異世界で普通に死にたい

翠雲花

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後編

26夢

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63年後


 「ファンファン!!ジルは!!」


   白い宮殿の中、少しだけ大人びたが、それ以降は変わらず、だいたい25歳くらいだろうか、成長が止まった僕は、大きな白い羽を生やし、ファンファンの元へ走った。


「あぁ、ハル!!走ったら危ない!!」

  ファンファンも外見は変わらず、僕に過保護なとこも変わらない。

   そんなファンファンは慌てて僕の元に手を広げてきた……が


「……っ!!!」

   ファンファンの後ろから見えた。あの別れた時と全く変わらない姿でその人は立っていた。

「ハル?」

  僕は、少し成長しているから不安そうだ。

「ジル!!僕だよ!!ハルだよ!!」


「ッ!!ハル!!!」


  僕は、更に早く走り、手を広げて邪魔(心配)しているファンファンを素通りし、ジルの胸へ飛び込んだ。


「ジルジル!!」

「ハル、少し成長したね。でも、相変わらず小柄で可愛い。ハル……会いたかった。」

  あ、そうだ!!

「ジル!!」

  僕は少し身体を離し、不思議そうな顔をしたジルを見た。

「ジル!……おかえりなさい。」

  その瞬間、優しい笑顔の、あの時と変わらないジルの顔になった。

「あぁ、ただいまハル。」

  すると、ジルの背中からバサッと僕より少し大きめの綺麗な白い羽が生えた。


  ジルは僕と同じ天使になった。





「あの~、幸せなとこ悪いんだどさ~。」

「居たのか。邪魔するな。」

   ジルは冷たくファンファンに言った。懐かしい。

「ちょ!!私の方が階級上なんだけど!?……はぁ、それより、もっといいお知らせ。」

  ッ!!もしかして!!


「そう、ハルが思ってる事は合ってると思うよ。」

   ちなみに、ファンファンは僕が天使になってからは、心が読めなくなったらしい。あれは、人間に対してのみだったみたいだ。


「ジル!!!多分間違ってなかったら、創造主様からプレゼントが届いたよ!!」

   ジルは不思議そうな顔をし、僕はジルから離れて、ファンファンから種を貰って、それを飲み込んだ。


  振り返り、ニッと笑ってジルの元へ駆け寄る。


「ジル、ジルがこっちに来れるって確定した後に、お祝いで何かあげるって、創造主様から言われてたんだ!!勝手に決めちゃってごめんね。でも、喜んでくれると思う!!今僕が飲んだ種、天使でも子供を作れる種だよ。」

  ジルにそう伝えると、ジルは固まり、涙を流した。


「ッ!!ジル!?嫌だった!?」

「嫌な訳ない。嬉しい。ありがとうハル。俺の子を生んでくれるか?」

「勿論!!あ、でもジルは2人目になるのかな?」

  そう、ジルは地上で子供がいた。


「見てたのか。でも、あの子は血が繋がってない。俺の子でも、養子だったから……血の繋がりが欲しい。ハルとの子が欲しい。」


「知ってる、それでもジルが父親には変わらないし、僕はもうその時には居なかったけど、あの子は僕の子でもあるよ。可愛い子だよ。」


   僕はあの子が可愛くて大好きだ。お母様と呼んでくれるあの子が。


「……ハル。何か隠してるだろ。」


「か、隠してなッ……」

「ハルはあの子に毎日念話してたもんね~!!」

「ファンファン!?バラさな……」

 僕はファンファンに振り向いた瞬間、後ろからヒヤッと悪寒がした。振り返ると、ジルはあの黒い笑み……な、ナツカシイナー。

「ハルの部屋は何処かな?」

  え、えーと。

「ハルとジルは特別に同室なんだから、結局バレるよ~!!」

  ファンファン!?!?ちょ、何それ!!聞いてなっ……


「ハル、覚悟してね。種付けしてあげる。」


  僕は、ジルにお姫様抱っこをされ、部屋へ行く事になってしまった。














   そのまた数年後……



「ルシフ~??何処~?」

「母様!!」


   抱きついてきた、黒髪黒目のチョコンと白い羽の生えた小さな男の子。


「ルシフ、今日はお仕事休みだから、父様と遊ぼっか!!」

「父様!!本当!?」

「ルシフ、母様は俺のだぞ。それに遊んでやるって言ってるだろ?」

   ジルは喜んでいるルシフを不機嫌そうに僕から引き離した。

「ジル、大人気ない。」

「し、仕方ないだろ!!ハルは俺のだ。」

「はぁ…後でジルとも遊んであげるから、今はルシフとも遊んであげよ?」

   ジルはニヤッと笑うとルシフを抱き、高い高いをした。ルシフもキャアキャアと楽しそうに笑っている。



  ありがとう、僕達のところに生まれてくれて。約束だったもんね……


「ーーーーそしたら……また……遊んでね。」


  ……お兄ちゃん。



   お兄ちゃんは、僕に浄化されて、ルシファーだった記憶も何もかも消滅はしたけど、空に消えていった粒子は、新たな自我をもち、ルシファーは転生した。僕達の子供として。それを教えてくれたのは創造主様だった。創造主様は何も言わなかったけど、きっと創造主様がルシファー……お兄ちゃんを僕達の子供にしてくれたんだと思ってる。


   ありがとうございます。



「ハル!!」

「母様!!」


   可愛い子と愛しい人の僕を呼ぶ声がした。

「2人共ずるいな~!!仲間外れは母様悲しいよ?」

「母様も一緒~!!」

  そう言って、ルシフはジルと繋いでいない逆の手で僕の手を繋いできた。

  

   あぁ、幸せだな~。これからずっとずっとこの2人と共に世界を支えていこう。永遠に……


「ジル、ルシフ、愛してるよ。」


   この幸せがずっと続きますように。


  ーーENDーー

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