癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

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第二章

29.小悪魔

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 数日後の夜、ディディの闇が漸く収まったところで、空島の移動を始めた。
 空島の移動には、ロウとスイを含めた精霊達が協力してくれ、ギンとアスルも地上への被害が出ないように、シアくんとショウくんとノエルと協力して、結界を何重にも張っている。


「動いてる! 凄い凄い! ディディ、凄いよ! 見て見て見て!」


「見えてるから、ユユは落ち着こうね。可愛いけど、興奮してどこかにゲートを繋げそうで怖いから」


「嬉しいのも楽しいのも分かったから、そろそろ落ち着かねーと、家の中で拘束───」


「おとなしく見てる! だから、今は拘束しないで」


 獣化して走り回っていた僕は、獣人の姿に戻ってディディの服を引っ張り、二人がピッタリくっつくように座らせてから、僕はディディの膝の上に座った。
 ディディの服を自分の膝の上に乗せ、ぬいぐるみを抱きしめると、急にディディに抱きしめられる。


「か、可愛いッ! ユユ、なんでそんなに可愛いの」


「俺達で巣作りみてーなことしてんのは、可愛すぎる」


「これが一番落ち着くの。ディディ、もっと抱きしめて」


 ディディに甘えておねだりすると、僕を抱きしめるディディの腕に力が入り、耳や頬にキスをされる。
 みんなが頑張ってくれているなか、ディディに甘えて毛繕いまでしてもらい、甘えたい気持ちが加速してしまった僕は、自ら家の中に入ってディディを誘い、口づけだけでグズグスに快楽に溺れてしまった。


「でぃでぃ……なんでしてくれないの」


「今は駄目。いつ着くか分からないし、俺達も止まらなくなっちゃうから」


「ただでさえ、ユユの色気がすげーのに、そんなにねだられたら止められねーわ」


 うぅ……どうしたらディディがその気になってくれる? いっぱい誘っても駄目で、巣作りしても駄目で……もっと魅力的にならないと。
 もっともっと……ディディが僕に夢中になれるくらいの癒し。


 その瞬間、癒力とともに熱を持った淡い光がブワリと広がり、ディディの闇も広がって、僕を見つめるディディの目がギラリと光った。


「ッユユ……あぁ、可愛い。いい匂い。愛してる……愛してる、あいしてる、アイシテル───」
 

「もっとちょーだい。この匂い、最高……ユユの匂い。もっと、もっと、もっと───」


 ディディは僕が求めた以上に、狂ったように僕を抱き、外が騒がしくなって、ギンが呼びに来ても終わらず、子作りでもしているかのような感覚になった。
 それから更に何日経ったか分からないが、ディディに解放された時には、既に移動が終わっていた。


「───いや、本当にごめん。まさか、ひと月もの間、ずっと夜になってたとは思わなかった。でも、ものすごい幸せでやめられなかった」


「こればっかりは反省してっけど、ユユも幸せそうで、俺達も幸せすぎて……正直、すっげー満足」


「ごめんなさい。僕が誘ったの。ロウ、みんな……怒るなら僕だけにしてほしい」


 僕達が家から出ると、ロウがすぐにやって来て、どういった状況だったかを説明してくれた。
 ひと月もの間、夜が続いて闇が広がり、月だけでは癒しが足りなくなっていたようだ。
 しかし、そこで僕の癒しを求め始めた人達には、王様達や神官達が聖獣の怒りだと言ったようで、壊されないだけマシだろうと伝えていたらしい。
 ディディが怒っていた事は間違いではないため、ある意味、安定という刺激のない状況を壊した事になり、新たな欲や刺激を求めていた人々は、聖獣の警告だと捉えたようだ。


「怒る必要はないだろう? こういったものも大事だ。平和すぎて、いい事ばかりでは世界が育たないだろう。隠と陽のバランスが大事で、これである程度バランスが良くなったのではないか?」


 なるほど……ロウはいつでも、世界のことを考えてるんだね。
 確かに全体で見てみると、ちょうど良かったのかな。


「そう思うと俺達の存在って、厄災以外でも必要なのか。つーか、月だけじゃなくて闇も大事なんじゃね?」


「だろうね。闇とか厄災とかって、悪いイメージだけど、それも必要なら平和を維持するより、たまには悪役にまわってみてもいいかもね」


 争いが起こる前に、バランスをとるってことだよね。
 それなら、僕も協力できる! 癒したいけど、月だけでどうにかなるなら、この場所に来てくれたら癒すようにしたらいいもんね。
 それに、ディディの手助けをできるなら、癒しだって我慢するよ! 同じ聖獣なのに、厄災の方をディディにばっかり押し付けたくはないし、なによりディディと一緒がいい!


「僕も、ディディと悪役なる!」


「ユユが悪役?……小悪魔の間違いじゃない?」


「ユユにされる事なら、なんでも許せそうだけどな。理不尽だろうと、ユユだから仕方ねーってなりそう」


 ふふん、僕だってやればできるもん! ディディと一緒ならなんでもできるんだ!


「……なんか嫌な予感するの俺だけ? ユユがやらかしそう」


「つーか、神々の変な念が……まあいいか」


「む? 主よ、大丈夫だ。我がユユを見守っている。安心するといい」


 ディディは僕の頭を撫でながら、なぜか苦笑いでロウに目を向けていて、ロウは空を見上げながら尻尾を揺らし、自信満々な様子を森神様に見せつけるように胸を張っていた。



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