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37.再び天界へ
しおりを挟むククが目覚めてから、シシはククが創造した記録器を自室と水浴び場に付けた。
それは、シシが思っていた以上に良い物であったようで、シシはククを記録しては飾っている。
というのも、ククがシシの笑顔を記録した物は、ガラスの記録器であり、そのまま飾る事ができるのだ。
それを見たシシは、ガラスの記録器を使っては、自分のコレクションに加えている。
「シシ、ここに本物の僕がいるのに、どうして過去の僕を集めるの?」
「これはククの成長記録だからね。それに、どんなククも残しておいて、いつか振り返った時に一緒に見たら楽しいでしょ?ククも俺の過去を集めてるしね」
(うっ……だって、僕だっていろんなシシを残しておきたい)
「でもまあ確かに、記録器にばかり夢中になるのは良くないね。形を整えた記録器は、いくつか創造神に持っていこうか」
ククは記録器を創造するものの、シシに形を整えてもらわなければ、ただのガラスの塊でしかなく、何を記録しているのか分からない状態になるのだ。
そのため、記録器はククだけが作る物ではなく、シシとの共同作業になっている。
「それなら、父さんには僕とシシが記録されたものもあげたい」
「いいね。きっと創造神も喜ぶよ」
(父さんにとって、シシも特別だもんね。僕とシシが記録されてれば、絶対に喜ぶはずだ)
そうして、ククとシシは自分達を記録し、未使用の記録器と同じ箱に入れ、天界へ行く準備を始めた。
天界へ行く際は、二人とも藍色の服を着て、ククは外すことのない足と手の飾りの他に、尻尾にも飾りをつけていく。
もはや自室に帰っていないククは、シシと自室へ行って準備をし、シシの眷属達に手伝ってもらう。
シシの眷属は全員がモノノケであるため、下界へ弟子を育てる為に行く事はなく、人の姿の眷属のみが下界へ行っているのだ。
「みんなが下界に行かなくて良かった。会えなくなるのは寂しいし、僕の遊び相手がいなくなる」
「ククはモノノケと遊ぶのが好きだからね。最近はサランも遊びに来ているし、産神も喜んでたよ」
「そういえば、なんでサランは僕のところには来るの?産鳥じゃないのに」
「浮いてるだけの存在だけど、ククが天界で言った事も間違いではないんだよ。サランは魂で産鳥が命。魂には思考がないけど、意思はあるんだよ。そうでなければ、今まで魂の望みを聞くことすらできなかったからね」
「心はあるってこと?それだと、僕のところに来たくて来てくれてるの?なんか……何も知らないで、天界ではジジ様にピッタリだって言っちゃった」
ククは、あの場が静まり返ってしまった原因が、産神にとっては失礼な言葉だったのかもしれないと反省しているが、シシがそれは違うと言って、すぐにククの勘違いを訂正する。
「ククはやっぱり分かってなかったか。それでも、産神にとってククのあの言葉は嬉しかったはずだよ。今まで、サランと産鳥の関係を、魂と命だと言い当てた者はいなくてね。神々は、産神の眷属は役立たずだと言ってきた。神と言っても、死神や産神や属性の神以降は、未熟な神ばかりだからね。冥獣を見たククなら分かるでしょ?」
ククは冥獣の会話を思い出し、何度も力強く頷いた。
それにはシシも笑ってしまったが、神になったばかりのククは、シシに育てられている事で、未熟な神々よりも神としての器ができあがっていたのだ。
「役立たずだと言われてきた眷属を、産神にピッタリだと言ったククは、それだけで産神とその眷属から好かれるのは当然なんだよ。そもそも、今まで産鳥がいなければ、命を下界に運ぶ者がいなかったし、サランがいなければ魂の望みを聞くことすらできなかった」
「そうだったんだ……僕、ジジ様の目は覚えてるんだ。けど、産鳥もサランも覚えてなかった。僕は彼らに感謝しないといけないね」
「その気持ちだけで、もう十分だと思うよ。ククのあの言葉に救われたんだから、お互い様でしょ。ほら、準備もできたようだし、そろそろ行こうか」
話しているうちにククの準備が整い、ククはまたしても白狼の背に乗せられ、シシとともに天界へと向かった。
天界へ行くと、すぐに神々が寄ってくるため、シシは術で創造神の元へ移動する。
だが、そこには創造神の他に、それぞれの属性を纏った神々がいて、すぐに属性の神だと分かった。
属性の神は、どのような姿か分からないどころか、属性そのものであるため、本体があるのかどうかすら怪しい。
例えば、炎神であれば炎そのもので、水神であれば水そのものであり、それが感情にともなって様々な形に変化するのだ。
「やあ、待っていたよ。クク、おめでとう。無事に時神となれたようだね」
創造神は、ククの頭を撫でてそのまま抱きしめる。
するとその間に属性の神が全員いなくなっており、ククは不思議に思ってシシと創造神の顔を交互に見た。
シシへの恐怖と、元々人見知りの神である事が原因で、属性の神々はいなくなったらしい。
そして創造神の元にいた理由も、ただひと目、ククを見たいが為に来たようで、満足して帰ったそうだ。
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