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なんでこの世の中はこんなにも残酷なのか…
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俺は昔から特殊だった。
最上霧矢という、俺という人物は、昔から誰かとも違った気がした。
俺には誰にも見えない物が見えていた。
それは、黒い肌をして、白い目にスーツ姿を着て、大鎌を持った人物のような人のような怪物に近い物。
俺はその正体がなんだか知っているそれは…
死神だ。
「こんばんは。」
俺以外に、基本、誰も居ない、病室。
目の前には足元のはっきりとした形の作られていない怪物。
背中には鎌を持っている。
そいつは、キョロキョロと、あたりを見回すと、自身を指さした。
「そう。お前。」
すると、黒い肌のその化け物は少しだけ微笑した。
「私が見えるのですか?」
はっきりと、そう言う。
「ああ。俺は昔から死神のことが見えてね。」
「死神…それは、あなた方の言葉ですね。」
「ああ。まあ、同じようなもんでしょ?あなたたち、死期なんですから。」
俺は昔から、死期が見えていた。
そいつが見えると、その近くにいる人は近ごろ死ぬ。
「私のことは嫌いじゃないのではないのですか?」
「え?まあ、わかっていたことだし…いつか近直死ぬなってのはなんとなくわかってたし…」
「そうなのですか?何故?」
俺は布団の上で、一息深く呼吸をする。
「俺は、昔からちょっとした病気で。」
「病気…ですか?」
「まあな。その所為で、いっつも何かと苦しんでるんだ。まあ、これでおさらばって感じだけど…」
死神は、顎を2本の指でなぞりながら、話を聞いていた。
まるで関心…という風な表情をしているその死神。
「そういえば、俺の寿命ってあとどれくらいか分かるか?」
「寿命ですか?それはちょっと…」
死神は苦笑いすると指をクロスして、バツを作った。
まあ、無理な話か…
「そう言えば、俺以外に見えたって言ってた人間て居る?」
「あなた以外に…?うーん…」
するとその死神は腕を組んで考え込んだ。
たまに頭を掻いたりして、死神は考え込んでいた。
俺は答えが出るのを待っていたが、ようやく、返答が返ってくる。
「多分無いですね…この方、生まれてから500年は死神やっていますけど、今までに見たことは無いですね。そういう風な話も聞かないし…あなたが初めてなのでは?」
「ふーん…そうか…」
俺は、一度、ベットに体重を預ける。
もう入院してから2ヶ月。もうすぐでリハビリも終わると聞いたし…
「もうちょっと生きてみてもよかったのになー…」
まあ、この病気になってから、医者に「覚悟してください」と言われた時からすでにわかってはいたけど…
「俺ってつくずく不運だな…」
「そうでしょうか…?もうすぐ死期が近いのなら、今やっておくべきことを、やっておけば良いのでは無いでしょうか?」
「え?やっておくべきこと?」
「例えば…ほら、遺書を書くとか…でしょうか?若いまま死んでしまうのでは、遺書を残せる人はそうそう居ないのでは?」
「そう…だな…そうだな!!!書くか!!!遺書!!」
そう思い付いた俺は止まらない。
紙とペンを用意し、俺はその用意した紙にインクを走らせた。
__________________________________________________
「よし…これでヒーローたちは呼んだ…あとは待つだけだ…」
ベリアルが持っていたスマホをその場に投げつける。
もう不必要という意味なのだろうか、それとも、戦闘に邪魔になる…ということなのだろうか…
どっちでも良い。
そんなことはどっちでも良いんだ…
今日も曇り空の起眞市の街。
ビル群の真ん中に俺とカントウとベリアルは立っていた。
車通りの多かったこの場所はあっという間に火に包まれており、この全ての元凶が俺たち、RIだ。
そこら中には道端に倒れた人たち。
別に死んだわけではない。
気絶しているだけ。
