上 下
17 / 50

17.歪な指輪(sideシシ)

しおりを挟む


 魔法の付与について、あまり気にしていない様子のククを見たシシは、眉間に指を押し当てる。
 あまりにも突然の事で、やはり自分のツガイは特別だ、と思う反面、この事は創造神に報告する必要があるだろうと、頭を悩ませる。
 そんなシシの悩みなど知らず、ククは書庫で指輪を作ろうとし、印を結びながら力を入れる。


(可愛い。尻尾がプルプルしてる。そにしても、なんでククが……まさか、ククは神格化したのか?俺のツガイで、魂も染まってる。それでも神にはなってないはず)


 シシがそんな事を考えていると、ククはシシの裾を掴んで、困ったような表情で見上げていた。


(うわっ、可愛い!また何かあったのかな)


「どうしたの?」


「出ない。指輪のイメージはしてるのに、出てくる気配がしない。神力が戻ってくるんだ」


(神力が戻ってくる?そんな事あるのか?術が発動しないという事は、何かが足りないという事だけど……さっきは小さくても金の塊が出た。創造の術は一回コツを掴めば、ククでも使えると思うけど)


 シシは、もう一度ククに印を結ばせるが、術が発動している様子はあっても、確かに神力がククの体内に戻っていく。
 そこで、ククに魔法の付与をさせてみると、歪ではあるが穴の空いた金の塊が、今度は指のサイズでできあがったのだ。


「できたね……ククは魔法を付与させないと、創造できないのかもしれない。これは、防御の魔法かな。転んでも怪我をしないっていうのはいいね」


 シシはククを褒める事を忘れない。
 ククが落ち込まないように、良いところは褒めてあげれば、ククは尻尾を揺らしてフワリと笑った。
 そんなククを見てしまえば、抱きしめる以外の選択肢はなく、シシはククを抱きしめて頬に口づけをする。


「これなら、結婚式で転んでも怪我はしないね。シシが作ってくれた服も、血で汚れないで済むよ」


(可愛い。血で汚れなくても、土で汚れるとは思わないあたりが、ククらしくて愛おしい)


「じゃあ、ククの指輪はその魔法を付与して、俺の指輪には、ククの位置を把握できる魔法でも付与してもらおうかな」


 術を使えば、ククの位置を知る事など、シシにとっては造作もないが、すぐに発動できるというのは、やはり便利なのだ。
 特に、緊急時には便利なものだからこそ、シシはククを見つけ出す魔法を選んだ。


「分かった。でも、僕を縛るのはやめてね」


「そんなに警戒しなくても、宮殿に縛るつもりはないし、宮殿と冥界では術を使わなくても、ククの居場所はすぐに見つけ出せるよ」


 ククは少し警戒しながらも、過去を思い出したのか、納得した様子で再び指輪作りをする。
 失敗した物は、シシが手を加えてククの飾りにしていく。
 シシが手を加えても、魔法は変わらず付与されていて、別な魔法が付与された物同士を合わせれば、魔法が二つとなり、同じ物であれば魔法の効果が倍になる。
 実験を楽しんでしまっているシシは、使える飾りを増やしていき、自分の飾りも増やしていく。
 だが、あまりにも失敗した物が多かったため、バングルやバングルと指輪を繋げる飾りまで作り終えてしまった。


「クク、これはいいんじゃない?俺は好きだけど」


「でも少し曲がってる」


 ククはオシャレというものを、あまり分かっていなかった。
 そのため、少しでも曲がっていれば、失敗物としていた。
 そこで、シシは服や飾りが載っている本を取り出し、ククに見せる。
 全部が完璧である必要はないのだと教え、少し歪なくらいがちょうど良く、思い出にもなるだろうと教える。
 すると、ククは急にシシが作った飾りを見ていき、曲がっている物や綺麗に整えられた物などを、自分が作った指輪と見比べていく。


「……ちょっと分かった。オシャレ?こういうデザインだと思えば、僕が作った指輪もいい感じ」


「俺はククが作った物なら、どんな物でもいい物だと思うけどね」


「えっ、僕の出したやつで実験して作り変えたのに?」


(こういうところ、ククは容赦がない。まあ、気をつかわれるよりはいいけど)


