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第一章
64.五大臣
しおりを挟むお城の浄化を終え、僕はゼゼ様の元へ行こうとしたが、ディディは早く帰りたいようで、僕はディオに抱えられて黒い霧で隠されてしまった。
そんななか何も見えない僕には、ディディを呼びとめる声が複数聞こえてくる。
その人物が誰かは分からないが、ディディは止まる気配がなく、しまいには走りだしてしまうが、そんな時にゼゼ様の声が響いた。
「ディア、ディオ、それと大臣よ。こんな場所で騒ぐな」
「ジジィ達が追いかけてくるから、俺達はユユを守る為に逃げてるだけだよ」
「そもそも、大臣達の裏切りの可能性は本当にないわけ? 今回分かった事も全て、俺達王族と大臣の───」
その時だった。
ディアの言葉を遮るように、追いかけてい来たであろう人達が、なぜか僕に謝ってきて、ゼゼ様も僕に謝ってきたのだ。
もしかして、元婚約者について? そしたら、僕の方が謝らないといけない。
もしも、ディディが隠してる事なら僕には分からないけど、ゼゼ様が謝るなら僕も謝るよ。
一応……僕が関係してると思うから。
「ゼゼ様、大臣様? 僕も迷惑かけてごめんなさい。ディディが隠してる事はまだ聞く勇気はないけど、ちゃんと受け入れるからもう少しだけ、待ってほしいです」
「気づいてたんだね、ユユ」
「俺が原因かな。ごめん、ユユ……不安にさせた」
僕は霧に隠れているにも関わらず、ディディは僕の姿が見えているように頭を撫でてきて、今は伝えないから大丈夫だと言ってくれた。
そこで、ディディがもう一度歩き始めようとしたため、僕はディオにお願いして、少しの間だけ霧を消してもらった。
霧が晴れて後ろを見てみると、そこには鳥獣人、人間、エルフ、黄竜人、それから初めてみる魚人といった、バラバラな種族が五人揃っていた。
凄い、魚人さんは初めて見たけど、陸ではヒレがないんだ。
なんか、ディディの話だとお爺ちゃんかと思ってたけど、みんな若々しい。
獣人と人間は長寿に比べると、どうしてもシワとかが増えるけど、それでもなんか若々しい。
それに、僕より大きくて筋肉も立派だ。
「……強そう」
「ッ……ふふっ、強そうって……五大臣を見て、一番最初に強そう、なんて言ったのはユユが初めてだよ」
「殆どの奴が、弱そうって思うんだよな。この歳まで闇化で死んでねーし、気味悪がって近寄ろうともしねーの」
闇化はある意味、力の象徴みたいなものだから? でも、僕からしてみたら強そうだよ。
というか……
「……闇化してないよね? 闇ノ国の人じゃないの?」
「やっぱりユユなら分かるよね。五大臣は闇ノ国で産まれたわけじゃないけど、他国にも属してなくてね。これ以上は、ここでは言えないかな」
「ただ、こうして大臣として、闇ノ国に協力してもらってんのには、理由があんだよ。ユユには話してもいいんじゃね?」
いいの? 僕が聞いてもいいなら聞きたい!
尻尾を振ってゼゼ様を見ると、ゼゼ様が五大臣様に向かって頷く。
そしてディディが歩きだすと、みんなが何も言わずについて来た。
ディディは帰らずにお城の地下通路を通るが、その通路の足元は透明で、闇ノ国の街並みが小さく見える。
こ、怖い……これ、落ちないの?
「ユユ、苦しい。そんなに力強くしがみつかなくても大丈夫だよ」
「怖けりゃ見なきゃいいのに。可愛い」
うぅ、僕だって見たくないけど、ちょっと気になるんだもん。
で、でも怖い。
「ヒッ……こ、怖い。でも気にな───ッキャン」
「あ……獣化しちゃったね。無理に見るからだよ。もう……可愛すぎるよ、ユユ」
「ユユ、そのまま歩いてみな。おいで、おいで~」
獣化した事で落ちてしまった僕は、自分の足元に何もない事が怖くて、震えが止まらずに涙が溢れてくる。
「でぃでぃ……でぃでぃ」
「うん、可愛すぎる。ごめんね、ユユ。服で包んであげるから泣かないで」
「プルプル震えてんのは可愛いわ。やっぱ、好きな子はいじめたくなるんだよな。ごめん、ユユ」
怖かった。
やっぱりディディにくっついてると安心する。
好き好き、ディディ大好き!
僕はディオにしがみつきながら、尻尾を振ってディオの首に擦り寄り、僕を服で包んでくれるディアの手にも擦り寄った。
「これは、本当に可愛らしい」
「さすが癒し子様だ」
「いや、ここはもはや月神様と呼んでもいいんじゃないか?」
「神は神だろう。我らにとっては神でも、癒し子様はそうは思っていない」
「そうだね。神を押し付けるのは、あまりにもかわいそうだと思うよ」
若々しい喋り方の五大臣様は仲良しなようで、五人で決める事が多いのだろうというのが、今のやりとりで分かる。
ディディは"ジジィの集会"などと言っているが、僕からしてみれば、ディディも同じように感じた。
そうして、恐ろしい通路を抜け、階段をのぼっていくと、そこには僕が浄化した大学園の池があり、その池を通り過ぎて森の奥へ進む。
森の奥は何もないように見えるが、進むにつれてだんだんと暗くなっていき、結界や精霊の森に繋がるゲートを通る時のような、不思議なものを感じた。
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