ヒーローを呼び込むための大事な餌だ。
「RIとしてちゃんと名前を使ったら、本当にシャイニーが来るの…?」
「ああ。確実に来る。RIの名前は非公開にされている。だからこそ、その名前を知っているのは、RIという道の組織の関係者という憶測ができるわけだ。本人たちじゃなくても、その関係者とならば、秩序保安委員会の奴らは、飛んでかかって来るさ。」
自信満々に俺は解説するが、でも、関係者だからと言って、それが本当にシャイニーが来るとも絶対とはどうしても言えない…
でも、その時は…
「殺すだけだ…」
「なんか言ったか…?」
ベリアルが、俺の顔を見ながら聞くが、俺は、「いや、なんでもない。」と誤魔化した。
と、すると、空に何かの勢いよく放たれる何かの音が響き渡る。
爆発に近いようで少し遠いような、火を吐くような音。
「どうやら、来たみたいだな…」
空から飛んできたのは、マントを身に包み、そして緑色のゴーグルと、金属のパワードスーツを着込んだ男だった。
「しゃ、シャイニー!!!!!!!!」
ベリアルの頭が一気に赤くなる。
当然だ。
最愛の人を殺されて、冷静になれない奴がどこにいる。
そして、冷静になれないのは、俺も同じだった。
「シャイニー…!!!!!!」
「現れたか!!!!!」
「いや~暑いね~君たちの熱がひしひしと伝わってくるよ~で?それで、俺を殺すつもり?やめておいた方が良いよ。お前…弱いんでしょ?」
「それは…始まらねぇとわからねぇな!!!!!!!」
ベリアルは右手をカマキリのような形に変形させると、足にエネルギーを溜めて、一気に爆発させるように解放する。
閃光のように迸るベリアルは切断こそは出来なかったが、シャイニーを空中へと吹っ飛ばした。
「おおっと!!!」
だが、それでも余裕そうに、空中で浮いている。
「何!?」
「まあまあ。あのガキよりはまだマシだな。」
「テメェ!!!!!!!!」
するとベリアルが、鎌を縦に回しながら空中へと飛び出し、そしてその回転力で、ベリアルを地面へとはたき落とす。
ベリアルは、足を地面に刺して、伸ばした足を縮ませて地面へと着地。
横に鎌を振り、シャイニーを切り裂こうと刃を走らせた。
「まあまあだね。」
しかし、シャイニーはベリアルの鎌を腕を使って止めた。
ノールックで防いだベリアルの攻撃。
その衝撃が地面に伝わり、コンクリートにヒビが入った。
「な…!!!く、クソが!!!!!!」
ベリアルは、そこから何回も鎌をぶつけるが、全て腕で受け止められる。
「最近の怪獣とか怪人も、レベルは上がったけど…まだ俺に届くほどじゃないな…」
「クソ!!!!!クソ!!!!!!!!」
そして、シャイニーは腕でベリアルの腕から生えた鎌を受け止めると、それを弾き返し、防御も何も無いガラ空きの腹に拳を叩き込む。
「ぐはぁ!!!!!!!!!」
拳を叩き込まれたベリアルは、少しだけ吹っ飛ばされると、膝を地面に突いた。
「お、お前…!!!!!!」
「どうした?もう立てないか?」
そう言いながらシャイニーは、ベリアルに近ずく。
「ベルアル!!!!!」
「ほら、隙だらけだぞ。」
そうい言いながら、シャイニーはベリアルの頭に中段蹴りを入れると、ベリアルは、そこから3mほど吹っ飛ばされる。
「ベリアル!!!!!お、俺もう…行くしか…」
俺はそう言いながら、ベリアルの元へ向かおうとするカントウの方を掴み、引き止める。
そして、何も言わずに首を振る。
「俺だってあいつを殴ってやりたいよ…でも、それを一番思っていたのは、あいつだから…ベリアルだから…これはあいつの決闘なんだ…」
するとカントウは、何も言わずにベリアルの方向に視線を向けた。
「はぁ…はぁ…シャイニー…お前は…!!!本当に正義なのかよ!!!!!!」
「はぁ?どういうことだ?」
「俺の仲間を…全て殺して………なんで…!!なんでお前が正義なんだよ!!!!!」
ベリアル。
その正体は、4年前に地球へと親睦のためにやって来た異星人だ。
ベリアルはその異星の王子で、宇宙船に乗り、地球にやってきた。
