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第一章

32.必要な場所

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 朝食を終え、ディアがお城へ行った後、僕は昨日と同じようにディオとともに、学園へと向かった。
 今日からは、シアくんとショウくんもいるため、学園へ着くと、二人は生徒達を見張るように立っていた。


「シアくん、ショウくん!」


「ユユ~! おはよう。今日からよろしくね~」


「ユユ、今日は雰囲気が違うな。なにかいい事でもあったか?」


 あっ、そうだ! ショウくんには、癒力についてのお礼を言わないと!


「ショウくん、癒力のこと教えてくれてありがとう! 昨日、精霊から神様について少しだけ教えてもらえて───」


「ユユ、ここは人が集まるから、中で話そうね」


 ディオに言われて周りを見てみれば、僕はものすごく注目されていて、生徒がどんどん集まってくるため、僕達は一度中へ入り、特級の職員室まで来てから、昨日の事を話した。
 すると、シアくんもショウくんも僕の変化に喜んでくれ、協力すると言ってくれたのだ。
 それから少しの間、僕はディオの隣に座って、お茶を飲んでいると、先生達が大荷物を持って部屋に入ってきた。


「ユユくん! おはよう」


「ヒイラギ兄さん、おはようございます。昨日は迷惑かけてごめんなさい。アシッド先生とガルド先生もごめんなさい」 


 僕は昨日の事を謝ったが、最後に入ってきたファジャと、同じ神官であるシアくんとショウくんには、謝る必要はないと言われてしまった。
 それでも、迷惑はかけてしまったため、そこは譲らずにいると、先生達は僕の謝罪を受け入れてくれた。


「それで? どうしたの、その荷物」


 ディオも荷物については知らなかったようで、何も知らされていない事に不機嫌になるが、先生達はディオにも内緒で、僕との触れ合いスペースを作るつもりだったらしい。


「はぁ……ユユは子どもじゃないんだけど。なんで子どもの遊び場みたいになってるの」


 僕とディオの場所だけがマットが敷かれ、ぬいぐるみや遊び道具が置かれているのだ。
 そして更に、僕が寝てもいいように、毛布や枕まで用意されている。
 可愛いものが好きな僕にとっては嬉しいが、ディオは自分が用意していない物で僕が遊んだり、眠ったりする事を想像するだけで、闇化がいっきに黒に振り切れてしまったのだ。


「ディオ、大丈夫だよ。僕はディオが嫌がる事はしない。だから、ありがたいけど、これはお断りするよ」


「いいよ、ユユ。全部に俺の匂いつけるから。ユユは可愛いものが好きだし、嬉しそうだった」


 うっ……ごめんなさい。
 でも、ディオの闇化が進んでるよ。
 僕が断った方がいいんじゃないの?


「ユユくん、特級なんてこれが普通だから、気にしなくていいよ。匂いつけするって言ってるんだから、貰えるものは貰っておいて。これは役に立つと思うから」


 アシッド先生は、シアくんとディオに睨まれながらも、一番張り切って僕の居場所を作っている。


「で、でも……ディオ、怒ってる?」


「怒ってはないけど、嫌だよね。ユユの居場所を他の奴が作ってるっていうのはね……嫌な気分だよ」


 やっぱり怒ってる。
 どうしよう。
 ここは僕が断って、穏便に済ませた方が───


「はぁ……でも、こういう場所が必要だって事も分かるし、俺が昨日のうちに整えておかなかったのが悪いから、匂いつけだけして、あとはお願いするよ」


「なんで必要なの? 僕、仕事の邪魔はしないし、勉強だってするよ。手伝う事があれば、手伝いだってする」


「ユユにはこういう場所がないと、生徒のほとんどがユユに集まってくるし、いろんなところで触られる事になっちゃうんだよ。俺かディアがいればいいけど、そうじゃないとユユのストーカーが増えると思う」


 ストーカー……本当にそんな事になっちゃうの? ギンとアスルがいても駄目?


「この場所でなら、ユユくんに触れてもいいというものがなければ、本当に危険なんです。ユユくんの周りに神官がいても、特級は何をするか分かりませんから。それと、ディオ様も何をするか分かりません。一番危険なのはディオ様と殿下ですよ」


 ヒイラギ兄さんは、そう言いながらも僕の頭を撫で、ガルド先生も無言で頷きながら、僕の手を撫でている。
 ガルド先生は、ツガイがいないからか、僕の居場所作りには参加しないように、気をつけているらしい。
 その証拠に、ガルド先生が僕の居場所に近づくたびに、ディオは無言で毛を逆立たせ、ガルド先生も常にディオの動きを警戒しているのだ。


 そんな事を観察しながら、僕は匂いつけをしているディオの様子を眺めていると、突然ディオの毛がブワリと逆立ち、殺気のようなものを感じた。
 ディオの視線の先には、アシッド先生が持つぬいぐるみがあり、アシッド先生も動きを止める。


 あ……ぬいぐるみは、たぶん駄目。
 僕にとってもディオにとっても、ぬいぐるみは特別なんだ。


「アシッド先生、ぬいぐるみだけは、ごめんなさい。僕には、ディオとディアから貰ったぬいぐるみがあるから、そのぬいぐるみは……あっ、シアくんにあげてほしい!」


 ぬいぐるみは受け取れないが、せっかくの可愛いぬいぐるみが、可愛がってもらえないのは可哀想だと思い、アシッド先生の息子であるシアくんの服を引っ張った。




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