35 / 109
第一章
35.問題児クラス
しおりを挟む~sideディオ~
幼児化は、精神が幼くなるわけではなく、半獣化というものが精神を不安定な状態にさせ、思考を鈍らせる事から、幼児化と呼ばれているだけだ。
しかしなぜか、ユユは実際に幼児化しているように思え、スイが幻影を使ってユユを強制的に眠らせた。
「はぁ~……まさか、全員にマズルガードが必要になるとは思わなかったよ」
ユユが眠った事を確認してから、学園に置いてあるマズルガードを、生徒全員に配った。
ユユが怖がっていたという事は、命の危険を感じたのだろう。
それも、かなりの感情を一斉にぶつけられていたため、ユユには可哀想な事をしてしまったと思っているが、それと同時に嬉しくもあった。
ユユへの想いは、俺やディアの方が圧倒的に危険なはずだが、ユユがあそこまで震える事はなかった。
むしろ、俺達の前ではすぐに獣化して、降参状態になるため、震えるほど恐怖に抗おうとする事もない。
「先生、癒し子様は先生のツガイではないんですよね?」
「フェンリア先生を敵にまわしたくはありませんが……俺達も───」
生徒達がユユを狙うような発言をしたその時、ちょうど良くディアが堂々と教室へ入ってきた。
その瞬間、生徒達は顔を真っ青にし、ディアから目を逸らす。
「ギンに呼ばれて来てみたけどさ……まさか、二日連続で来る事になるとは思わなかったわ」
「俺だって呼びたくなかったよ。でも、こうでもしないと、俺とディアがユユに本気だって事が伝わらないみたいだからね」
チラリと生徒達を見てみれば、全員が特級とは思えないほど怯えた様子で頭を下げ、そこから動かなくなる。
「そのユユはどこに……うわ、可愛い! 幼児化してんじゃん。ディオ、お前なにした?」
「生徒全員が、発情した目でユユを見てたから、力を振るういい機会だなって思ったんだよね。でも、ユユが幼児化しちゃったから、可愛くて可愛くて。もうそれどころじゃない」
本当に可愛かった。
甘えてくるし、俺しか見えてないし。
「そりゃ可愛いでしょ。そんで? 俺は婚約者として呼ばれたって事でいいわけ?」
ディアは、ユユの腰についているマズルガードをつけると、気持ち良さそうに眠るユユを抱えて、不適な笑みを浮かべる。
「そういう事。特級相手には俺みたいな、力でねじ伏せる奴よりも、精神攻撃をしてくるディアの方がいいんだよ」
「精神攻撃って失礼じゃね? 別に攻撃してるわけじゃねーし、ただ追い込むだけじゃん。俺はディオみたいに手は出してねーから」
手は出してなくても、魔法は使ってるでしょ。
というか、攻撃はしてると思うよ。
傷つけてるわけだし、ディアがやる事は拷問に近いから怖いんだと思うけど。
俺から見ても、ディアは異常だと思うしね。
「ディオ、ユユ起こしてもいい?」
「駄目。ユユの幼児化は本当に幼くなってるから、起こすなら職員室に行ってから起こして。というか、ディアがいるなら職員室に行ってもいいよ。今日は授業じゃないし」
ユユを職員室に残すのは、俺が不安だったから連れてきただけだしね。
「じゃあ、ユユは連れて行くわ。ディオ、暴れんならほどほどにしなよ。どうせ訓練場に行くんだろうし」
分かってるよ。
暴れはしないけど、訓練場には連れて行って、地獄のメニューでも組み込もうかな。
ついでに鍛えつつ───
「ん? ギンも行きてーの? ディオ、ギンも連れて行ってやって。なんか怒ってるし」
そうして、ギンだけがその場に残り、ディアはユユに頬擦りしながら教室を出て行った。
その後、訓練場に着いてすぐ、俺は生徒達を鍛えつつも、怒りをぶつけるように威圧し続け、ギンはストレス発散に生徒の相手をしていた。
瀕死になっても、あっという間に治し、もう一度瀕死にさせるという拷問に近いやり方は、闇化を一度落ち着かせるには一番効率がいい。
しかし、それはディアのやり方に似ていて、そこで漸くギンがディアを選んだ理由がなんとなく理解できた。
結果、俺のクラスの生徒だけが、初日からボロボロになり、幼児化から戻ったユユに会わせれば、発情する事もなく、現在は職員室でユユに癒されている。
「ユユくんに発情は……僕のクラス、大丈夫ですかね。人間が多いので、マズルガードは必要ないと思いますが、どうなるかは分かりません」
「私のクラスは、エルフが多いから発情は大丈夫そうかな」
「俺のクラスも竜人が多い分、発情は問題ないだろうが……ストーキングする可能性はあるな」
種族によって特徴があるため、クラスごとに反応はバラバラだが、俺のクラスのように獣人ばかりでなければ、発情する可能性は低いだろうと思っている。
俺のクラスは婚約者もいない獣人で、特級の中でも問題を起こす者が多い。
そんな問題児達が、ユユに触れたり会話をする順番を、今はおとなしく待っているのだから、ユユの癒しは本当に凄い。
「ディオ、これで三週目なんだけど。そろそろいいんじゃね? ギンとアスルが離そうとしても、だんだん離れねー奴が出てきてる」
「離れない奴は、闇化がギリギリだった奴らだね。おとなしくしてるし、ユユに迷惑もかけてないからそのままでいいよ。ユユも本に夢中だしね」
最初のうちは会話をしていたユユだが、今はファジャ学長から受け取った本を真剣に読んでいる。
そんなユユの周りは、いつもの魔物や動物達のように、勝手に癒されに来る者で溢れているが、特に何をするわけでもなく、ひたすらユユを見つめているため、俺はユユをディアに任せて、書類仕事の方を始めた。
12
お気に入りに追加
1,055
あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます
瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。
そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。
そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる