上 下
33 / 50

33.魂の引き継ぎ

しおりを挟む


 宮殿の外を少し進めば、産神と死神と狼獣の姿があり、産鳥となったサランとシシの眷属達、それから多くのモノノケ達が警戒するように、何かを囲っていた。


「ちょっとちょっと、なんで俺達が警戒されてるわけ?」


「冥獣が帰って来たっていうのに、おかしいよね?ボクら連れて来られただけなのにさ」


「……うるさい」


「他についてきた眷属もうるせェし。お前らも騒ぐんじゃねェよ」


 騒がしい場所にいるのは、冥獣とその眷属、そして他の神々の眷属も送られてきたようだ。
 そんな騒がしい様子を見て、シシはククを連れて帰ろうとしたが、産神と死神によって止められる。


「冥王、遅かったのう。魂の引き継ぎには、冥王の力が必須じゃ」


「すまない、全員を連れてくるには、さすがに時間がかかってしまった。それと、うるさいので早く下の都市に追いやりたい」
 

(ジジ様とロロ様、なんだか疲れてる。確かにうるさいけど……賑やかで楽しそうだ。でも、怖いから目立たないように下りた方がいいかも)


 ククは尻尾を揺らしながら、白狼の背から下りようとするが、シシがそれを許さなかった。
 これはデートではないとククに言えば、ククはおとなしく白狼の背に乗ったまま、その場の事は考えずに再び時間について考え始めた。
 今、ククにとって優先すべきは、答えの出ていない時間についてだ。
 そのため、この場では自分は関係ないのだと分かると、賑やかで楽しそうではあるものの、陸での事を思い出す賑やかさから逃げるように、シシの服を掴みながら自分が考えるべき事と向き合う。


「ククが怯えているし、早く済ませてしまおう。過去の傷は消えないし、ククが逃避する事を選んだのなら、これは自己防衛だ。急いでこの場から離してあげた方がいい」


「そうじゃな。尻尾は揺らしているようじゃが、かわいそうなほど魂が怯えておる。心と体が、あまりにもかみ合っておらんな」


「冥王、ククを育てるにしても、陸での傷はもう抉る必要はない。癒ない傷は、ツガイが守って補ってやるべきだろう。なぜ連れてきた」


「なぜ?逆になぜ分からない。ククには悪いけど、ククを残して来る方が危険だからだよ。ククは何をするか分からない。それに俺のツガイは活発だからね。目の届く範囲にいないと、すぐにどこかへ行ってしまう」


 騒がしい場所から離れながら話すが、ククは自分の世界に逃避してしまったため、この内容が聞こえておらず、シシの服と白狼の毛を掴んでいる。
 そして、そんなククが何を考えているのか、内心緊張しているシシは、ククが時を司る事になるのなら、静かな場所でゆっくりと時間をかけて考えてほしいと思っていた。


 神が何を司るようになるのか。
 それは、今まで様々な神の誕生を見てきたシシだからこそ、なんとなく分かってしまうのだ。
 どれだけ武芸に優れていようとも、知恵の神となった者もいれば、穏やかな者が憤怒の神となった者もいる。
 それは彼らの求めた神の姿であり、同じものを司る神でも、内容は違ってくるのだ。
 例えば、武神の中でも戦術や武器によって様々であり、扱う術も弓術、槍術、馬術など様々であるため、彼らの神術はあまり術らしくはないように思えるが、実際は大規模な術を発動する。


「それに、ククには冥獣のような神になってほしくはないからね。冥獣を見て、何か思うところがあるのなら、それでいいんだよ」


「それはそうじゃのう。彼奴ら、都市が水没しているとは言え、放置して冥界から逃げおった」


「冥界というより、冥王から逃げたんだろう。冥獣は、冥王を怖がっているからな……この辺りでいいか」


 うるさくない程度に離れた場所まで来ると、ククの意識はシシ達の方へ向き、魂の引き継ぎの瞬間を静かに見守る。
 多くの水が浮かんで、空中で回転するように球体になると、産神と死神と狼獣が発動した術で空中に留まり、そこから次々と転生が行われていく。
 そして水没していた都市はだいぶ下の方にあり、シシの視線の先にいる冥獣や眷属達は、シシと産神の眷属によって強制的に都市へ連れて行かれた。