そして、ベリアルとあと何人かの従者を従えて、小型の探査機に乗り、山の頂上に着陸。
そして、その瞬間、上空に待機していた宇宙船が、秩序保安員会によって破壊。
ベリアルの部下、約20万が死亡。
そして地上に降り立ったベリアルたちは、他のヒーローによって襲われ、部下がヒーローたちを足止めさせている間に、ベリアルだけは逃げ、そして部下はヒーローたちによって皆殺しにされた。
そして、弱ったところをライリーが拾ってきて、そしてRIの仲間入りをしたというわけだ。
しかし、そのライリーも今となっては目の前のシャイニーによって殺されている。
本当に、秩序保安委員会はベリアルの全てを奪っている。
「お前らだけは…!!!!お前らだけはぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
そして、その感情によって爆発するベリアルの能力。
変異が、起きる。
「なんだあれ」
シャイニーは余裕の表情でそうぼやくと、両手を前に構えた。
ニヤリとしながら呟くシャイニー。
次の瞬間にはビルに叩きつけられていた。
そして、その後に何が起きたのか、わからないような表情で、シャイニーはその場を見渡した。
「あ…あ…あ…」
信じられないという様な顔で声を震わせる。
「俺は…!!!!!ライリーは!!!!!!!」
そして次の瞬間、ライリーの足元が弾けるように吹き飛び、砂埃を一斉に舞わせる。
ドオオオオオオオン!!!!!!!!
そして次の瞬間、轟音が鳴り響いた。
ビルの方向には、ビルに埋もれたシャイニー。
それに向かって刃を振るうベリアル。
そして、その刃を剣で受け止めるスーツを纏った不審者の姿があった。
だが、世間一般的にあれを不審者と言う者は誰も居ない。
なぜならあいつは…
あのヒーローは…
「別に止めなくてもよかったのにな~。マグプル」
「まさか、カウンター狙いだったか?」
シャイニーはコクリと頷く。
「さてと。それじゃあ、殺しますか。」
そして刹那。
シャイニーはベリアルに拳を叩き込んだ。
しかし、ベリアルはその拳を止める。
そして、回転後ろ蹴り。
後頭部に当たりそうになったところを、シャイニーは腕で止めると、周囲を風圧で吹き飛ばす。
しかし、マグプルだけはその場に直立したままだ。
シャイニーはそこに生まれた隙を見逃さず、すぐに打ち込んだ腕を引っ込め、右足で、ベリアルの足元を振り払う。
「ぐあ!?」
視線がぐらっと揺れたベリアルの頭に向かって放たれる大砲のようなパンチ。
地面のコンクリを砕き、そして衝撃を伝わらせる。
「くっ!!!!!!」
ベリアルは馬乗りのような体制になってしまったので、起き上がるのと同時に両足をシャイニーの胸に叩きつける。
シャイニーは花火のように空中に放り出された。
「ほほう…やるじゃねぇか。」
そしてマグプルがそう言いながら、身構える。
すると、空から流星のようにシャイニーが降ってきて、あたりに衝撃が迸る。
「お前の出る幕は今日はねぇぜ。」
そう言いつつ、目元のゴーグルを光らせて、ビームを放った。
ビームは、あたり一帯を巻き込みつつ、ベリアルに直撃する。
「っああ!!!!」
腕が焼け焦げるように黒くなったベリアルは、自分の腕から触手のようなカニの足のような物を出すと、それを振りかざした。
先の尖った爪のようなそれは、シャイニーの腕によって一度、止められる。
「ぐうう!!!!」
「こんなの、弱者のすることでしか無いように思えるのは俺だけか?」
そう言いながら、シャイニーは握ってい爪の生えた腕を取り払い、そして、ガラ空きになった鳩尾に向かって、拳をまっすぐ走らせた。
そして、見事、鳩尾にその拳が叩き込まれると、あたりに風を撒き散らしながら、ベリアルは大きく吹っ飛ぶ。
「ぐぅぅ!!!!!」
獣のように理性を失った目付きを向けるベリアル。
それに呆れたように、はあとため息を吐き、「これまでか…面白くねーやつ」と言葉を漏らしながら、シャイニーは右腕に漆黒の雷を纏わせた。
「あれは!!!!」
まずい、あれは!!!!!!
