異世界で普通に死にたい

翠雲花

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前編

18夢

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  裏口についた僕は、扉が開かれた瞬間言葉を失った。


「ハルどう?気に入った?」


  ジルが声をかけてきて、我に返る。


「う、うん。凄く気に入った。綺麗」


  そう、扉の先には箱庭の様な綺麗な光景が広がっていた。騎士団と城に囲まれ、所々に木が残っている。外の世界から閉ざされた空間だった。


「気に入ってくれたなら良かった。ここなら敷地も広いし、ハルも気兼ねなく遊んだり、魔法の練習をしたり出来るよ」


「ありがとう。国王陛下にもお礼したいな」


「それなら明日にでも行こうか。私が案内するよ」


  そして、僕は家の中に入って僕の部屋に自分の荷物を整えた。


「ベッドはやっぱりこれじゃないとね」


  僕は自分の今まで使ってたベッドを置くと、父様とジルは不思議そうにする。


「なんだ、ハル自分のベッドわざわざ持ってきたのか?」


「え、うん。これじゃないとやっぱりしっくりこなくて」


「しかし、ハルは今日の夜から私の部屋と、ショーンさんの部屋を行ったり来たりするんだよ。自分の部屋で寝ることなんてほとんどないと思うけど?」


  ……たしかにそうでした。


「ハル?もしかして忘れてたとか言わないよね?」


  ジルは微笑みながら言ってきたが、目があきらかに笑っていなかった。


「そ、そんな事ないよ!ただお昼寝の時とかさ、僕一人の時はここに居なきゃいけないでしょ?そういう時に使うんだよ!」


「たしかに、ハルはよく昼寝をしているな」


   と、父様!庇ってくれたの!?……それとも今まで、僕の部屋に忍び込んでたりは……


「へぇ~。また顔に出てるけど、後でじっくり聞くから今はそういう事にしておくよ」


   やばい。これ絶対夜にくるパターンだ。


「ジ、ジルさん?何考えて……」


「そうそう、ハル。荷物整理は終わったみたいだから、使用人を紹介するよ。リビングで待ってて貰ってるから行こうか」


   うっ、その笑顔は怖いです。そして、話を逸らされた。これは夜覚悟しておかないと。


  僕はそのままリビングに連れていかれると、四人の男性がいた。


「まず、なんで女性が居ないかは、面倒な事になるからだ。ショーンさんも美形でハルは可愛くて色気がある。そんなの女性が放っておく訳がない。それに使用人は最小限に抑えたかったからね」


   え、こっちの女の人はかなり肉食系なのか?


「じゃあ、料理長から順番に自己紹介して」


「では、カルト・サージャルです。本日から此方で料理長を務めさせていただきます。よろしくお願い致します」


   カルトさんは結構ガッチリしている。


「私はジル殿下の執事をしています、ローディエ・ターナーと申します。ショーン様、ハルーティア様、お久しぶりですね。これからよろしくお願い致します」


 「ローディエさん、久しぶり!これからは毎日一緒なんだね!よろしくね」


「はい、ハル様はお元気そうでなによりです」


   ローディエさんはニコリと笑った。


  ローディエさんとは、ジルにお城に呼ばれた時に何度か会っていた。僕はローディエさんが大好きで、子供の頃はよく遊び相手をしてもらったり、勉強も教えて貰ったりしていた。


「仲がいいのはいいが、後にしとけ」


  父様、ちょっと嫉妬してる?ローディエさんの方がお父さんっぽいもんね。


「では、私も。本日からショーン様の執事をします、ナーシャ・ウェールズと申します。よろしくお願い致します」


  ナーシャさんはクール系かな?眼鏡も似合っていて、theクールと言った感じだ。


「私で最後ですね。私はウィル・ジスターと申します。本日からハルーティア様の執事になります。ハル様、よろしくお願い致しますね」


  おっつ。ちょっと軽いぞ?案の定、二人の顔が見れない位にはご機嫌斜めだ。


「ウィルさん、よろしくお願いします」


「私の事はウィルと呼んで下さい。私もハル様とお呼び致しますので」


「は、はぃ」


  それ以上はやめてーー!二人が怖いから。


「ウィルはあまりハルの身の回りはやらなくていい。私がやる」


   ジルは僕の執事ですか!?てかそれじゃ執事いらないよね!?それはあんまりなんじゃ。


「そうですか。では私はハル様のお話し相手を」


「いや、それもいいぞ。私もいるからな」


   父様、貴方は仕事があるでしょうが。


「そうですね……では私は常にハル様の護衛をします。こう見えて私はそこそこ強いと思いますので」


「「いや、それも……」」


「父様!ジル!執事に嫉妬しないで!!ウィルが可哀想だよ。ウィル?普通に執事の仕事していいからね?」


「主であるハル様がそう言うのでしたら、私はハル様に従います」


「「チッ」」


   え、この二人今舌打ちした?どんだけ嫌なの!!そんなに嫌なら僕に執事を付けなければ良かったじゃんか。


   そうして、自己紹介は済み夜ご飯を食べる事にした。

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