上 下
15 / 109
第一章

15.もう一人じゃない

しおりを挟む


 僕、なんで隠されてるの?
 ちゃんと服は着てるのに……むしろ、ディオとディアの方が隠れた方がいいよ。
 ディオはシャツ一枚になってるし、ディアは装飾品とかゴツゴツした物は全部取ったせいで、服が破けちゃってるのに。


 僕が一人で首を傾げていると、ディオとディアが僕に頬擦りをしてきた。


「ユユ、ごめんね。ディアならユユのツガイにしてもいいよ」


「俺もディオならいいかな。だから、俺達とツガイになろうね」


 僕のツガイが二人……嬉しい。
 僕が傷モノじゃなかったら良かったのに、なんで僕は傷モノなんだろう。
 傷モノの僕はきっと……祝福もしてもらえない。


「神様に怒られちゃう」


「そんな事ないよ。ユユ、一緒に調べよう。本当に神がユユを怒るかどうか」


「俺も王族の立場を使って、他国に伝わる神についても調べる。神官でも分からねーこと調べんのは大変だろうけど、ユユとツガイになる為なら光ノ国を滅ぼしたっていい」


 光ノ国……そうだ、光ノ国なら僕が教わった事は全部残ってるはず。
 でも、僕は行けない。


「ユユ様、我々神官もユユ様が教えられた神については調べております。なので、どうか幸せを諦めないでください」
 

 ウェルダーがその場で膝をつき、胸に手を当てると、他の神官も同じ動きをし、パパさんとママさんは僕に向かって頷いた。


「あ、ありがとうございます。僕も……できる事は頑張るよ。僕が癒せるなら、みんなを癒し続けたい。願ってもいいなら……ディオとディアと……ツガイになりたい」


 僕だって、ディオとディアとツガイになりたいよ。
 ちゃんと癒し続けるから、たくさん甘えたい。
 神様、僕にはまだ罪が残ってますか? 


 当然だが、僕の質問に答えてくれる言葉はなく、僕の心を表したように、外は雨が降りだした。


「珍しい。この空中都市では、滅多に雨が降らないんだが」


「ここよりも上空に雲がかかることは、なかなかないからね。とりあえず、ディアはこのマズルガードをつけて、ディオと一緒にユユくんの部屋に行っておいで」


 パパさんとママさんは外を見て眉を寄せると、ウェルダーを含めた神官達も頭を下げてから部屋を出て行き、僕は自分の部屋に向かった。
 部屋に入ってすぐ、僕がディオとディアに抱きつくと、僕はベッドに連れて行かれ、ディアからマズルガードを受け取った。


「ユユがつけて。今度、俺のマズルガードも持ってくるからさ、そん時は鍵も渡すよ。マズルガードはユユと会う時だけつけるし、どうせディオもユユにつけてもらってんでしょ?」


「そうだよ。マズルガードをつけない時は、ユユの腰にマズルガードもぶら下げてある。俺も予備の分は腰につけてるしね」


「二つ必要って事かぁ。じゃあ、一つは今度ユユに選んでもらうかな」


 ディオとディア、本当に似てるんだね。
 同じ事考えてる。


「うわっ、俺と一緒の事しないでよ」


「げっ、ディオと一緒とか……もう俺達双子でいいんじゃね?」


 うんうん、僕もそう思う!


 僕は尻尾を振って二人に期待の目を向ければ、ディオもディアも僕の耳を撫でてきた。


「ユユが嬉しそうだから、二人で一つって事でいいね? ディア」


「ああ、いいよ。どうせ昔から一緒だったんだし、何かやるにしてもディオがいた方が動きやすいしさ。ただ、ユユについては抜け駆け禁止だから」


 ディオもディアも仲良し! 嬉しい。
 喧嘩するのは仕方ないと思うけど、仲が悪くなるのは嫌だし、僕も二人を癒せるように頑張りたい。


 その後、耳の他に尻尾や背中も撫でられ、気持ちよくなってベッドに横になると、ディオやディアよりも先に、動物達が僕の周りに来て、眠ってしまった。


「うわっ、ユユのこと抱きしめて寝ようと思ったのに」


「今日は諦めな。たまにあるんだよ。動物も魔物も、俺達と同じでユユに癒されたいみたいなんだよね。ユユにくっついて眠ると、一番癒されるみたいだよ。俺も試してみたら、スッキリして起きれたし、熟睡もできた。それと、数値も少しだけ白に入ってたよ」


 そうなの? 知らなかった。
 僕と眠るのっていい事なんだ。
 癒されるって事はそういう事だよね?


「僕、みんなと眠った方がいい?」


「駄目! ユユが一緒に寝ていいのは俺とディアだけ」


「ユユのそばで眠らせるとかならまだいいかもしんねーけど、一緒に寝んのは駄目。ユユが横になんのも駄目」


 駄目なら仕方ない。
 動物と魔物は許してくれるみたいだから、他の方法で、みんなを癒そう。
 まずはディオとディアの闇化が進まないように、もっといろんな方法を試したい!


「ディオ、ディア、僕はもっと癒したい。二人の闇化も進まないように、いろんな事を試したいし、他の人も癒し続けたら、神様に……しゅ、祝福して……もらえるかな? 許してもらえるかな?」


 途中で恥ずかしくなり、手で顔を隠すと、両手をディオとディアに掴まれ、キスでもするようにマズルガードを頬に優しく押し付けてきた。


「そういうのも、少しずつ試してみようか。ユユが祝福されないなんてありえないけど、ユユも胸を張って神に報告したいんでしょ?」


「ユユが納得いくように、俺達も協力はするし、これからは一緒に頑張ろうな。一人で頑張る必要はねーよ」


 一人で頑張る必要はない……今の僕は一人じゃない。


 心がじんわり温かくなると、自然と涙が流れてしまい、その涙をディオとディアが拭ってくれる。
 その時、部屋に光が差し込んできたため外を見ると、雨はやんでいて、植物についた水が日の光でキラキラと輝き、うっすらと虹が見えたような気がした。




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:17,799pt お気に入り:6,072

婚約者の義妹に結婚を大反対されています

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:59,286pt お気に入り:4,964

少女は隣の部屋で兄を想う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:276pt お気に入り:4

【R18】禁断の絶頂

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,036pt お気に入り:7

令嬢スロート

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,661pt お気に入り:62

傲慢エルフと変態キメラ Vo1

BL / 連載中 24h.ポイント:376pt お気に入り:70

王妃は離婚の道を選ぶ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:35,259pt お気に入り:1,512

処理中です...