俺は、慌ててビルの頂上から飛び出した。
あれはやばい!!!!!
あれは…!!!!!
「放射線556を纏ったパワードスーツ。これを食らえば、一溜りもないだろうな。」
「くがあああ!!!!!!!」
鳩尾を押さえ、片手で体の上半身を支えるようにして蹲るベリアルが言葉にならないうめき声兼、憎悪の声を吐き捨てる。
「ま、まて!!!!!」
「これで終わりだ。」
そう言いながら、助走をつけるようにして走り始めるシャイニー。
そして、シャイニーは空中に飛び出、そして、ベリアルに向かって拳を降りおろ___
「やめて!!!!!!!」
と、次の瞬間、シャイニーの前を赤い光線のようなものが、通りかかり、シャイニーはベリアルから距離を取るようにして。
今の赤い光の線は…!!!!
「ん?君…」
シャイニーが、光線の飛んできた方向を見る。
そこには、ピンク色のドレスを見にまとい、そして、魔法のステッキを頭の前に掲げる一人の女子高校生が居た。
そいつには見覚えがあった。
「え、死刑執行人!!!!!」
「しゃ、シャイニーさん!!!!!その人は、誰も殺していません!!!!!」
「人?こいつは人じゃない。その時点で、駆除しなければいけないことはわかるだろ?なぜお前は怪物の仲間になる?」
そして、奏音がシャイニーと喋っている間、シャイニーとベリアルの間に俺とカントウが横入りした。
すると、奏音が驚いた様子で、「ユミーさん!?」と瞼を広げた。
「………」
「ユミー?お前…ユミーって名前なのか?はぁ~ん」
何かを理解したのか、パチンと指を鳴らす。
だが、そんな中で、ベリアルの腕が変化した刃がシャイニーに飛びかかった。
「ッ!!」
そして、次の瞬間、その漆黒を纏った拳を振り下ろしたが、ベリアルはギリギリのとこで、回避する。
「まだ戦いは終わってないんだ。そこの魔法少女ちゃんも、さっさと帰んな。ここは大人の場だよ。」
マグプルがそう言いながら、手を縦に振ると、奏音は握った拳をもっと強く握りながら、言う。
「でも…目の前の理不尽を見逃すわけにはいかないです!!!!」
奏音はそういうと、敵であるはずの俺らの目を真っ直ぐと見た。
まるで、信じています!とでも訴えかけるようにその瞳は純粋な光を帯びていた。
「だから!!!ここでは引けない!!!!」
「はぁ…全く…これだから…マグプル…ちょっとこいつの相手をしてくれないか?」
そう言うと、シャイニーはポキポキと腕を鳴らした。
「まあ、所詮は魔法少女だし。さてと、正義というものをしっかり理解してもらわないとね。」
物凄い威圧を放ちながら、近づいてくるシャイニー。
奏音はシャイニーに魔法のステッキを掲げているだけで、撃とうとはしない。
「くっそ…!!!!」
「ユミー!?」
俺はそう呟いて、カントウを置いて、奏音の所へと向かった。
そして、奏音を片手で抱える。
「え!?ゆ、ユミーさん!?」
「逃げるぞ!!!!お前が死んだらVが悲しむからな!!!!」
俺はそう奏音に告げながら、ビルとビルの間を駆け抜ける。
最上霧矢という、俺という人物は、昔から誰かとも違った気がした。
俺には誰にも見えない物が見えていた。
それは、黒い肌をして、白い目にスーツ姿を着て、大鎌を持った人物のような人のような怪物に近い物。
俺はその正体がなんだか知っているそれは…
死神だ。
「こんばんは。」
俺以外に、基本、誰も居ない、病室。
目の前には足元のはっきりとした形の作られていない怪物。
背中には鎌を持っている。
そいつは、キョロキョロと、あたりを見回すと、自身を指さした。
「そう。お前。」
すると、黒い肌のその化け物は少しだけ微笑した。
「私が見えるのですか?」
はっきりと、そう言う。
「ああ。俺は昔から死神のことが見えてね。」
