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第二章
25.人々との食い違い
しおりを挟むふぅ、助かった! やっと抜け出せた!
「ありがとう、ディディ! ギンもありがとう、ごめんなさい」
『気にするな』
ギンはいつでもクールでかっこいいね! あんなに苦しそうだったのに凄い! 僕なんて怯えることしかできなかったよ。
「ユユ、もう危ない遊びはしたら駄目だよ。それと、俺達以外の匂いもつけちゃ駄目。遅れてもいいから、毛繕いしてから行こう」
「そうだな。さすがに俺達の匂いじゃねーユユを、王族に見せるわけにはいかねーし、勘違いされても困る。ユユは俺達のツガイだ」
そうして、ディディは闇をなくして獣化し、僕の毛繕いを始めた。
僕も、ディディの匂いに包まれていないと落ち着かないため、されるがままで目を瞑る。
気持ちいい……このまま、今日はゆっくりしていたい。
僕は他国の王様には会わなくていいのに、なんでディディは会いたいんだろう。
シアくん達の望みは、王様に会わなくても叶えられるよね。
「ディディ、なんで王様達に会うの? 僕は、他国の王様達に会うくらいなら、浄化をしに行きたい。地上に行くなら、ママさんとパパさんとゼゼ様に会って、今日こそ三人を空島に連れてきたい」
実は、ママさんとパパさんとゼゼ様には、空島に来ないかと誘っているのだが、ゼゼ様が王である以上、こちら側に来るのは良くないという事と、パパさんがゼゼ様のツガイであり、ママさんがパパさんのツガイであるため、三人を引き離す事は無理だという点で、空島には連れて来れないのだ。
それでも、僕は特にママさんを連れて来たくて、何度か迎えに行っているのだが、ママさんは遊びには来ても、その日のうちに帰ってしまうのだ。
ママさんは、僕を守るって誓ったのに。
守ってくれてるのは分かってるの。
でも、ちょっとだけ僕の眷属みたいに思っちゃう時があって……なんで僕のそばにいないんだろうって、時々思うんだ。
「ユユもだろうけど、母上もユユから離れたくはなさそうだよね。ユユのそばにいればいるほど、離れづらくなるって言ってるし。でも母上は母上で、ユユを守ってくれてるみたいだよ」
「実際シュシュさんは、無意識にユユを求める人々が、ユユに対してズレた好意を向けないようにしてくれてんだよな。俺達は神でないにしても、神界の住人ではあるからな。神殿で変な信仰心を告げられりゃあ、多少は影響が出んじゃん?」
そうなんだよね。
神殿はちょっと危うくて、祈りならまだいいけど、願いはちょっとやめてほしい。
僕は癒したいのに、癒さないでくださいって言われたら、それだけでその人を癒せなくなっちゃうんだもん。
月のおかげか、僕がたまに癒しを振り撒くと、これ以上は癒さないでほしいと願われ、風ノ国の人達からは、力を奪わないでほしいとまで言われるのだ。
僕としては奪っているつもりはなく、癒しは効果は永久ではないが、月の影響により闇化で命を落とす人が減った。
人は命の危険がなくなれば、次は戦闘力となる闇を維持しようとする。
ディディは都合の良い奴は放っておけと言うが、それを放置すれば、そのうちディディの厄災が必要になってしまうため、僕としては上手く調整したいと思っている。
「それと聖獣の怪しい信者が、純粋にユユに祈りに行く奴を狙ってるからね。それについては母上と父上、それと神官が対処してるけど、どの国にも出てるから、どうしようもなくなった場合は、俺達の出番だね」
「そっち方面でも守ってもらってるから、シュシュさんをこっちに連れて来る事はできねーんだよな。俺達がこうして気兼ねなく自由でいられんのも、あの三人がいるおかげだし」
うん、分かってるよ。
シュシュさんは僕の眷属でもなければ、神官でもない。
「ユユは寂しいんでしょ。ユユは誰かの為に何かをする事が好きで、特に癒す事が好きなのに……今は拒絶されちゃってるからね。それでも見捨てないで、毎夜月を出してあげるのは、ユユが誰かの為に何かをしてあげたいからでしょ?」
「一回闇で覆えば、ユユのありがたみが分かるだろうに。やっぱ、平和慣れさせんのは良くねーな。ある程度不自由なくらいが、生きてるって感じがするし、与えられた幸せはすぐ忘れるじゃん?」
ん? ちょっとよく分からない。
でも、ディディが悪い顔してるのは分かる。
獣化してても口の端が……吊り上がってる。
ディディ……か、かっこいい牙が見えすぎてるよ。
ちょっと怖い。
「そういう事だから、ユユが喜ぶ場所を俺達で作ろうと思うから、面倒な王達に会いに行くよ」
「ユユの毛繕いも完璧! ユユ、闇のベール作るから、獣化はしねーように」
そう言われて、僕はディディが作る闇のベールに入り、元の姿に戻って眷属を連れて地上へと向かった。
今回は屋敷に寄らずに地上へ行くため、僕のゲートは使わずに、一番体の大きいスイに乗せてもらっての移動となる。
僕が前にお世話になった、辺境にいるライ様の屋敷へ行くらしいのだ。
というのも、ディディは珍しく僕をライ様に会わせたいらしく、辺境のあまり人がいない場所であれば、大きな体の眷属達も闇で隠してあげれば、人々の混乱を招くこともないだろうと判断した結果だった。
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