検だったんだよ。可愛いじゃん。俺達のそばから離れてないのに、探検だって思ってるんだから。それに癒しも振り撒いてるから、シアとショウとノエルなんて表情デレデレ。魔物も動物も喜んでるし、良かったんじゃない?」


 むっ……なんか、微妙な事を言われた気がする。
 馬鹿にはされてないけど、なんとも言えない気持ち。


 僕は、ディディの膝の上で仰向けになり、ディオの長い髪の毛を前足で引っ掻く。
 後ろ足では、ディアが痛くない程度に軽く蹴り、ディディに文句を言うように少しだけ暴れてみた。
 すると、ディディは僕が遊んでいると思ったのか、僕の口に指を突っ込んできたため、二人の指を甘噛みし、徐々に心地良くなってきた僕は、目を瞑りながら甘噛みを続けた。


「可愛い~。ユユ、赤ちゃんみた~い」


「ここ最近では、一番癒されるな」


「ユユ様の癒しは、やはり心地良い」


 シアくん、ショウくん、その喋り方って僕に話してくれてる? ノエルも? でも……今はもうちょっと待って。
 ディディの指が美味し───じゃなかった……安心するから、あと少しだけ。


「あぁ、そういやシア達にはここに残って、珍しい生き物を捜してほしいんだった。言うの忘れてたわ」


「ユユが最優先だから、どうしても忘れちゃうんだよね。俺達はこれからダンジョンの方に向かうから、ここにいる魔物達にも協力してもらって」


「見つかんねーかもだけど、ユユの浄化水で誘き寄せりゃあ、あっちから来るかもしんねーから、一応小瓶で渡しておく」


「あとはアスルとギンも置いて行くから、頑張って捜してね。特徴は秘密。もしも見つけて保護したら、魔物、動物、眷属に関係なく、ユユの抜け毛入り小袋をあげる」


 その時だった。
 突然周りが騒がしくなり、周りに集まっていたみんなは散らばって、その場には僕とディディだけが残された。


「ディディ、何があったの?」


「生き物捜しを手伝ってもらうんだよ。俺達も、これからダンジョンだよ」


「ッ! ダンジョン!」


 僕は勢いよく起き上がり、元の姿に戻って立ち上がる。
 するとディディも立ち上がって、ディオは僕の手を引き、ディアが僕の揺れる尻尾の付け根に触れるように、腰のあたりに手をおく。
 そうして、風景を楽しみながらゆっくり歩き、僕達聖獣を歓迎してくれているような、自然の音と心地良い風に包まれ、散歩気分でダンジョンまで向かった。


 ダンジョンの入り口に着くと、そこは遺跡のようになっていて、中からは独特な空気を感じ、少しだけ毛が逆立ってしまう。


「あー……なんか、ここは落ち着くかも」


「ユユは落ち着かないみたいだけどね。ここって、たぶん俺達みたいに、癒しを求める奴が多いから、俺とディアは平気なんだろうね」


 うん……特級クラスに、初めて行った時の感覚に似てる。
 でも、これはもっと違くて……なんだろう……神界みたいな感じもするし、よく考えるとやっぱり違う気もする。
 魔族の地にも似てるような気もして、よく分からない。
 怖くはないけど、未知の場所って感覚。


「ディディ、ここってちょっと変だよ。この場所自体が少し変わってるけど、この中は別の場所みたいな……」


「だろうね。ダンジョン自体が、謎が多いのもあるけど、それ以上にこの場所が特別なんだよね」


「俺達が選んだこの場所は、俺達を受け入れてくれる場所で、それと同時に人々から離れることになる。ここは、浮島みてーになってっから、海を渡るにしたって上陸する場所が断崖絶壁じゃあ、そもそも人が来れる場所じゃねーんだよな。だからなのか、この下界には馴染めてねー場所でもある」


 え……そうなの? 空島からじゃ、この高地があまりにも真下にあったから分からなかった。
 というか、周りが雲で覆われてたから、この高地から下の方は見えなかったんだよね。


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