「死神…それは、あなた方の言葉ですね。」
「ああ。まあ、同じようなもんでしょ?あなたたち、死期なんですから。」
俺は昔から、死期が見えていた。
そいつが見えると、その近くにいる人は近ごろ死ぬ。
「私のことは嫌いじゃないのではないのですか?」
「え?まあ、わかっていたことだし…いつか近直死ぬなってのはなんとなくわかってたし…」
「そうなのですか?何故?」
俺は布団の上で、一息深く呼吸をする。
「俺は、昔からちょっとした病気で。」
「病気…ですか?」
「まあな。その所為で、いっつも何かと苦しんでるんだ。まあ、これでおさらばって感じだけど…」
死神は、顎を2本の指でなぞりながら、話を聞いていた。
まるで関心…という風な表情をしているその死神。
「そういえば、俺の寿命ってあとどれくらいか分かるか?」
「寿命ですか?それはちょっと…」
死神は苦笑いすると指をクロスして、バツを作った。
まあ、無理な話か…
「そう言えば、俺以外に見えたって言ってた人間て居る?」
「あなた以外に…?うーん…」
するとその死神は腕を組んで考え込んだ。
たまに頭を掻いたりして、死神は考え込んでいた。
俺は答えが出るのを待っていたが、ようやく、返答が返ってくる。
「多分無いですね…この方、生まれてから500年は死神やっていますけど、今までに見たことは無いですね。そういう風な話も聞かないし…あなたが初めてなのでは?」
「ふーん…そうか…」
俺は、一度、ベットに体重を預ける。
もう入院してから2ヶ月。もうすぐでリハビリも終わると聞いたし…
「もうちょっと生きてみてもよかったのになー…」
まあ、この病気になってから、医者に「覚悟してください」と言われた時からすでにわかってはいたけど…
「俺ってつくずく不運だな…」
「そうでしょうか…?もうすぐ死期が近いのなら、今やっておくべきことを、やっておけば良いのでは無いでしょうか?」
「え?やっておくべきこと?」
「例えば…ほら、遺書を書くとか…でしょうか?若いまま死んでしまうのでは、遺書を残せる人はそうそう居ないのでは?」
「そう…だな…そうだな!!!書くか!!!遺書!!」
そう思い付いた俺は止まらない。
紙とペンを用意し、俺はその用意した紙にインクを走らせた。
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「よし…これでヒーローたちは呼んだ…あとは待つだけだ…」
ベリアルが持っていたスマホをその場に投げつける。
もう不必要という意味なのだろうか、それとも、戦闘に邪魔になる…ということなのだろうか…
どっちでも良い。
そんなことはどっちでも良いんだ…
今日も曇り空の起眞市の街。
ビル群の真ん中に俺とカントウとベリアルは立っていた。
車通りの多かったこの場所はあっという間に火に包まれており、この全ての元凶が俺たち、RIだ。
そこら中には道端に倒れた人たち。
別に死んだわけではない。
気絶しているだけ。
ヒーローを呼び込むための大事な餌だ。
「RIとしてちゃんと名前を使ったら、本当にシャイニーが来るの…?」
「ああ。確実に来る。RIの名前は非公開にされている。だからこそ、その名前を知っているのは、RIという道の組織の関係者という憶測ができるわけだ。本人たちじゃなくても、その関係者とならば、秩序保安委員会の奴らは、飛んでかかって来るさ。」
自信満々に俺は解説するが、でも、関係者だからと言って、それが本当にシャイニーが来るとも絶対とはどうしても言えない…
でも、その時は…
「殺すだけだ…」
「なんか言ったか…?」
ベリアルが、俺の顔を見ながら聞くが、俺は、「いや、なんでもない。」と誤魔化した。
