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前編
30夢
しおりを挟む朝日で目が覚めると、父様はまだ寝ていた。
父様の寝顔なんてあんまり見た事なかったけど……本当にカッコいいよね。それに若いし。
僕が父様の髪を触ろうとした時だった。いきなり腕を掴まれ、父様に覆い被さるようになってしまった。
「……父様。起きてるんでしょう」
「……」
父様は未だに目を瞑って応えようとしない。
「父様、離して!早くご飯食べないと!!騎士団にも行かないといけないんだから!起きないなら。父様だけは、浄化見るの禁止にするよ!」
「分かった、分かったから……でもそうだな。ハルからのキスが欲しい。それくらいはいいだろ?」
おはようのチュウをして欲しいって事か。は、恥ずかしいんだけど。
「父様は絶対目を開かないでね!!開いたらしないから!!」
僕が恥ずかしそうにすると、父様は笑いながら「分かった」と言って目を瞑った。
僕は、少し心を落ち着かせると、父様の顔に近づき、軽くキスして顔を離そうとした。すると、頭を押さえられ、またキスをし、舌も入って深いキスをした。頭を押さえたのは当然父様だ。
「ん……ちょ」
「次は、これくらいのキスな」
父様は、ニヤッと笑い、そう言ってきた。
「父様のバカッ!!」
僕は恥ずかしくなり、先に支度をして、リビングへ行った。
「ハル、おはよう」
ジルは爽やかな笑顔で挨拶してきた。しかし、僕は不機嫌と言う全く正反対の挨拶をした。
「……おはようジル」
僕の態度に違和感を感じたジルにどうしたのか聞かれたが、僕は答えなかった。代わりに、後から来た父様が答える。
「私がハルにちょっかい出しただけだ」
「あぁー、成る程……ハルは恥ずかしがり屋だからね」
誰だって恥ずかしいでしょ!!恥ずかしくない方が可笑しい。
「ほら、もうご飯食べないと、冷めるから」
僕はどうしても話を逸らしたかった。
「「はいはい」」
しかし、二人は僕で遊ぶように笑っている。
もういいよ。笑ってればいい。二人が恥ずかしくなる様な事僕だっていつかしてやる。
そして、ご飯を食べ終え、僕達は騎士団へ向かった。
「ハル!!今日も可愛いな」
出迎えてくれたのはイル……ではなく、ディー兄様だった。
「ディー兄様!あれから体は大丈夫??」
「あぁ、僕はそんなに酷くなかったしね」
ディー兄様は、本当に元気そうで、安心した。
「そういえばイルは?今日居ないの?」
「……イル?ハル……兄様はどうした?今まで兄様を付けていただろう」
あ、やばい。ディー兄様の前でイルって言っちゃった。
「私がハルにイルと呼べと言ったんだ。ディーには関係ないでしょ」
すると、僕の背後から声がした。
「イルはそう呼ばれて、僕だけ兄様付けは可笑しいだろ。ハル、僕もディーと呼んでくれ」
「え、でも」
「ハルはお願いを聞いてくれないのか?」
うっ。そう言われると断れない。
「わ、分かったよ……ディー」
僕が小さくディーと呼ぶと、ディーは抱きついてこようとしたが、ジルの手によって止められた。
「ディー……イルも。ハルは私の婚約者だ。軽々しく抱きつくのはやめて貰おうか」
ジル、少し怒ってる?
「ちっ。ハル、僕もハルが好きだったんだよ。だから今度からは、ハルの側室を目指すから覚悟しておいて」
ディーは舌打ちをした後ニヤリと笑った。
あぁ、やっぱりそうなんだ。一層の事イルとディーでくっついてくれないかなー。
「ハル、それは私も思うよ」
ジルは僕の思っている事に対して応えてきた。
「え、なんで分かって……」
「ハル今念話使ったでしょ」
うそっ!無意識に使ってた!?やばいやばい。
「分かってなかったみたいだね。無意識かな?」
「う、うん。多分」
「まあ、念話もそのうち慣れるよ。手始めに、私と念話で時々会話しようか」
「うん。ありがとうジル」
僕はいろいろまだ慣れていかなくてはならないらしい。頑張ろう僕。
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