上 下
37 / 50

37.再び天界へ

しおりを挟む


 ククが目覚めてから、シシはククが創造した記録器を自室と水浴び場に付けた。
 それは、シシが思っていた以上に良い物であったようで、シシはククを記録しては飾っている。
 というのも、ククがシシの笑顔を記録した物は、ガラスの記録器であり、そのまま飾る事ができるのだ。
 それを見たシシは、ガラスの記録器を使っては、自分のコレクションに加えている。


「シシ、ここに本物の僕がいるのに、どうして過去の僕を集めるの?」


「これはククの成長記録だからね。それに、どんなククも残しておいて、いつか振り返った時に一緒に見たら楽しいでしょ?ククも俺の過去を集めてるしね」


(うっ……だって、僕だっていろんなシシを残しておきたい)


「でもまあ確かに、記録器にばかり夢中になるのは良くないね。形を整えた記録器は、いくつか創造神に持っていこうか」


 ククは記録器を創造するものの、シシに形を整えてもらわなければ、ただのガラスの塊でしかなく、何を記録しているのか分からない状態になるのだ。
 そのため、記録器はククだけが作る物ではなく、シシとの共同作業になっている。


「それなら、父さんには僕とシシが記録されたものもあげたい」


「いいね。きっと創造神も喜ぶよ」


(父さんにとって、シシも特別だもんね。僕とシシが記録されてれば、絶対に喜ぶはずだ)


 そうして、ククとシシは自分達を記録し、未使用の記録器と同じ箱に入れ、天界へ行く準備を始めた。
 天界へ行く際は、二人とも藍色の服を着て、ククは外すことのない足と手の飾りの他に、尻尾にも飾りをつけていく。
 もはや自室に帰っていないククは、シシと自室へ行って準備をし、シシの眷属達に手伝ってもらう。
 シシの眷属は全員がモノノケであるため、下界へ弟子を育てる為に行く事はなく、人の姿の眷属のみが下界へ行っているのだ。


「みんなが下界に行かなくて良かった。会えなくなるのは寂しいし、僕の遊び相手がいなくなる」


「ククはモノノケと遊ぶのが好きだからね。最近はサランも遊びに来ているし、産神も喜んでたよ」


「そういえば、なんでサランは僕のところには来るの?産鳥じゃないのに」


「浮いてるだけの存在だけど、ククが天界で言った事も間違いではないんだよ。サランは魂で産鳥が命。魂には思考がないけど、意思はあるんだよ。そうでなければ、今まで魂の望みを聞くことすらできなかったからね」


「心はあるってこと?それだと、僕のところに来たくて来てくれてるの?なんか……何も知らないで、天界ではジジ様にピッタリだって言っちゃった」


 ククは、あの場が静まり返ってしまった原因が、産神にとっては失礼な言葉だったのかもしれないと反省しているが、シシがそれは違うと言って、すぐにククの勘違いを訂正する。


「ククはやっぱり分かってなかったか。それでも、産神にとってククのあの言葉は嬉しかったはずだよ。今まで、サランと産鳥の関係を、魂と命だと言い当てた者はいなくてね。神々は、産神の眷属は役立たずだと言ってきた。神と言っても、死神や産神や属性の神以降は、未熟な神ばかりだからね。冥獣を見たククなら分かるでしょ?」


 ククは冥獣の会話を思い出し、何度も力強く頷いた。
 それにはシシも笑ってしまったが、神になったばかりのククは、シシに育てられている事で、未熟な神々よりも神としての器ができあがっていたのだ。


「役立たずだと言われてきた眷属を、産神にピッタリだと言ったククは、それだけで産神とその眷属から好かれるのは当然なんだよ。そもそも、今まで産鳥がいなければ、命を下界に運ぶ者がいなかったし、サランがいなければ魂の望みを聞くことすらできなかった」


「そうだったんだ……僕、ジジ様の目は覚えてるんだ。けど、産鳥もサランも覚えてなかった。僕は彼らに感謝しないといけないね」


「その気持ちだけで、もう十分だと思うよ。ククのあの言葉に救われたんだから、お互い様でしょ。ほら、準備もできたようだし、そろそろ行こうか」


 話しているうちにククの準備が整い、ククはまたしても白狼の背に乗せられ、シシとともに天界へと向かった。
 天界へ行くと、すぐに神々が寄ってくるため、シシは術で創造神の元へ移動する。
 だが、そこには創造神の他に、それぞれの属性を纏った神々がいて、すぐに属性の神だと分かった。
 属性の神は、どのような姿か分からないどころか、属性そのものであるため、本体があるのかどうかすら怪しい。
 例えば、炎神であれば炎そのもので、水神すいしんであれば水そのものであり、それが感情にともなって様々な形に変化するのだ。


「やあ、待っていたよ。クク、おめでとう。無事に時神となれたようだね」


 創造神は、ククの頭を撫でてそのまま抱きしめる。 
 するとその間に属性の神が全員いなくなっており、ククは不思議に思ってシシと創造神の顔を交互に見た。
 シシへの恐怖と、元々人見知りの神である事が原因で、属性の神々はいなくなったらしい。
 そして創造神の元にいた理由も、ただひと目、ククを見たいが為に来たようで、満足して帰ったそうだ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)

ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子 天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。 可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている 天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。 水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。 イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする 好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた 自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話

月夜の晩に
BL
ペットショップで買ったキツネが大人になったら美形ヤンデレケモミミ男になってしまい・・?

【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません

八神紫音
BL
 やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。  そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。

魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。

柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。 頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。 誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。 さくっと読める短編です。

処理中です...