と、すると、空に何かの勢いよく放たれる何かの音が響き渡る。
爆発に近いようで少し遠いような、火を吐くような音。
「どうやら、来たみたいだな…」
空から飛んできたのは、マントを身に包み、そして緑色のゴーグルと、金属のパワードスーツを着込んだ男だった。
「しゃ、シャイニー!!!!!!!!」
ベリアルの頭が一気に赤くなる。
当然だ。
最愛の人を殺されて、冷静になれない奴がどこにいる。
そして、冷静になれないのは、俺も同じだった。
「シャイニー…!!!!!!」
「現れたか!!!!!」
「いや~暑いね~君たちの熱がひしひしと伝わってくるよ~で?それで、俺を殺すつもり?やめておいた方が良いよ。お前…弱いんでしょ?」
「それは…始まらねぇとわからねぇな!!!!!!!」
ベリアルは右手をカマキリのような形に変形させると、足にエネルギーを溜めて、一気に爆発させるように解放する。
閃光のように迸るベリアルは切断こそは出来なかったが、シャイニーを空中へと吹っ飛ばした。
「おおっと!!!」
だが、それでも余裕そうに、空中で浮いている。
「何!?」
「まあまあ。あのガキよりはまだマシだな。」
「テメェ!!!!!!!!」
するとベリアルが、鎌を縦に回しながら空中へと飛び出し、そしてその回転力で、ベリアルを地面へとはたき落とす。
ベリアルは、足を地面に刺して、伸ばした足を縮ませて地面へと着地。
横に鎌を振り、シャイニーを切り裂こうと刃を走らせた。
「まあまあだね。」
しかし、シャイニーはベリアルの鎌を腕を使って止めた。
ノールックで防いだベリアルの攻撃。
その衝撃が地面に伝わり、コンクリートにヒビが入った。
「な…!!!く、クソが!!!!!!」
ベリアルは、そこから何回も鎌をぶつけるが、全て腕で受け止められる。
「最近の怪獣とか怪人も、レベルは上がったけど…まだ俺に届くほどじゃないな…」
「クソ!!!!!クソ!!!!!!!!」
そして、シャイニーは腕でベリアルの腕から生えた鎌を受け止めると、それを弾き返し、防御も何も無いガラ空きの腹に拳を叩き込む。
「ぐはぁ!!!!!!!!!」
拳を叩き込まれたベリアルは、少しだけ吹っ飛ばされると、膝を地面に突いた。
「お、お前…!!!!!!」
「どうした?もう立てないか?」
そう言いながらシャイニーは、ベリアルに近ずく。
「ベルアル!!!!!」
「ほら、隙だらけだぞ。」
そうい言いながら、シャイニーはベリアルの頭に中段蹴りを入れると、ベリアルは、そこから3mほど吹っ飛ばされる。
「ベリアル!!!!!お、俺もう…行くしか…」
俺はそう言いながら、ベリアルの元へ向かおうとするカントウの方を掴み、引き止める。
そして、何も言わずに首を振る。
「俺だってあいつを殴ってやりたいよ…でも、それを一番思っていたのは、あいつだから…ベリアルだから…これはあいつの決闘なんだ…」
するとカントウは、何も言わずにベリアルの方向に視線を向けた。
「はぁ…はぁ…シャイニー…お前は…!!!本当に正義なのかよ!!!!!!」
「はぁ?どういうことだ?」
「俺の仲間を…全て殺して………なんで…!!なんでお前が正義なんだよ!!!!!」
ベリアル。
その正体は、4年前に地球へと親睦のためにやって来た異星人だ。
ベリアルはその異星の王子で、宇宙船に乗り、地球にやってきた。
そして、ベリアルとあと何人かの従者を従えて、小型の探査機に乗り、山の頂上に着陸。
そして、その瞬間、上空に待機していた宇宙船が、秩序保安員会によって破壊。
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そして地上に降り立ったベリアルたちは、他のヒーローによって襲われ、部下がヒーローたちを足止めさせている間に、ベリアルだけは逃げ、そして部下はヒーローたちによって皆殺しにされた。
