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第一章
15.もう一人じゃない
しおりを挟む僕、なんで隠されてるの?
ちゃんと服は着てるのに……むしろ、ディオとディアの方が隠れた方がいいよ。
ディオはシャツ一枚になってるし、ディアは装飾品とかゴツゴツした物は全部取ったせいで、服が破けちゃってるのに。
僕が一人で首を傾げていると、ディオとディアが僕に頬擦りをしてきた。
「ユユ、ごめんね。ディアならユユのツガイにしてもいいよ」
「俺もディオならいいかな。だから、俺達とツガイになろうね」
僕のツガイが二人……嬉しい。
僕が傷モノじゃなかったら良かったのに、なんで僕は傷モノなんだろう。
傷モノの僕はきっと……祝福もしてもらえない。
「神様に怒られちゃう」
「そんな事ないよ。ユユ、一緒に調べよう。本当に神がユユを怒るかどうか」
「俺も王族の立場を使って、他国に伝わる神についても調べる。神官でも分からねーこと調べんのは大変だろうけど、ユユとツガイになる為なら光ノ国を滅ぼしたっていい」
光ノ国……そうだ、光ノ国なら僕が教わった事は全部残ってるはず。
でも、僕は行けない。
「ユユ様、我々神官もユユ様が教えられた神については調べております。なので、どうか幸せを諦めないでください」
ウェルダーがその場で膝をつき、胸に手を当てると、他の神官も同じ動きをし、パパさんとママさんは僕に向かって頷いた。
「あ、ありがとうございます。僕も……できる事は頑張るよ。僕が癒せるなら、みんなを癒し続けたい。願ってもいいなら……ディオとディアと……ツガイになりたい」
僕だって、ディオとディアとツガイになりたいよ。
ちゃんと癒し続けるから、たくさん甘えたい。
神様、僕にはまだ罪が残ってますか?
当然だが、僕の質問に答えてくれる言葉はなく、僕の心を表したように、外は雨が降りだした。
「珍しい。この空中都市では、滅多に雨が降らないんだが」
「ここよりも上空に雲がかかることは、なかなかないからね。とりあえず、ディアはこのマズルガードをつけて、ディオと一緒にユユくんの部屋に行っておいで」
パパさんとママさんは外を見て眉を寄せると、ウェルダーを含めた神官達も頭を下げてから部屋を出て行き、僕は自分の部屋に向かった。
部屋に入ってすぐ、僕がディオとディアに抱きつくと、僕はベッドに連れて行かれ、ディアからマズルガードを受け取った。
「ユユがつけて。今度、俺のマズルガードも持ってくるからさ、そん時は鍵も渡すよ。マズルガードはユユと会う時だけつけるし、どうせディオもユユにつけてもらってんでしょ?」
「そうだよ。マズルガードをつけない時は、ユユの腰にマズルガードもぶら下げてある。俺も予備の分は腰につけてるしね」
「二つ必要って事かぁ。じゃあ、一つは今度ユユに選んでもらうかな」
ディオとディア、本当に似てるんだね。
同じ事考えてる。
「うわっ、俺と一緒の事しないでよ」
「げっ、ディオと一緒とか……もう俺達双子でいいんじゃね?」
うんうん、僕もそう思う!
僕は尻尾を振って二人に期待の目を向ければ、ディオもディアも僕の耳を撫でてきた。
「ユユが嬉しそうだから、二人で一つって事でいいね? ディア」
「ああ、いいよ。どうせ昔から一緒だったんだし、何かやるにしてもディオがいた方が動きやすいしさ。ただ、ユユについては抜け駆け禁止だから」
ディオもディアも仲良し! 嬉しい。
喧嘩するのは仕方ないと思うけど、仲が悪くなるのは嫌だし、僕も二人を癒せるように頑張りたい。
その後、耳の他に尻尾や背中も撫でられ、気持ちよくなってベッドに横になると、ディオやディアよりも先に、動物達が僕の周りに来て、眠ってしまった。
「うわっ、ユユのこと抱きしめて寝ようと思ったのに」
「今日は諦めな。たまにあるんだよ。動物も魔物も、俺達と同じでユユに癒されたいみたいなんだよね。ユユにくっついて眠ると、一番癒されるみたいだよ。俺も試してみたら、スッキリして起きれたし、熟睡もできた。それと、数値も少しだけ白に入ってたよ」
そうなの? 知らなかった。
僕と眠るのっていい事なんだ。
癒されるって事はそういう事だよね?
「僕、みんなと眠った方がいい?」
「駄目! ユユが一緒に寝ていいのは俺とディアだけ」
「ユユのそばで眠らせるとかならまだいいかもしんねーけど、一緒に寝んのは駄目。ユユが横になんのも駄目」
駄目なら仕方ない。
動物と魔物は許してくれるみたいだから、他の方法で、みんなを癒そう。
まずはディオとディアの闇化が進まないように、もっといろんな方法を試したい!
「ディオ、ディア、僕はもっと癒したい。二人の闇化も進まないように、いろんな事を試したいし、他の人も癒し続けたら、神様に……しゅ、祝福して……もらえるかな? 許してもらえるかな?」
途中で恥ずかしくなり、手で顔を隠すと、両手をディオとディアに掴まれ、キスでもするようにマズルガードを頬に優しく押し付けてきた。
「そういうのも、少しずつ試してみようか。ユユが祝福されないなんてありえないけど、ユユも胸を張って神に報告したいんでしょ?」
「ユユが納得いくように、俺達も協力はするし、これからは一緒に頑張ろうな。一人で頑張る必要はねーよ」
一人で頑張る必要はない……今の僕は一人じゃない。
心がじんわり温かくなると、自然と涙が流れてしまい、その涙をディオとディアが拭ってくれる。
その時、部屋に光が差し込んできたため外を見ると、雨はやんでいて、植物についた水が日の光でキラキラと輝き、うっすらと虹が見えたような気がした。
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