癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

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第一章

39.僕の宝物

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「ユユ、まだ元には戻れないだろうから、俺達が作った巣で休んでようね」


「この巣、ユユの為に作ったんだよ。俺達の抜け毛で作ったぬいぐるみと、子どもの頃の服で作ってみた」


 巣と聞いて、僕は毛布から出て、匂いを確認しながら巣の中を歩きまわった。


 これ、ディオのぬいぐるみだ! こっちはディアのぬいぐるみ! 僕と同じ大きさになってる!


「ユユが可愛い。尻尾振って喜んでるよ」


「匂いつけまでしてんの可愛すぎじゃね?」


 ふんふん、このぬいぐるみ好き! 可愛いし、大好きな匂いだから、これは僕のものにしないと。
 どこかに隠したい。
 どこに隠したら奪われないかな。


「あ、咥えたよ。どこかに隠すのかな。どこに隠すか必死に考えてそう」


「けど、いっきに二つは無理じゃね? 気持ちは嬉しいけど、一つずつじゃねーと、どこにも持って行けねーじゃん」


 むむむ……ふぬぬぬぬ……持っていけない。
 これじゃボロボロになっちゃう。
 んー……じゃあ、ディオとディアの服で隠したらいいかな? 匂いも服で誤魔化せるから、絶対に誰にも奪われない!


 いい案が浮かんだ僕は、尻尾を揺らしながら軽い足取りで服を運び、ぬいぐるみを隠すように服を被せて、前足でカリカリと微調整をする。


「僕の宝物! 誰も奪っちゃ駄目だよ」


「「可愛いッ」」


 僕は、大きな窓から外に向かって胸を張ると、後ろからはディオとディアの叫ぶ声が聞こえ、魔物や動物達は窓に近寄ってきた。


「ユユ、こっちにおいで。獣化してる間は、俺達の巣で休むんだよ」


「これは絶対だから。ユユが逃げんなら、俺達どうなるか分かんねーよ?」


「ッ! ちゃんと巣で休む!」


 僕はすぐに巣へ戻り、ディオとディアの間に入って座った。
 それから数日間、僕は巣から出してもらえなかったが、ディオとディアも獣化して僕と遊んでくれたり、僕が本を読みたいと言えば読ませてくれたり、分からない事を教えてくれたりした。


 そうして僕が元の姿に戻れるようになり、学園へ行く事になったのだが、ディアが僕から離れなくなってしまったことで、一緒に学園へ来ていた。
 ディアは、僕の目が覚めなかった間、ディオと喧嘩していたらしく、それにより城の一部が破壊されたため、ディアが落ち着くまでは城への出入りを禁止されたらしい。


 それを聞いた際、なぜ城で喧嘩をしたのかと訊けば、ディオもディアも後先考えずに破壊したわけではなく、城の浄化をする為に壊さなければならない場所を手っ取り早く破壊したのだと言う。
 それと同時に、僕に浄化をさせようとしたお偉い様方を黙らせる為に、ゼゼ様が破壊の許可をしたと言うのだから驚きだ。
 そして今は、闇の霧が広がらないよう、スイが結界を張ってくれていて、ゼゼ様は闇の霧を恐れる人達の様子を見て楽しんでいるらしい。


「今日はゼゼ様に会いに行きたかったのに」


「ユユ、まだ気にしてんの? 城の破壊は陛下も許可したんだから、気にしなくていいんだって。それに、俺は落ち着くまで出入り禁止されてるし、陛下は日頃の鬱憤を晴らすみてーに楽しんでる」


「そうだよ、ユユ。ご老人方は、最近俺達がおとなしいからって油断してたんだよ。それに、ユユに会えば、どうせ孫を可愛がるみたいに、無理はするなって絶対に言うからね。過保護になる未来しか見えないよ。というか、単純にユユに会いたいだけだと思うよ。あの人達は口煩いだけで、別に悪い人達じゃないからね」


 なら尚更、僕がお城に行った方がいいんじゃないの? 浄化しないといけないのは本当なんでしょ?


「ユユ、無理はしないでって約束は覚えてるよね? 今回、父上も母上もユユには無理をさせないって方向で、浄化の件は決まったんだよ」


「陛下も神官と話し合った結果、浄化はユユのペースで好きにさせる事にはなったけど、それはユユが癒力の枯渇を感じられるようになってからの話。精霊のことは話したじゃん? ユユに何かあれば、その事も関わってくんだよ」


 あ……そうだった。
 スイがいなかったら、今頃は風ノ国も精霊も全員が闇ノ国に……


 今回、僕が目を覚まさなかった事で、精霊は怒りで闇ノ国を出て行き、エルフと他の精霊を引き連れて、闇ノ国を潰そうとしていたらしい。
 しかし、僕が浄化を楽しんでいた様子を、スイが見てくれていた事もあって、精霊達はすぐに落ち着きを取り戻し、僕に癒力の使い方や枯渇について教えてくれる事になったのだ。
 その話を聞いた時には、僕が目を覚まさなかっただけで大袈裟だとも思ってしまったが、周りの様子をディオとディアから聞くたびに、申し訳なさと嬉しさを感じた。


「僕が今する事は、自分の癒力量を理解する事?」


「そういう事。同時進行で、瓶に浄化水もためてもらうから、ユユが何もしてないってわけじゃないよ」


「俺がいれば、ユユに近づけねー奴が増えるし、ユユも癒せねーじゃん? それなら、浄化水の実験台にしたらちょうどいいしさ」


 そっか、浄化水があった。
 今の僕でも、みんなの為に何かできるんだ。
 それなら、僕はディオとディアの言う通り、今やるべき事に集中しよう。
 ゼゼ様にも手紙を出して、もう少しだけ待ってほしいって、ちゃんと僕からも頼もう。



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