癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

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第一章

47.ツガイ

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『私はロウの主、森神もりがみ。ディオ、ディア、甘えん坊なユユを頼んだよ。それとユユ……神々がユユを嫌うはずがないだろう。送り出す時、あんなに止められたのに、何もせずに行くなんて誰も想像してなかった。あの後、本当に大変で大変で……何度、下界に干渉しようと思ったか』


 な、なんか怒られてる。
 僕、何もしてないと思うんだけど……してないよね? でも、神様に人違いです、なんて言えない。


『人違いではありません。ディオとディアに会えたから良かったものの、あのまま光ノ国にとどまっていたら、神々の怒りが光ノ国だけでは収まらなかったんだよ。それほど大変だったんだ。分かるね? いや、分かってもらわなければ困る。幼いディオとディアに一目惚れして、会いに行くのはいいが、突然すぎる。せめて、記憶を維持する為に精霊として下界へ行くべき───』


「主、どうか落ち着いてほしい。森の者が困っている」


 ロウが森神様を宥めようと声をかけたため、周りを見てみれば、森の動物や精霊が神殿から離れるようにして固まっていた。


『すまない。しかし、ユユは神々にとっても、この世界にとっても欠かせない子なんだ。分かってくれ。そしてユユ、肉体を持った事で失った記憶は、取り戻すことはできない。一度失えば、全く同じものは二度と手に入らない。よく覚えておくように』


 それだけ言うと、頭の上にあった黄色の葉は消え、森神様の気配も消えた。


「……なんか僕だけ怒られた。なんで? やっぱり怒ってたよ」


 許してもらえて、祝福もしてもらえたのは嬉しかったし、ディオとディアのツガイになれたのは夢みたいだけど……なんか思ってたのと違う。
 こんな予定じゃなかったのに、安心して泣きそうになった涙も引っ込んじゃった。


「ブハッ……確かに怒ってたけど、やっぱ嫌われてねーじゃん。つうか、納得いかないみてーだけど、膨れても可愛いだけだよ」


「まさか、ユユが俺達に一目惚れしてたなんてね。どうりで、俺達にはすぐに甘えてきたわけだ」


 うっ……じゃあ、僕って二回一目惚れしてた事になるのかな。
 ディオとディアは、最初からかっこよかったもん。


 恥ずかしくなってきた僕は、顔を隠して尻尾を揺らすが、今はぬいぐるみがないため、スイを抱きしめて顔を押し付ける。
 

「「かわ───」」


「可愛いな、ユユ。これは主が心配するわけだ」


 ディオとディアの言葉を遮るように、ロウが僕に擦り寄ってくるが、ロウは大きすぎるため、ディオとディアが僕の体を支えてくれる。


「ユユ、これで予定より早くツガイになったわけだけど、結婚もしちゃう?」


「結婚ってなれば、俺達もすぐに準備するし、他国にも知らせなきゃなんねーから、明日にはパーティーの───」


「待って! そ、それだけは……約束通り、ちゃんと卒業試験に合格してからがいい。お願い。僕、癒しだけが取り柄なんて言われないようにしたいの。二人の隣に堂々と立てるように、合格だけはしたい」


 ツガイになったからには尚更だし、他国にも知らせるならディオとディアを奪われないように、癒し以外で牽制できる何かが欲しい。
 貴族学園の卒業した証は、それだけで役に立つと思うんだ。


「分かったよ。ユユがそう言うなら、俺達は準備だけでも進めておくね」


「ツガイになって、闇化も安定してるし、ユユと子作りも───」


「こ、子どもはまだ駄目! 産まれてくる子達が、安心して暮らせるようにしないと駄目。巣作りだって上手くできないのに」


 まだ駄目。
 子作りは駄目。
 今じゃない。


 僕が必死に訴えると、ディオとディアは意外にもご機嫌なままで、僕の背中や頭を撫でてくる。


「母親になるユユがそう言うなら、俺達がどれだけ頑張っても孕まないし、発情期もこないよ。だから安心して抱かれてね」


「そもそも、ミックスは孕みにくいし、危険もあるからな。俺達は、ユユが俺達から離れねーなら、それでいい」


 そう言ってディオが僕を抱え、ディアが僕の手の甲を愛しそうに撫でると、ロウも立ち上がって歩きだし、池に繋がるゲートまで案内してくれた。


「ここから先へ行けば、池に繋がるだろう。また何かあれば、我の名を呼ぶといい」


「ありがとう、精霊王。今度、ユユの浄化について、もう少し教えてもらえると助かるよ」


「まずは俺達の方が落ち着いてからだな」


「ロウ、ありがとう! 次に会う時は、ロウも遊んでね」


 僕は尻尾を振りながら、ディオに抱えられた状態で屋敷に戻ってきた。
 屋敷に戻れば、ディオとディアは急いだ様子で僕の部屋へと行き、僕はベッドに押し付けられて、二人同時に激しく口づけをされる。
 三人の舌が絡みあうが、ディオとディアは僕だけしか見えていないようで、僕の舌を奪い合う。


「んんッ……でぃでぃ、まって」


「ディディ? なにそれ、可愛い! もう無理。待てない。今すぐに……抱きたい。ユユ、愛してるよ」


「ユユ、初めてでも俺達二人で抱くから、ちゃんと受け入れんだよ。分かった?」


 うぅ……そんな甘い声で言われたら、頷くしかないよ。
 ど、どうしよう。
 あんなに大きいモノが二人分……入るのかな。


「まずは、いつも通り指で慣らそうね。ツガイになったから、きっと今まで以上に受け入れやすくなってると思うよ」


「大丈夫、毎日触れ合ってんだから、すぐ受け入れられる」


 そうして僕の体に触れる二人からは、クラクラとするような香りが漂ってきて、僕はディオとディアに身を任せた。



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