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chapter2
慶の覚悟
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『ケイ、俺のパシリから聞いたが、あの学園で次々と、ルイの姿を見せていたそうじゃないか。』
あぁ、神崎か。あいつ言いやがったな。
あれから涙の家では何かと騒がしかったが、やっと今日1日終わろうとした時、俺はレオに部屋にくるよう言われた。
『涙の為ですよ。俺は涙の為にしか動きません。知っているでしょう?』
『あぁ、だから確認したんだ。今回はルイの命が危険だと判断し、俺がルイを退学させた。』
やっぱりか。そうだろうとは思ったが、命の危険だと!?涙の命を狙ったのは…………まさかあの花月家か!?
とたんに自分の体温が急激に下がるのが分かった。
あの時は、頭に血がのぼって違和感に気づけなかったが、後々考えてみれば、まずあの学園の大体は涙の親衛隊だったはずだ。俺には隠しているつもりだったようだが、涙の為に王道とやらに近づけていたのは気づいていた。しかし、それを知らない涙からしてみたら、理不尽に言われたい放題の状態だっただろう。
だから涙が傷つくと思い、それを見るのも嫌で、俺は知らないふりをし、理事長にも相談しに行って、涙が傷つかない環境をつくった。
そして、その親衛隊の多さに加えて、涙の親衛隊隊長である、神崎の親衛隊を合わせると、確実に署名は集まらないはずだった。しかし、集まったということは、神崎がでっちあげた事になる。
ただ、それをレオが指示したとは、レオに会うまでは思っていなかったけどな。
レオのことだ、普通だったら真っ先に涙の心配をするだろうが、それをしなかった。むしろ瑞希さんとイチャつく余裕があったからな。
『レオは、涙がどれだけ窮屈な想いをして過ごしているか知っているか?毎日変装をして、重たいウィッグをつけて化粧までしている。今は、理事長に作ってもらったガスマスクがあって、準備が楽になっただろうが、窮屈なことには変わりない。今回のような危険はあるだろうが、それは周りがしっかり守ってやればいい。涙の気づかない範囲で護衛をつければ、俺も居るし花月の奴なんて殺れたはずだ。勿論涙に気付かれずにな。
だが、それをしなかったのは、レオ自身が涙を失うのを恐れているからだろ。俺だって怖いけどな、そんな自分の理由で涙の自由を奪わないでくれ。』
レオは珍しく目を見開いて、少し驚いているようだった。
俺がレオに対して、自分をここまで出したのが初めてだからだろう。
『………ケイの言いたい事は分かった。確かに、ルイには窮屈な想いをさせているだろう。………俺が……俺の覚悟が出来るまでは、こちらで暮らしながら待っていてはくれないか。……やはり、怖いものなんだよ。大切な家族で、可愛いひとり息子をなくすのは……。』
レオの気持ちは分かる。
俺だって怖い。
さっき花月家の事に気づいた瞬間は生きた心地がしなかった。
今だって手に力が入りすぎて、爪が手の平にくいこんで血が出ている。全身が小刻みに震えているように思えて仕方ない。
それでも、涙の為なら俺は、怖くても自分を信じて涙を守り抜く。
『分かった。十分悩むといいよ。……それでは、失礼します。』
俯くレオにそう言って、俺は部屋を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
皆様明けましておめでとう御座います!!
今年もよろしくお願いします ((○| ̄|_
涙の暗い話が続いてしまいましたが、また明るく脳天気な涙が可愛くなって登場してくれることでしょう!!!
今後ともよろしくお願いします。
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