異世界で普通に死にたい

翠雲花

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前編

1夢

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  ………ここどこ?


  僕は、あの後寝ずに学校を出た。だがそれが間違いだった。何故なら今僕は、日本かも分からない森にいるのだから。


  森?学校の近くに森なんて一つもなかった。それに、まず日本じゃない。どうしてこんな所に。……ザシュッ。


  次の瞬間僕は痛みを感じ、その場に倒れた。


『……きて、…さい。……起きて下さい!』


  っ!!何!?え?ここは。


『やっと起きてくれました!!良かったです』


   目の前には金髪で金色の瞳の白い服を着た青年がいた。


  ……え?何この痛い感じの見た目の人。


『……聞こえてるんだけど』


  痛い格好の青年は引き攣った笑顔で言ってきた。今確かに聞こえる、と。


  なんで聞こえんの!てか感想を言ったまでで、その他の感想はないよ。強いていえばここどこ?っ感じで。


『だーかーらー。聞こえてるから、もうそれ言わないで!!それと、宮間みやま葉瑠はる君。君は僕が殺させて貰った。てか、殺したというより、君が悪いんだよ?あの時寝ないで帰っちゃうんだもん』


   だもんって。しかも、言葉砕けてるし。あんたは誰なんだよ!僕を殺したとか言っておいて僕のせいにするとか。


『そうだね、まず私は今君が行こうとしている世界の神だ』


   ……神様なのは何となく分かるって。聞いてるのは名前だ!


『……そ、それは聞かないで』


   青年は目を逸らし、小声でボソボソ言っている。


   男ならちゃんと名乗りなよ。僕の名前は知ってるくせに。しかも僕を殺したなら僕は知る権利があると思う。


『……ン』


  え?なに?


『……ァンフ……ン』


   ねー。僕男の喘ぎ声とか聞きたくないんだけど。恥ずかしそうにしないでよ。


『ファンファンだ!!喘いでる訳じゃない!!』


  ファンファンと名乗った青年は、顔を赤くして訂正した。


  なんだ、ちゃんと言えるじゃないか。別に僕はそれ位で笑わないよ。それに、名前があるなら大事にした方がいい。


『君にそれを言われるとは思わなかったよ。ありがとう』


   お礼はいいから、話を続けて欲しい。


『……はぁ、分かった。まず私が君を殺したのは、君があの時寝なかったのが原因だ』


  あの時って。学校に帰った時か。僕はちゃんと体育の前に寝たし、学校を出たのは体育の時間だ。


『それは、違う。本当は、体育が終わった頃また寝る。そして地震がおき、割れた地面に落ちていく夢を見て回避出来ないと判断し、それ通りになる予定だった。その時私は、ここに直接君を連れてくる予定だったのに』


   いや、だったのにって。予定なんて立てるからだよ。


『……私は、君をこちらの世界に来させたかったんだ。それなのに。君は起きるとすぐに、学校を出ていってしまった。だから、急遽地面に小さな割れ目を作ってこちらの世界に一度行って貰って、そこを私がザシュッと!!そして、君をここに連れてきた』


    ……ザシュッとじゃないよ!僕の体は今どうなってるのさ。しかも、結局どっちにしても、殺すのお前じゃんか。


『いやいや、ちゃんと予定通りだったら死なないでここに来れたんだよ!でも君はもう死んじゃって、体は消えたからこっちの世界で転生しないといけない』


   消えたの!?僕の体消えちゃったの!?ちゃんと埋葬もされないまま?なんか嫌だなー。


『それは大丈夫!浄化されたって事だから!』


  そうなの?ならいいかな。で?僕はこれから転生ってどうするの?


『あ、そうそう。転生してもらう先はこちらの世界。いわゆる異世界だ!ちなみに、君のパラレルワールド渡りはちゃんと使えるよ!異世界にもパラレルワールドはあるからね。』


   え。僕それは嫌だ。あれはもう嫌だ。


『それは無理!君の個性みたいなものだから!でも安心して、転生させる時に予知する感じで使えるようにして置くから、今までみたいに、わざわざパラレルワールドに渡って痛い思いをする事はないよ!ただ、普通に寝るとあっちに引き込まれるから、気を引き締めて寝るように』


   えーー。結局安心して寝れないのか。でも痛い思いしないで済むならいいか。


『そうだよー!今までよりは断然いいと思う。それと、これは固有スキルとして、君に付けておくよ。他に欲しいスキルとか転生条件とかない?』


  そうだなー。人並でいいよ。転生条件も、困らない環境ならなんでもいい。あと、僕は男がいい。


『分かった!僕が好きにしていいんだね!任せて!』


  いや、それは言ってな……


『じゃあ、君に転生してもらうよ!頑張ってね!楽しい生活が君を待ってるよ!』


   ファンファンは、無理矢理転生させた。

  
  僕の話を聞けーーー!!!


  そこで僕の意識は途絶えた。



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