異世界で普通に死にたい

翠雲花

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後編

21夢 (ジル視点)

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「お前を逃がしてなんの得がある?お前は、魔王のもとに帰るだけだろう。」

   魔王の眷属と言う事は、こいつも強い筈だ。確実に俺よりは強いだろう。

「どうだろうね~、俺はサタン様の眷属だけど、サタン様は今まで眷属をつくらず、ハルを連れ戻す為だけに、俺を眷属にしたんだよね~。」


   ルイは、イコール戻った時点で邪魔な存在として殺される、と言っている様なものであり、それをヘラヘラとした表情で話していた。

   嘘か本当か分からないが、遠回しに"殺されるから魔王のもとには帰らない"と、言っているんだろう。


  すると神が、目の前に居るにも関わらず、念話を使ってきた。

「恐らくだけど、こいつを置いていった時点で、捨て駒だというのは分かる。あわよくば、こいつに君が殺されれば良いかな程度だと思うよ。」

  じゃあ、なんだ?こいつを逃がすという事か?

「そうだよ。今は一つでも多くの情報が欲しいからね。……君、ハルが居なくなってから全く冷静じゃないよ。少しは落ち着いた方がいい。きっとルシファーはハルを殺す事はできないからね。」


  ……確かにそうだ。今の俺は冷静な判断が出来ていない。

  今まで、冷静に行動できたのは、ハルが居たからだ。ハルが居ないというだけで、こんなにも脆くなってしまうんだな。……それ程俺には、ハルが必要だし、大切な存在だ。だから、今冷静にならなくてどうする!?

   クソッ。まさか、この神に助けられるとは。


「はぁ、やっとマトモな顔になったね。どうして私が君を助けなくてはいけないんだ。」

    

「ねえ~、話はついた??どうするの~??」

   ルイは退屈そうにしながら、聞いてきた。


「あぁ…ルイ、お前の事は見逃す。その代わり知っている事を全て話せ。」





   そうして俺達は、ルイからハルとルシファーの関係を聞かされた。






「まさか、ハルが既に死んでいたなんてね。しかし、私はこちらに連れてくる時にハルを殺したはずなんだけど?」

   そうだ、こいつはハルを殺したんだったな。確かに納得いかないな。

「あ!それはね~、サタン様がにハルの世界を作る時に、ハルの身体を作ったからだね~。じゃないと、作り物の世界の住人だとしても、ハルの姿が、周りには見えないしね~。だから、ハルの夢とかも全部サタン様が弄れる訳。でも、こっちに来てからは、身体が別のものになっちゃったからさ~、魂だけを引きずり込もうとしてたみたい~。」


  では、なんだ?呪いではなく、ハルの身体をしたってことか!?


「みたいだね。それに、魔界にって事は、堕天した時にハルを一緒に魔界に連れていったことになる。どうりで私がハルの居る世界に足を運ぶことが出来なかった訳だ。」

「??じゃあどうして、お前はハルをこっちに連れて来ることが出来たんだ?」

「それは、何度かパラレルワールドでハルを見かけた時に、ハルの行動をみれるようマーキングしておいたからね。」

   マーキングって、ハルはお前のではないからな?

「今はね。」


 「2人でバチバチしないでよ~。もう俺は逃げてもいいかな~?話すこは話したし~。」


  そう呑気な声が聞こえた時だった。

「ッ!!」

「はあ~、やっぱり……こう、なっ……」


   ルイはドス黒い炎に包まれ、その場には灰だけが残った。


「この魔力……ルシファーだ。こいつを殺したみたいだね。と言うより、多分全部話したら魔法が発動する様にしていたみたいだ。こいつもそれを分かってたみたいだけど。」


   ルイのやつは…これを知っていて話したのか?なんで……。


「それは、彼にしか分からない事だ。それより、ハルの居場所は恐らく魔界だよ。」


   ……そうだな。………。

「魔界にはどうやって行くんだ?」


「私がこちらに来る時と同様に魔界に行く。その為には、君に強力な結界を自身に張ってもらわないといけない。少しでも緩めたら即死するから覚悟して。」


   俺は、ルイが目の前で死んだ事が多少なりともショックだった。

   しかし、今はハルを最優先にすべきだと、顔を叩いて気を引き締め、頷いた。




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