「ククの術は、調べないといけないから仕方ないんだよ。それに、せっかく作ったんだから、少し手を加えて飾りにした方がいいでしょ」


 シシが飾りにした物をククに見せれば、ククの瞳が輝き、尻尾をブンブンと振って、飾りから目を離さない。
 そんなククの様子に、シシは微笑んで見守り、ククが満足するまで待ち続けた。


「シシ、あのさ……」


 ククは満足したのか、飾りから目を離して自分が作った二つの指輪を握り、なにか言いづらそうに、シシから目を逸らす。


「なんでも言って。ククが言えるまで、ちゃんと待つから」


「あ……うっ、うぅ」


 ククは葛藤している様子だが、そんなククも愛おしいと言わんばかりに、シシは机に肘をつき、ひとりで葛藤しているククを眺める。
 そして、決意したようにククはシシと目を合わせた。
 それに合わせて、シシがククに微笑みかけると、ククの顔は赤く染まり、可愛らしく尻尾を揺らしてフワリと笑った。


(うっ……俺のツガイが可愛すぎる)


 お互い、好きな相手の笑みには弱いようだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

幼馴染は俺のかみさま

BL
主人公と一緒にいること意外全部どうでもいいと思っている無口無愛想幼馴染の世話を焼いてばかりの主人公くんだがしっかり幼馴染に依存して崇拝しているお話し。 ◻︎執着無口幼馴染と世話焼き主人公くん R15は保険です。 「食欲と快楽に流される僕が毎夜幼馴染くんによしよし甘やかされる」と同一世界ですが単品でお読みいただけます。 pixivにも投稿しています。

ヒリスの最後の願い

志子
BL
気付けば小説の中の傲慢な王の子どもに生まれ変わっていた。 どうせ主人公に殺される運命なんだ。少しぐらいわがままを言ってもいいだろ? なぁ?神様よ? BL小説/R-15/流血・暴力・性暴力・欠損表現有 誤字脱字あったらすみません。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

虐げられた王の生まれ変わりと白銀の騎士

ありま氷炎
BL
十四年前、国王アルローはその死に際に、「私を探せ」と言い残す。 国一丸となり、王の生まれ変わりを探すが見つからず、月日は過ぎていく。 王アルローの子の治世は穏やかで、人々はアルローの生まれ変わりを探す事を諦めようとしていた。 そんな中、アルローの生まれ変わりが異世界にいることがわかる。多くの者たちが止める中、騎士団長のタリダスが異世界の扉を潜る。 そこで彼は、アルローの生まれ変わりの少年を見つける。両親に疎まれ、性的虐待すら受けている少年を助け、強引に連れ戻すタリダス。 彼は王の生まれ変わりである少年ユウタに忠誠を誓う。しかし王宮では「王」の帰還に好意的なものは少なかった。 心の傷を癒しながら、ユウタは自身の前世に向き合う。 アルローが残した「私を探せ」の意味はなんだったか。 王宮の陰謀、そして襲い掛かる別の危機。 少年は戸惑いながらも自分の道を見つけていく。

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

僕の大好きな旦那様は後悔する

小町
BL
バッドエンドです! 攻めのことが大好きな受けと政略結婚だから、と割り切り受けの愛を迷惑と感じる攻めのもだもだと、最終的に受けが死ぬことによって段々と攻めが後悔してくるお話です!拙作ですがよろしくお願いします!! 暗い話にするはずが、コメディぽくなってしまいました、、、。

後輩に本命の相手が居るらしいから、セフレをやめようと思う

ななな
BL
「佐野って付き合ってるやつ居るらしいよ。知ってた?」 ある日、椎名は後輩の佐野に付き合ってる相手が居ることを聞いた。 佐野は一番仲が良い後輩で、セフレ関係でもある。 ただ、恋人が出来たなんて聞いてない…。 ワンコ気質な二人のベタ?なすれ違い話です。 あまり悲壮感はないです。 椎名(受)面倒見が良い。人見知りしない。逃げ足が早い。 佐野(攻)年下ワンコ。美形。ヤンデレ気味。 ※途中でR-18シーンが入ります。「※」マークをつけます。

処理中です...