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第二章
26.闇夜の中で
しおりを挟むライ様の屋敷に着く頃、ちょうど太陽が闇に隠れ始めたため、ディアが完全に太陽を闇で隠し、ディオが闇を広げていくと、あっという間に夜となった。
そこで、僕は月を作り出そうとするが、なぜかディディに止められてしまい、ディディは暗闇の中、ニヤリと笑って青と赤の瞳を光らせた。
な……なんかまずいかも? ディディ、怒ってるのかな。
僕は毛を逆立たせながら、ディディにしがみつくが、ディディは僕の耳と尻尾を撫でるだけで、月を出していいとは言わず、そのまま大きな屋敷の裏庭に下りた。
着いた……ここが、ライ様の屋敷? 初めて見た。
薬屋はここから遠かったりするかな。
サナンさんとロアさん、元気だといいなぁ。
「ユユ、なんか今……俺達以外の奴のこと考えてなかった? やめて。今すぐに。今は夜だよ。分かるよね?」
「しかも、陛下達のことでもねーし……ほんとやだ。俺も無理」
「ッ……ご、ごめんなさい。えっと……薬屋───」
「「やめて」」
月も出ていないからか、ディディは闇そのものになっているようで、僕の癒力での癒しも駄目なようだ。
そういった時は、いつも僕を抱いてくるが、今は交わることもできないため、僕はディディのことだけを考え、ディディに抱きついて甘えることにした。
「ディディ、好き好き!」
甘えていいならいっぱい甘えるもん! ふんふん、大好き! ディディ、大好き!
「可愛い、ユユ! ほんとに癒される。俺も好きだよ」
「ユユ、愛してる。ユユは本当に可愛いのな」
ディディは尻尾を揺らして僕を抱きしめてくれ、僕の耳を噛んだり、頬にキスをしてくる。
ディディの闇は、僕が甘えれば甘えるほど良くなっていくため、僕もたくさん甘えるのだが、甘えすぎるとディディのことしか考えられなくなって、巣作りを始めてしまうため、完全に気を抜く事はできない。
それを分かっている眷属達は、僕達の服を軽く引っ張るが、無言を貫いてディディを刺激しないようにしている。
「ディディ、ディディ!」
「ふふ、可愛い。本当に可愛いよ。でも、今は中に行かないとね」
「そろそろライが呼びに来そうだしな。ギン、アスル、スイ、中には入れねーと思うから、ここで待って───」
「その必要はない。ここで話をしよう」
ディアの言葉を遮るように外に出て来たのはゼゼ様で、ママさんとパパさんとナキア様の姿も見える。
他にも四人、火ノ国と水ノ国の王様と護衛であろう人物が来て、その後ろからはヒョウ獣人に抱えられた猫と、立派な立髪を持つ獅子がやって来た。
赤竜人と……人間? いやでも、耳が魚っぽい……足はあるけど魚人かな? あんまり魚人の特徴が出てない人なのかな?
「初めまして。俺ァ、火ノ国の王、ガルシャ・ファイアだ」
「私は水ノ国の王、ウィリア・ウォーターといいます。本日は、お会いできて光栄です。聖獣様」
二人は跪いて頭を下げ、その護衛も主達と同じように頭を下げる。
するとディディは一言、「よろしく」とだけ言って、名乗るつもりはなく、僕も名乗ってはいけないため口を閉ざした。
やっぱり来たくなかった。
すぐに頭下げそうになっちゃうし、こんな風に跪かれるのも僕は望んでない。
受け入れないといけないのは分かってるけど、それでもなんか……違和感がある。
僕はすぐにディディの後ろに隠れ、おとなしくしていると、猫と獅子が僕の元へ走って来て、嬉しそうに擦り寄って来たのだ。
この子達、ここに住んでる動物かな? 可愛い。
空島に連れ行ったら駄目かな? もっと魔物とか動物とか増やしたい。
「ディディ、この子達連れて行っちゃ駄目?」
「駄目だよ。その獅子はライだし、猫はヒイラギ先生だからね」
「え……ライ様とヒイラギ兄さん?」
「それと、あっちにいるヒョウ獣人が、ヒイラギ先生のツガイだな」
ディディが教えてくれた事が衝撃的で、僕はライ様とヒイラギ兄さんを見た後、こちらに向かって頭を下げるヒイラギ兄さんのツガイを見た。
「俺はヒイラギのツガイ、ヒャルラといいます。ヒイラギの言う通り、癒し子様は弟にしたいくらい可愛らしいですね」
ヒャルラは僕に近寄って来ると、ヒイラギ兄さんを抱え、僕に押し付けるようにしてくる。
えっと……あれ、なんで僕に? ディディも全然嫌がってないし。
「ユユ、その二人は……俺達が聖獣になってから、なぜか獣人から動物? 魔物? 獣化したまま獣人に戻れなくなってね……夜行性になったんだよ」
「普通に喋れねーし、鳴き声はユユしか理解できねーから、ユユに会わせたかったんだ」
僕達が聖獣になってから? なんでだろう。
それに、獣人に戻れないっていうより、戻ろうとしてないって感じがする。
本人達は戻りたくなさそうだもん。
「癒し子様、ヒイラギが獣化して言葉を失った日、ヒイラギは癒し子様に会いたいと泣き叫んで、大変だったんです。闇化が進んだ様子はなく、ただただ情緒が不安定になりまして」
「ライも同じだったらしいよ。ここには来れない伯爵から聞いた話、ライはユユくんに会いたい一心で、森に入って行方不明になったようだ。幸い、伯爵夫妻がライを見つけだし、屋敷の地下に閉じ込めていたらしいんだけどね……どうにも、夜になると檻を破壊してしまうらしいんだよね」
ママさんが教えてくれた内容からすると、ライ様の両親はライ様を元に戻したいと思っているらしい。
しかし、ヒイラギ兄さんのツガイであるヒャルラは、ヒイラギ兄さんが元に戻りたいと思っていない事に気づいているようだ。
僕からしてみると、ライ様もヒイラギ兄さんも、元に戻りたいどころか、望んで獣化しているように思える。
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