癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

文字の大きさ
上 下
64 / 109
第一章

64.五大臣

しおりを挟む


 お城の浄化を終え、僕はゼゼ様の元へ行こうとしたが、ディディは早く帰りたいようで、僕はディオに抱えられて黒い霧で隠されてしまった。
 そんななか何も見えない僕には、ディディを呼びとめる声が複数聞こえてくる。
 その人物が誰かは分からないが、ディディは止まる気配がなく、しまいには走りだしてしまうが、そんな時にゼゼ様の声が響いた。


「ディア、ディオ、それと大臣よ。こんな場所で騒ぐな」


「ジジィ達が追いかけてくるから、俺達はユユを守る為に逃げてるだけだよ」


「そもそも、大臣達の裏切りの可能性は本当にないわけ? 今回分かった事も全て、俺達王族と大臣の───」


 その時だった。
 ディアの言葉を遮るように、追いかけてい来たであろう人達が、なぜか僕に謝ってきて、ゼゼ様も僕に謝ってきたのだ。


 もしかして、元婚約者について? そしたら、僕の方が謝らないといけない。
 もしも、ディディが隠してる事なら僕には分からないけど、ゼゼ様が謝るなら僕も謝るよ。
 一応……僕が関係してると思うから。


「ゼゼ様、大臣様? 僕も迷惑かけてごめんなさい。ディディが隠してる事はまだ聞く勇気はないけど、ちゃんと受け入れるからもう少しだけ、待ってほしいです」


「気づいてたんだね、ユユ」


「俺が原因かな。ごめん、ユユ……不安にさせた」


 僕は霧に隠れているにも関わらず、ディディは僕の姿が見えているように頭を撫でてきて、今は伝えないから大丈夫だと言ってくれた。
 そこで、ディディがもう一度歩き始めようとしたため、僕はディオにお願いして、少しの間だけ霧を消してもらった。
 霧が晴れて後ろを見てみると、そこには鳥獣人、人間、エルフ、黄竜人、それから初めてみる魚人といった、バラバラな種族が五人揃っていた。


 凄い、魚人さんは初めて見たけど、陸ではヒレがないんだ。
 なんか、ディディの話だとお爺ちゃんかと思ってたけど、みんな若々しい。
 獣人と人間は長寿に比べると、どうしてもシワとかが増えるけど、それでもなんか若々しい。
 それに、僕より大きくて筋肉も立派だ。


「……強そう」


「ッ……ふふっ、強そうって……五大臣を見て、一番最初に強そう、なんて言ったのはユユが初めてだよ」


「殆どの奴が、弱そうって思うんだよな。この歳まで闇化で死んでねーし、気味悪がって近寄ろうともしねーの」


 闇化はある意味、力の象徴みたいなものだから? でも、僕からしてみたら強そうだよ。
 というか……


「……闇化してないよね? 闇ノ国の人じゃないの?」


「やっぱりユユなら分かるよね。五大臣は闇ノ国で産まれたわけじゃないけど、他国にも属してなくてね。これ以上は、ここでは言えないかな」


「ただ、こうして大臣として、闇ノ国に協力してもらってんのには、理由があんだよ。ユユには話してもいいんじゃね?」


 いいの? 僕が聞いてもいいなら聞きたい!


 尻尾を振ってゼゼ様を見ると、ゼゼ様が五大臣様に向かって頷く。
 そしてディディが歩きだすと、みんなが何も言わずについて来た。
 ディディは帰らずにお城の地下通路を通るが、その通路の足元は透明で、闇ノ国の街並みが小さく見える。


 こ、怖い……これ、落ちないの?


「ユユ、苦しい。そんなに力強くしがみつかなくても大丈夫だよ」


「怖けりゃ見なきゃいいのに。可愛い」


 うぅ、僕だって見たくないけど、ちょっと気になるんだもん。
 で、でも怖い。


「ヒッ……こ、怖い。でも気にな───ッキャン」


「あ……獣化しちゃったね。無理に見るからだよ。もう……可愛すぎるよ、ユユ」


「ユユ、そのまま歩いてみな。おいで、おいで~」


 獣化した事で落ちてしまった僕は、自分の足元に何もない事が怖くて、震えが止まらずに涙が溢れてくる。


「でぃでぃ……でぃでぃ」


「うん、可愛すぎる。ごめんね、ユユ。服で包んであげるから泣かないで」


「プルプル震えてんのは可愛いわ。やっぱ、好きな子はいじめたくなるんだよな。ごめん、ユユ」


 怖かった。
 やっぱりディディにくっついてると安心する。
 好き好き、ディディ大好き!


 僕はディオにしがみつきながら、尻尾を振ってディオの首に擦り寄り、僕を服で包んでくれるディアの手にも擦り寄った。


「これは、本当に可愛らしい」


「さすが癒し子様だ」


「いや、ここはもはや月神様と呼んでもいいんじゃないか?」


「神は神だろう。我らにとっては神でも、癒し子様はそうは思っていない」


「そうだね。神を押し付けるのは、あまりにもかわいそうだと思うよ」


 若々しい喋り方の五大臣様は仲良しなようで、五人で決める事が多いのだろうというのが、今のやりとりで分かる。
 ディディは"ジジィの集会"などと言っているが、僕からしてみれば、ディディも同じように感じた。


 そうして、恐ろしい通路を抜け、階段をのぼっていくと、そこには僕が浄化した大学園の池があり、その池を通り過ぎて森の奥へ進む。
 森の奥は何もないように見えるが、進むにつれてだんだんと暗くなっていき、結界や精霊の森に繋がるゲートを通る時のような、不思議なものを感じた。




しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

処理中です...