癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

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第一章

65.懐かしい子

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 ここ……どこだろう。
 なんか違う場所な気がする。
 精霊の森に似てるけど、懐かしい気配が───


 その時だった。
 僕の目の前には、白い毛に身を包んだ大きなドラゴンが現れ、フッと小さく白い炎をはく。
 それに対して、その場にいた全員が殺気を放ち、ディディは僕を守ろうとするが、僕は元の姿に戻って、懐かしい存在に手を伸ばした。


「ハク、大きくなった」


「クルル!」


「僕はママじゃないよ」


 小さなドラゴンだったハクは、光ノ国の人達に捕まり、僕と似たような白い毛は嫌われ、傷つけられていた。
 ドラゴンであるハクが光ノ国に落ちて来た際、親の姿はなかったため、一人で飛ぶ練習をしていたのだろう。
 しかし、僕が初めてハクを間近で見た時には、血だらけで檻に閉じ込められていて、会うたびに神殿で僕と一緒に傷つけられていた。


「ユユ、知ってるの?」


「なんか嫌な予感すんだけど……」


 嫌な予感? 別に僕は悪い事なんてしてないよ。


「光ノ国で、僕が癒してたドラゴンだよ。昔はもっと小さかったんだけど、僕の血をあげると自力で回復できてたから、僕が神殿を出る時にハクだけ逃がしたんだ」


 僕を食べていいって言ったのに、ハクは血だけしか飲んでくれなかったんだけど……おかげで僕はディディに会えた!


「だからユユがママなんだね。助けてもらって、ユユの血でここまで育ったんだろうからね」


「僕の血で育ったの? でも、逃がした時は小さかったよ」


「吸血ドラゴンは、親の血で育つんだけど、それで親が死ぬ事が多い。そんで、親が死んでも血が足りなかったら、他の親を探して吸血するんだけど……それにしたって、なんで光ノ国にいたんだか」


 そこで、ハクが光ノ国に落ちてしまい、捕まってしまった事を話せば、ハクも頷いて甘えた声で僕に擦り寄ってきた。


「なんか……ユユは俺達のツガイなのに、自慢されてるみてーで嫌だな」


「確かに、気分は悪いよね。ユユが母親なら、俺達は父親になるって事でしょ? なのに、ユユの自慢……そもそも、ユユはまだ子作りしないって言ってるのに」


 え……ハクはディディが僕のツガイで、こんなに喜んでるのに? もしかして、ハクって分かりづらいのかな? 僕はなんとなく分かるんだけど。


「ディディ、ハクが今言ってるのは、ディディのことだよ。強そうなパパができたって喜んでる。そうだよね、ハク」


 ハクに確認すると、ハクは分かりやすいように頷き、ボッボッと小さな炎をはいて尻尾を地面に叩きつけた。


 あれ? そういえば、こんなに大きなハクがいるって事は、ここは森じゃないの? 暗すぎて近くのものしか見えない。


「パパ……まあ、いいよ。それで許してあげる」


「血でも飲んでみる? そうすりゃ、ユユと同じで親になれるし」


 ディディは満更でもなさそうに尻尾を揺らし、ハクは炎を上に向かって放つ。
 それにより、周りがはっきり見えてきたのだが、そこは森の中ではなく、精霊の森に似た異質な印象を受ける。


「ここ……どこ?」


「ここは魔族の地だよ。魔族っていう種族自体、知られてない存在なんだけど、闇ノ国の王家と繋がる者は魔族と交流をもっていてね」


「けど、この場所がどこにあんのかは、誰も知らねーし、魔族も知らないんだってさ。出入り口は闇ノ国の影となる場所。まあ、精霊の森のゲートと同じで、魔族の地は魔物が出入り自由の、危険地帯ってわけ」


 でも、魔物は危険じゃないよ。
 少なくとも、僕にとっては友達で、精霊も魔物も動物も、みんな同じく優しい。


「そして、この五大臣は魔族になる。ほら、ここでは本当の姿が見れるぞ」


 ゼゼ様の言葉に、少しだけ存在を忘れてしまっていた五大臣の方を見た。
 するとそこには、竜人とは違ったツノを持つ人や、鳥獣人とは違った翼を持つ人、変わった形の尻尾や複数の目を持っていたり、なんの特徴もなさそうだが雰囲気が人間とは全く違う人などがいた。
 それも、五大臣様の他にもいろいろな気配が集まってきて、突然街灯がついて明るくなる。


「わあぁ、魔物が……ん? 知ってる子達がいる」


「ふふっ、ユユは魔族よりも魔物の方がいいみたいだね」


「ジジィには興味ないんでしょ。ユユは魔物と仲良しだから仕方ないんじゃね?」


 僕が知ってる魔物達に気付けば、みんなが集まってきて、服を噛んだりして僕を引っ張るが、ディディが注意をすればおとなしくなり、その場で寛ぎ始めた。
 そして五大臣の方は、他の魔族達と僕について話していて、僕の前に次々と跪いていく。


「魔族は不思議でな。皆が同じ個体と言うべきか、いろいろと共有しているらしく……命がいくつもある、もしくは不老不死と呼ぶべきか、増えもしなければ減りもせずに、遥か昔から存在する種族らしいが、外の世界には疎い……というより、闇ノ国以外の事は殆ど知らないうえに、五大臣も他国への興味が全くない。口煩いのは、闇ノ国の闇化についてとユユに関してのみで、五大臣が魔族について少しだけ話してくれたのも、神話について訊いてからだ」


 なんか、凄い種族? なのは分かるけど、なんで闇ノ国だけなんだろう。
 月神様と関係があるんだろうけど、謎が多すぎるよ。





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