そして、弱ったところをライリーが拾ってきて、そしてRIの仲間入りをしたというわけだ。
しかし、そのライリーも今となっては目の前のシャイニーによって殺されている。
本当に、秩序保安委員会はベリアルの全てを奪っている。
「お前らだけは…!!!!お前らだけはぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
そして、その感情によって爆発するベリアルの能力。
変異が、起きる。
「なんだあれ」
シャイニーは余裕の表情でそうぼやくと、両手を前に構えた。
ニヤリとしながら呟くシャイニー。
次の瞬間にはビルに叩きつけられていた。
そして、その後に何が起きたのか、わからないような表情で、シャイニーはその場を見渡した。
「あ…あ…あ…」
信じられないという様な顔で声を震わせる。
「俺は…!!!!!ライリーは!!!!!!!」
そして次の瞬間、ライリーの足元が弾けるように吹き飛び、砂埃を一斉に舞わせる。
ドオオオオオオオン!!!!!!!!
そして次の瞬間、轟音が鳴り響いた。
ビルの方向には、ビルに埋もれたシャイニー。
それに向かって刃を振るうベリアル。
そして、その刃を剣で受け止めるスーツを纏った不審者の姿があった。
だが、世間一般的にあれを不審者と言う者は誰も居ない。
なぜならあいつは…
あのヒーローは…
「別に止めなくてもよかったのにな~。マグプル」
「まさか、カウンター狙いだったか?」
シャイニーはコクリと頷く。
「さてと。それじゃあ、殺しますか。」
そして刹那。
シャイニーはベリアルに拳を叩き込んだ。
しかし、ベリアルはその拳を止める。
そして、回転後ろ蹴り。
後頭部に当たりそうになったところを、シャイニーは腕で止めると、周囲を風圧で吹き飛ばす。
しかし、マグプルだけはその場に直立したままだ。
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「ぐあ!?」
視線がぐらっと揺れたベリアルの頭に向かって放たれる大砲のようなパンチ。
地面のコンクリを砕き、そして衝撃を伝わらせる。
「くっ!!!!!!」
ベリアルは馬乗りのような体制になってしまったので、起き上がるのと同時に両足をシャイニーの胸に叩きつける。
シャイニーは花火のように空中に放り出された。
「ほほう…やるじゃねぇか。」
そしてマグプルがそう言いながら、身構える。
すると、空から流星のようにシャイニーが降ってきて、あたりに衝撃が迸る。
「お前の出る幕は今日はねぇぜ。」
そう言いつつ、目元のゴーグルを光らせて、ビームを放った。
ビームは、あたり一帯を巻き込みつつ、ベリアルに直撃する。
「っああ!!!!」
腕が焼け焦げるように黒くなったベリアルは、自分の腕から触手のようなカニの足のような物を出すと、それを振りかざした。
先の尖った爪のようなそれは、シャイニーの腕によって一度、止められる。
「ぐうう!!!!」
「こんなの、弱者のすることでしか無いように思えるのは俺だけか?」
そう言いながら、シャイニーは握ってい爪の生えた腕を取り払い、そして、ガラ空きになった鳩尾に向かって、拳をまっすぐ走らせた。
そして、見事、鳩尾にその拳が叩き込まれると、あたりに風を撒き散らしながら、ベリアルは大きく吹っ飛ぶ。
「ぐぅぅ!!!!!」
獣のように理性を失った目付きを向けるベリアル。
それに呆れたように、はあとため息を吐き、「これまでか…面白くねーやつ」と言葉を漏らしながら、シャイニーは右腕に漆黒の雷を纏わせた。
「あれは!!!!」
まずい、あれは!!!!!!
