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前編
8夢
しおりを挟むお披露目パーティーから七年後。僕は十歳になっていた。だが、学校には行けていない。通常この世界では十歳から剣術学校か魔法学校に行けるのだが、僕は家族全員に反対された。
理由は、僕の魔力とスキル達だ。僕は七年で魔力量がかなり増えて、大人の平均魔力をはるかに超えていた。その為、魔法学校に通うことも反対され、かと言って剣術学校なんかは以ての外だという。
そして、一番の理由は僕が目立って狙われてしまうからだそうだ。どうしたらそんな思考に至るのだろうか。僕は男だ。
「母様。暇だよ。僕も学校に行きたい」
「ダメよ。それは前にも説明したでしょう?それに騎士団になら父様がいる時に行ってもいいと言われたでしょ?父様は今日一度帰ってくると言ってたわ。その時に連れて行ってもらって」
「僕はもう一人で行けるよ。」
「ダメよ!それだけは絶対にダメ」
そう、僕は未だに外に一人で出れないのだ。家族が言うには十歳になって色気が出たとかなんとか言ってた。そんなの僕には知ったこっちゃない。
「分かったよ。父様はそろそろ帰ってくる?」
「そうね、お昼頃と言っていたからもうすぐ……あら?帰ってきたみたいね!」
母様がそう言うと、本当に父様が帰ってきた。母様はどうしていつも父様が帰ってくるのが分かるのかが謎だ。
「ハルー!帰ったぞー!」
そう言って父様は僕に抱きついてきた。
「うぶっ。と、父様。苦じい」
「ああ、すまんすまん。それよりハル!これから騎士団に行かないか?」
父様から言ってくるなんて珍しい。何かあるのか?
「行きたいけど……父様何か隠してる?」
僕はジト目で父様を見るとあからさまに目線を逸らした。
「……いや、なにも。それより行きたいなら行こう!ローブを着てきなさい!」
「はい」
僕は成長しても相変わらず外ではローブを着ていた。何故か成長していくうちに、昔より酷くなっていくこの体質。普通は逆だろうに。流石に今では僕自身も常に痛覚耐性と治癒魔法を発動しないといけない為、ローブを着ないと出歩けない。そしてあれ程嫌がってたフードも必需品になっていた。
支度し終えると、父様に連れられて騎士団へ向かった。
「父様、何を隠してるのか分からないけど、僕が行かないといけないの?」
「ハルが行かないと私が恨まれる。あいつには適わんからな」
あぁ、なんとなく分かった。きっとあの人だろう。
そして、騎士団に着くと案の定予想通りの人が出迎えた。
「ハル。久しぶりだね。会いたかったよ」
そう、この人は第一王子のジルだ。どうやらお披露目パーティー以来、僕を激愛している様だ。密かに、父様にも僕が一日、何をしていたかなど、細かく聞いていたりするらしい。まあ、いわゆるストーカーだ。
「お久しぶりです、ジル王子」
「だからハル、何度も言ってるだろ?ジルと呼べと。それに敬語も要らない。私はハルとは特別な関係でいたい」
「いや、しかし」
「駄目だ!それ以上断るなら私はハルに何をするか分からないよ?」
ジル王子は微笑んで言ってはいるが、確実に目が笑っていない。
「わ、分かったよ。だから何もしないで」
「それでいい。それと、ジルと呼び捨てで呼んでくれ」
「うっ……ジ、ジル」
僕がそう呼ぶと、ジルは素晴らしいイケメンスマイルをおくってきた。
イケメンは何しても許されるからいいよなぁー。
「それよりジル。僕を呼んだのは貴方ですか?」
「敬語」
「うっ。僕を呼んだのはジルなの?」
「そうだよ。ハルに会いたかったからね」
もうめんどくさい。敬語の方が楽なんだけど。
「そ、そうなんだ」
「ハルは私に会いたくなかった?」
「いやいや、僕も会いたかったよ……」
今のはちょっと嘘だってバレたかなー。
「そっか。良かったよ。それよりハル?いつまでフードを取っているの?フードかぶって」
え?ダメなの?だってもう室内だけど。
「なんで?フードはもうかぶらなくても大丈夫……じゃないですね、はい。かぶります」
そんなすっごい真顔で不機嫌な魔力前回にされたら、流石に僕だって抵抗はしない。
「お利口だ」
ジルは笑ってはいるが、まだ魔力が漏れていた。
「ジル?もうその魔力出すのやめて?僕フードかぶったでしょ?」
「あぁ、まだ漏れていたか。流石にハルは鋭いな」
そう言ってジルは魔力を抑えて、僕はほっとした。そういえば父様どこに行ったんだ?
「ジル?父様知らない?さっきまで一緒にいたはずなんだけど」
「??ああ、ショーンさんはイルとディーの所へ行ったんじゃないかな?今日一時報告しに来るらしいよ。ハルも行くか?」
「イル兄様とディー兄様今日は騎士団にいるんだね!!行きたい!」
そう、イル兄様とディー兄様は学校卒業後、騎士団に入った。ここ数日は魔物討伐に行っていた為家でも会えなく、久しぶりに会うのだ。
「はあ。まだイルとディーには適わないか」
ジルは小さくため息をついた。僕に聞こえてますよー。兄様なんだからジルより兄様の方が大事なのは当たり前だろうに。
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