癒し系男子はヤンデレを癒しながら甘えたい

翠雲花

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第一章

30.新しい僕

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 僕は、漸く重要な事に気づき、ディオとディアの手を握りしめて、尻尾を回すように振る。


「ディオ、ディア!」


「なに? 可愛いね、ユユ。何かいい事でも考えた?」


「ユユがこんなに力強く俺の手を……珍しい! 可愛い、可愛い! どうしたぁ?」


 ディオとディアは、僕につられるように尻尾を揺らし、マズルガードを僕の手に押し付けてくる。


「あのね、僕は癒すのが好き。神様の為でも、許しの為でもなくて、僕は癒すことが好きだから、みんなを癒してるんだって気づいたの。でも、僕は神様から離れるつもりはなくて……もっと近づきたい。もっと神様のことを知りたい。神様も……癒せるようになりたい。僕は、誰かに命令されて癒すんじゃなくて、自分の意思でもっと癒せるようになりたい」


 言いたい事を一気に伝えてしまった事で、逆に伝わりづらくなってしまったかと思ったが、ディオとディアは理解してくれたようで、微笑みながら僕の頭を撫でてくれた。


「ユユは、自分の生きたいように生きていいんだよ。精霊から聞いた、神の言葉がユユにとっては嬉しかったんでしょ? ユユが無理しないなら、俺達はユユを応援するよ」


「ユユが直接もらった言葉でもねーのに、神を癒したいって思うくらい、ユユにとっては救われる言葉だったんだよな。悔しいけど、それが神の言葉だからユユを救えたんだと思えば、まあ……俺達も嬉しいよ」


 うん! 僕はみんなを癒したいし、ディオとディアを一番に癒したい! 


「僕が癒したところから、どんどん癒しが広がってくれたらいいなぁ。僕のしたい癒しは、みんなに広がっていく癒しなの。植物とか空気とか、そういのも癒せたら、そこに住む人達も癒せたりしないかな?」


「できるとは思うけど、たぶん今はまだ難しいかな。ショウから聞いた事だけど、ユユの癒しは魔力じゃなくて、癒力ゆりょくっていうものらしいよ。癒し子には、魔力の代わりに癒力があるらしいから……残念ながら、ユユは魔法がほとんど使えない」


 魔法がほとんど使えない……だから、僕の治癒はかすり傷しか治せなかったんだ。
 ちょっと納得したかも。


「ショウくんは凄いね。どうやって癒力なんて知ったんだろう」


「癒力については、水ノ国からの情報らしいけど……ユユは、まずは闇ノ国に慣れる事からな」


 うぅ……確かに。
 僕はまだまだ知らない事ばっかりだから、他国のことまで頭に入らないかも。


「ユユ、他国についても、そのうち教えてあげるよ。だから今は自分のできる事からやろうね」


「うん。まずは、神様について知りたい。それで、癒しもディオとディアを一番に癒して、少しずつ他も頑張る! だから、癒力についても教えてほしい」


 癒力ってものが、どんなものなのか分かれば、もっと癒せるかもしれないもんね。


「癒力はユユの幸せと繋がってるみてーだし、ユユの幸せが大きくなればなるほど、癒力も強くなるらしいよ。だから、ユユが甘えたいなら俺達に甘えて、遊びたいなら遊ぶ」


「それと、獣化はやっぱり特別みたいだから、定期的に獣化して休むといいみたいだね。あとは巣作りも大事かな。とにかく、まずはユユ自身が癒されないと、ユユの癒力も強くならないみたいだよ」


 僕が癒される? それなら、僕はディオとディアのそばが一番癒されるよ! あとは、二人の服とぬいぐるみ。
 それと、キスして触ってもらえるのも嬉しい。


「ディオ、ディア、触れ合いっこしたい!」


 二人を誘うように、巣の中で横になると、ギンとアスルとスイが部屋から出て行き、ディオとディアが服の中に手を滑らせてきた。
 それからは、マズルガードを外して、何度も口づけをし、いつもの触れ合いとは違って、少しだけ体を噛まれてしまったが、それでも命の危険を感じる事はなく、ディオとディアも僕の体に噛み痕をつける事で、満足そうに喜んでくれた。


 そして翌朝、早くに目が覚めた僕は、ディオとディアに抱きしめられていたため、獣化をしてから二人の腕の中から出て、体を伸ばした後、ついでに毛づくろいをしてみた。


 久しぶりの毛づくろい。
 いつもディオが整えてくれるけど、獣化した時の毛づくろいはしてないから、ちょっと汚い気がする。


 それからは、夢中で毛づくろいをしていると、いつのまにかディオとディアが起きていて、毛づくろいをしているところを見られてしまったのだ。


「ッキャン! な、なな……なんで」


 起きてるなら早く言ってほしかった! 恥ずかしい。
 綺麗にしてるところなんて、ちょっと恥ずかしいよ。
 好きな人に会う為に、おしゃれしてるところを覗かれた気分。


「おはよう、ユユ。今日も可愛いね」


「可愛いよ、ユユ。今日も綺麗な毛じゃん。そんなに毛づくろいして、どこまで綺麗になんの?」


 あうぅ……だって、いつもディオもディアも、可愛いとか綺麗とか言ってくれるから、僕もその言葉に応えたいんだもん。


 僕はすぐに元に戻り、一人でお風呂へ行こうとしたが、今は何も着ていない状態だったため、二人の前で裸になってしまったのだ。


「朝から刺激的だね、ユユ。噛み痕が痛くて毛づくろいしてるのかと思ったけど、そうじゃないみたいで安心したよ」


「もう噛み痕ねーじゃん。またつけてあげようか?」


 ディオに引き寄せられると、ディアはわざと牙を見せるように指で口の端を引くが、僕の尻尾が少し揺れてしまうと、ディアは自らマズルガードをつけ、ディオも同じくマズルガードをつけた。



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