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前編
26夢
しおりを挟む僕は今騎士団に来ています。そして、僕の目の前にいる二人がとても険悪です……はぁ、どうしたものか。
「イルは行かなくていいよ。私とカーディルや、その部下達がいれば問題ない。一層カーディルだけでもいい。だからイルはここで鍛錬していなよ」
「いいえ、ジル殿下。私は日頃人一倍鍛錬に励んでいるので問題ありません。それに、ジル殿下の馬にわざわざハルを乗せる事はできません。私がハルを乗せますよ」
「いいや、ハルは私の婚約者だ。ハルが私の馬に乗る事は問題ではないよ」
そう、事の始まりは、イルが僕を自分の馬に乗せようとしたのが原因だ。
はぁ、この人達は本当に。僕別に誰でも……そうだっ!!
「二人とも、喧嘩やめてよ。僕はカーディルさんに乗せて貰うから。これも断るなら僕は今日一日中フードをかぶらないよ。いいの?なんならローブも……」
「わ、分かった、ハル。カーディルに乗せてもらって。だからローブもフードも脱がないで。お願いだから」
ジルは焦った様に言ってきた。
「ハル、団長に乗せてもらっていいから。だからそれだけはやめて」
イルも慌てて、了承してくれた。
もう、最初からそんな事で喧嘩しないで。行きと、帰りで分けたらいいじゃんよ。
「今度からは、ちゃんと行きと帰りでどっちが乗せるか決めておいてよ。じゃないと、他の騎士団の人にも迷惑でしょ」
「分かった」
「ごめん、ハル」
二人の声は重なり、態度は正反対だった。ジルは少し不満気で、イルは反省している様だった。
「じゃあ、行こう。カーディルさん、ごめんね。今日だけ行きも帰りもお願いしていい?」
「勿論です。ハルーティア様、前に乗って下さい。私が押さえていますので」
父様やジルは後ろに乗せてくれた為、自分で抱きつくかたちになっていたが、カーディルさんは、僕を前に乗せて、押さえてくれるらしい。なんて紳士なんだ。
「くっ……反応しない奴はいいな」
ジルがボソッとなんか言った。なに?反応って。そんなに悔しいなら、自分も前にも乗せたらいいんじゃ。
僕はカーディルさんに押さえられながら、討伐に向かった。
森に着き馬から降りる。今回の討伐目標は、ゴブリンの集落だ。どうやら大きめの集落がこの奥にあるらしい。
「ゴブリンってどんな奴なの?」
僕は殆どの魔物を知らない。その為どんな奴なのかも分からず、この前みたいに気持ち悪い奴なら、心構えをしておこうと思った。
「んー、人みたいだけど、深緑色で耳は長めの、小さい奴らだよ。」
へーー、そうなのか。なんかもっと気持ち悪いの想像してたから安心だ。
「しかし、ハルをゴブリンなんかの前に出すなんて……父様何を考えているだ。ハル?ゴブリンは汚いし、臭いから絶対、絶っっっ対に魔法でしか攻撃しちゃダメだからね!!」
「う、うん」
臭いの!?なんか臭いのはやだなーー。あ……
「創造、マスク」
僕はマスクを作って、それを付けた。
「ハル、それ何?」
ジルはそれを見ると、やっぱり聞いてきた。
「これは、本当は病気にかかった時とかに、他の人にうつさない様につけたり、病気を貰ったりしない様に、予防したりするものなんだっ!でも今回ゴブリン臭いっていうから、少しでも臭く感じなければいいなって思って作った」
「ハル、それ私にも作ってくれないか?」
やっぱり臭いのは嫌なのだろう、ジルに続いて、イルも作ってくれと言ってきた。
僕は二人のマスクも作ると、二人は僕の付け方を見ながら付けた。
「これはいいね。息苦しさもないのに、嫌なものを吸ってる感じがしない」
ジルは感心した様に言ってきた。
だよね。やっぱり前世の技術は凄いと思う。
「これなら多少匂いも紛れそうだ!ありがとうハル」
イルは僕に向かってマスク越しに微笑んできた。
「しかし……これはハルはずっと付けているべきじゃない?これは顔を隠すにも丁度いい」
ジルは怖い事を言っている。
「そ、そんなずっと付けてたら、肌が荒れちゃうよ!保湿し過ぎちゃうし!それに毎回新しいのに取り替えないと、汚いからだからやめた方が」
「それは確かにダメだね。それに毎回創造するのも疲れるだろうし。仕方ないね」
ジルは残念そうだけど、納得してくれたみたいだった。
「じゃ、じゃあ僕は予知使って場所把握するからちょっと待ってて!」
そう二人に伝えてから、僕は未来予知を使った。
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