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第一章
31.癒しの変化
しおりを挟むマズルガード……つけないと駄目なの? 大丈夫そうに見えるのに。
昨日みたいに噛むのは、もうしないの?
「あぶねー。俺はユユが怖がったり、嫌がったりしてんのが、結構好きだからさ。こう……一旦自由にさせてから、俺のところに堕とすっつうかね。安心してる今だから、怯えさせて本気で噛みそうになった」
ひッ……そ、そうなの? 危なかった。
「ほんと……ディアは歪んでるよ。確かにユユは怯えてても可愛いけど、俺は俺に依存してほしいよ。突き放したり、いじめたりはしたくないかな。まあ……ユユが俺から離れようとするなら、何するか分からないけど」
……ディオも、普通に見えたのに危なかったかも。
でも、二人とも闇化は黒に振り切れてないのに、なんでだろう。
毛づくろいが駄目だった?
「ディオ、ディア、毛づくろい駄目? 僕……二人が、いつも可愛いとか、綺麗って言ってくれるから……きょ、今日は学園に行くし、その言葉に相応しくありたくて……」
僕は獣化して、二人に確認してもらう為に首を傾げると、ディオが僕を膝の上に乗せ、ディアが櫛で僕の毛をとかしてくれる。
「ユユは本当に可愛いね。俺達は、本当に思ってる事を言ってるだけだし、言葉でユユを育てようと思ってるから、言ってるんだよね。俺達のユユを育てたいというかね」
「ユユは俺達の真似とかさ、言葉の影響とか受けやすいじゃん? 闇ノ国に慣れようとしてるのもあんだろうけど、俺達からしてみれば、ユユに与える言葉はユユを育てる言葉なんだよ」
じゃあ、僕はディオとディアに応えられてるって事でいいの? 毛づくろいは駄目じゃない?
「でも、毛づくろいは俺達にやらせてほしいかな。気になってたなら言ってくれたらいいのに。こそこそ毛づくろいされると、勘違いしちゃうかな……俺達以外との出会いを求めてるのかとか、噛み痕を必死で消そうとしてるのか……とかね」
ディ、ディオ? 僕、やましい気持ちはないの。
「そうだね。ユユなら、毛づくろいも甘えて頼んでくれると思ってたのにさ。俺達のものにはなりたくねーって言われてんのかなって、思うよな」
ディア……は、なんで少し嬉しそうなの? うぅ、ちょっと逃げたくなる。
もう少しディオにくっついてみよう。
「ユユ、毛が逆立ってるけど……あぁ、もしかしてディアから逃げてる? 隠してあげようか?」
「ディオ、今隠したら、毛づくろいできねーじゃん」
「どっちにしても、毛が逆立ってるから無理だよ。ユユ、元に戻って服着ようね。今日は何がいいかな」
ディオは僕をベッドに残して立ち上がってしまったため、僕は元に戻って毛布をかぶると、ディアが僕を抱きしめて頬擦りしてきた。
逃げたくなる気持ちよりも、やはりディオかディアにくっついている方が落ち着くため、僕はあっという間に、ディアの腕の中で落ち着いてしまった。
それから、僕はディオが選んだ服を着て、ディアが部屋の扉や窓を開けると、ギンとアスルは勿論だが、スイや動物達も入ってきた。
「わあっ! なんか、今日は凄いね。みんなどうしたの?」
僕の周りには動物達が集まり、いつも以上に僕にくっついてきたり、撫でろとアピールしてくる。
そんな僕の肩には、アスルとスイがいて、ギンも今日はみんなを叱る事なく、僕に擦り寄ってくるのだ。
「ユユの癒しがいつも以上みたいだよ。綺麗だとも言ってるね」
「ギンは、ユユの周りが光ってるって言ってる。たぶん、いつも以上に癒力が漏れてるんじゃねーかな」
そうなの? じゃあ、試しに少しだけ抑えてみよう。
むむむっ……いつも通り、いつも通り、いつも通り───
僕は目を瞑って、尻尾に力を入れながら念じてみると、足にくっついていた動物達が離れ、ギンも離れたような気がしたため、ゆっくり目を開けた。
「できた? ちょっと抑えられた?」
「うん、できてるみたいだよ。やっぱり、今のは抑えようとしてたんだね。可愛すぎて、俺は癒されたけど」
「俺も癒されてる。プルプルしてんのが可愛かった」
なんか分からないけど、ディオとディア以外には、ちゃんと抑えられたみたい! これって成功でいいんだよね? よし、こんな感じでもっと頑張ろう!
やる気に満ちた僕は、絶好調で尻尾を振りながら、自然とディオとディアにくっついてしまい、そのまま朝食を食べに行った。
「ユユくん、おはよう! 今日は雰囲気が違うね」
「ママさん、おはようございます! 僕、そんなに違う?」
「今日のユユは、纏う空気が違うんじゃないか?」
「パパさん! 周りの空気違う? 本当!?」
まだ癒せてなくても、空気とかは癒したい! 少しだけ目標に近づけたかな?
嬉しくなってしまった僕は、食事中に尻尾を振ってしまった事で、後ろにいたギンに吠えられ、少しだけ注意されてしまった。
そして、パパさんもママさんも状況が分からないため、僕は自分の気持ちが変わった事と、これからの事を話した。
すると、パパさんもママさんも理解してくれたのか、僕がやりたい癒しや生き方を応援してくれ、なにか気づいた事があれば教えると言ってくれたのだ。
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