(白狼はここにいて大丈夫なのかな。それに、術も発動してるのか分からない)


「安定してるから大丈夫そうだね。クク、俺達は帰ろうか。これから、産神と死神の宮殿も作ってあげて、都市の方も少し変えないといけないからね」


「分かった。それなら、白狼から下りた方がいい?」


「下りなくていいよ。白狼は死神でも俺の眷属だから、こういう事は任せられないんだ。それに、そろそろ三人とも自由になるはず。俺のジオラマが更新されたら、あとは定期的に術を発動させるだけだからね」


 それよりもククが優先だと言ったシシは、宮殿に戻ると両隣に二つの宮殿を建て、更にジオラマを使って都市を大きく変えていく。
 その間、ククは再び時間について考え、シシに甘えるようにくっついた。
 そうして数日が経ち、ククはシシの顔を掴んで、シシの膝に座っていた。


「シシ!」


「どうしたの?可愛いけど近いね。誘ってる?」


「誘ってない!それよりも、やっと思いついたよ!」


 ククは、ずっと時間について考えていた結果、漸く新たな発想に辿り着いたのだ。
 そのきっかけとなったのはシシであり、シシの顔を掴んで赤い瞳を覗き込んでいるこの状況が、ククの思考を刺激したのだ。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冥府への案内人

伊駒辰葉
BL
 !注意!  タグはBLになってますが、百合もフツーも入り交じってます。  地雷だという方は危険回避してください。  ガッツリなシーンがあります。 主人公と取り巻く人々の物語です。 群像劇というほどではないですが、登場人物は多めです。 20世紀末くらいの時代設定です。 ファンタジー要素があります。 ギャグは作中にちょっと笑えるやり取りがあるくらいです。 全体的にシリアスです。 色々とガッツリなのでR-15指定にしました。

こじらせΩのふつうの婚活

深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。 彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。 しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。 裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。

その恋、応援します!

秋元智也
BL
いきなり告白された! それもいつも一緒にいる同性から!? 突然、結城裕之にクラスメイトの高橋隆盛が告白! 真剣な彼に断る事もできずにまずは付き合う事に。 それを知った姉同士の阿鼻叫喚! 腐女子の協力もあり、本人たちの気持ちに変化が…。 自覚した気持ちは止まらない! もどかしい二人の関係をお楽しみ下さい。 その後の『その恋、応援します続!』もお楽しみに。

【完結】守銭奴ポーション販売員ですが、イケメン騎士団長に溺愛されてます!?

古井重箱
BL
【あらすじ】 異世界に転生して、俺は守銭奴になった。病気の妹を助けるために、カネが必要だからだ。商都ゲルトシュタットで俺はポーション会社の販売員になった。そして黄金騎士団に営業をかけたところ、イケメン騎士団長に気に入られてしまい━━!? 「俺はノンケですから!」「みんな最初はそう言うらしいよ。大丈夫。怖くない、怖くない」「あんたのその、無駄にポジティブなところが苦手だーっ!」 今日もまた、全力疾走で逃げる俺と、それでも懲りない騎士団長の追いかけっこが繰り広げられる。 【補足】 イケメン×フツメン。スパダリ攻×毒舌受。同性間の婚姻は認められているけれども、男性妊娠はない世界です。アルファポリスとムーンライトノベルズに掲載しています。性描写がある回には*印をつけております。

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~

トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。 しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。 貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。 虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。 そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる? エブリスタにも掲載しています。

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――

BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」 と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。 「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。 ※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

ヤンデレ蠱毒

まいど
BL
王道学園の生徒会が全員ヤンデレ。四面楚歌ならぬ四面ヤンデレの今頼れるのは幼馴染しかいない!幼馴染は普通に見えるが…………?

処理中です...