俺は、慌ててビルの頂上から飛び出した。
あれはやばい!!!!!
あれは…!!!!!
「放射線556を纏ったパワードスーツ。これを食らえば、一溜りもないだろうな。」
「くがあああ!!!!!!!」
鳩尾を押さえ、片手で体の上半身を支えるようにして蹲るベリアルが言葉にならないうめき声兼、憎悪の声を吐き捨てる。
「ま、まて!!!!!」
「これで終わりだ。」
そう言いながら、助走をつけるようにして走り始めるシャイニー。
そして、シャイニーは空中に飛び出、そして、ベリアルに向かって拳を降りおろ___
「やめて!!!!!!!」
と、次の瞬間、シャイニーの前を赤い光線のようなものが、通りかかり、シャイニーはベリアルから距離を取るようにして。
今の赤い光の線は…!!!!
「ん?君…」
シャイニーが、光線の飛んできた方向を見る。
そこには、ピンク色のドレスを見にまとい、そして、魔法のステッキを頭の前に掲げる一人の女子高校生が居た。
そいつには見覚えがあった。
「え、死刑執行人!!!!!」
「しゃ、シャイニーさん!!!!!その人は、誰も殺していません!!!!!」
「人?こいつは人じゃない。その時点で、駆除しなければいけないことはわかるだろ?なぜお前は怪物の仲間になる?」
そして、奏音がシャイニーと喋っている間、シャイニーとベリアルの間に俺とカントウが横入りした。
すると、奏音が驚いた様子で、「ユミーさん!?」と瞼を広げた。
「………」
「ユミー?お前…ユミーって名前なのか?はぁ~ん」
何かを理解したのか、パチンと指を鳴らす。
だが、そんな中で、ベリアルの腕が変化した刃がシャイニーに飛びかかった。
「ッ!!」
そして、次の瞬間、その漆黒を纏った拳を振り下ろしたが、ベリアルはギリギリのとこで、回避する。
「まだ戦いは終わってないんだ。そこの魔法少女ちゃんも、さっさと帰んな。ここは大人の場だよ。」
マグプルがそう言いながら、手を縦に振ると、奏音は握った拳をもっと強く握りながら、言う。
「でも…目の前の理不尽を見逃すわけにはいかないです!!!!」
奏音はそういうと、敵であるはずの俺らの目を真っ直ぐと見た。
まるで、信じています!とでも訴えかけるようにその瞳は純粋な光を帯びていた。
「だから!!!ここでは引けない!!!!」
「はぁ…全く…これだから…マグプル…ちょっとこいつの相手をしてくれないか?」
そう言うと、シャイニーはポキポキと腕を鳴らした。
「まあ、所詮は魔法少女だし。さてと、正義というものをしっかり理解してもらわないとね。」
物凄い威圧を放ちながら、近づいてくるシャイニー。
奏音はシャイニーに魔法のステッキを掲げているだけで、撃とうとはしない。
「くっそ…!!!!」
「ユミー!?」
俺はそう呟いて、カントウを置いて、奏音の所へと向かった。
そして、奏音を片手で抱える。
「え!?ゆ、ユミーさん!?」
「逃げるぞ!!!!お前が死んだらVが悲しむからな!!!!」
俺はそう奏音に告げながら、ビルとビルの間を駆け抜ける。
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吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
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(性的描写あり)
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