異世界でも馬とともに

ひろうま

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第6章 最後の神獣

63-封印の真実

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「先日はありがとうございました。お蔭で、無事神獣も解放できました。」
「それは、良かったです。」
僕は、エラスの街の門前でトリートさんと話をしていた。
ちなみに、連れて来ているのは、ステラとエルミナだけだ。
「助けて頂いて、ありがとうございました。」
「いえいえ。あれは、あの男が悪いんですよ。」
エルミナは、トリートさんがあの場を収めてくれたことについて、改めてお礼をしたかったらしい。
「トリートさんは、いつまでエラスに滞在するんですか?」
「明日には、出発しようと思ってます。それで、できたら帰りも一緒にお願いできないかと思いまして……。」
「あ、はい。わかりました。」
「ありがとうございます。」
なるほど。
帰りは契約に入ってないが、トリートさんのお蔭で目的を果たせたから、この頼みは断りにくい。
この抜け目なさは、さすが商人だ。
まあ、実際トリートさんの協力が無かったら、神獣の解放の目処は立ってなかったので、それ位は御安い御用だけど。
「あ、そうだ。私はまだ街の中にいることになってるんじゃないかと思いますが、大丈夫ですか?」
「ああ、それは大丈夫です。この街は出る時はノーチェックですからね。勇者とかは別ですが。」
「そうなんですね。」
やっぱり、この街は厳しいのかいい加減なのかわからないな。
その後、明日の朝ここに集合して出発するという事を決めて、トリートさんと別れた。

~~~
「じゃあ、行こうか。」
僕は、一旦家に帰り、セルリア、ヴァミリオ、レモン、ジェイダと共に、獣神に会いに行くことにした。
いきなり行って会えるのかわからないが、最後の神獣を解放したことは認識してるはずなので、今日辺り僕が会いに行くことは想定しているだろう。
カラドリスの山へは、ステラにテレポートしてもらったのだが、帰りは自分でテレポートするので、ステラには帰ってもらった。
他の者もテレポートが使えるようになったので、ステラに手伝ってもらわなくても良いはずだが、帰りはともかく行きは目標地点の設定が難しく、ステラにお願いすることにした。

上に登ると、カラドリウスが待っていたかのように、そこにいた。
いや、実際待っていたのだろう。
「ようこそ、いらっしゃいました。獣神様がお待ちですので、こちらにどうぞ。」
以前より余所余所しい態度だな。
僕たちはカラドリウスに付いて、頂上の祠に向かった。
そこに居たのは……。
「麒麟?」
当然実物を見たことはないが、僕のイメージする麒麟の姿そのものだった。
「ユウマよ、よく来た。神獣たちもご苦労。」
「し、失礼しました!はじめまして、獣神様。」
「私たちはついでなのかしらー?」
「こら、余計なことを言うな。」
不貞腐れたようにそう言うジェイダがを諫めるセルリア。
「よいよい。ユウマよ、我ら神は地界では実体を持たない。故に、見る者によって姿が異なるのだ。」
「つまり、僕が持っている獣神様のイメージが麒麟だったということですか?」
「その通りだ。」
「そうなんですね。」
ということは、ほかの皆は別の見え方をしてるのだろうか。
「それと、翼蛇よ。お前たちも、ついでではない。これからの話すことは、ユウマにとってもお前たちにとっても重要な事だ。」
「「……。」」

「300年前、異世界からの大規模な侵略があった事は、ユウマも聞いているだろう。」
「はい。」
「ここにいる神獣たちは、その最前線で戦った。元々、神獣はこの世界を守るために存在しているのだから、当然ではあるのだが……。」
「この世界を守るため、ですか?」
「そうだ。そのために、この4つの種族を神獣として選んだのだ。まだ、人間が今のように力を持たなかったからな。」
「そうなんですね。あ、話を遮って、申し訳ありません。」
「いや、構わない。わからない事があれば、途中でも聞いてくれ。」
「ありがとうございます。」
「話を戻すが、神獣は過去何度も侵略者と戦って来た。しかし、前回は事情が違っていた。それは……彼女たちが人間の支配下にあったということだ。」
「えっ?」
神獣を支配下に置くなんて事ができるものだろうか?
今は皆僕の従魔だけど、これは皆の意志でなっているだけだ。
彼女たちが契約を解こうと思えば、いつでも解けるし、僕が支配している訳ではない。
「当時は、今と違って力のある勇者が多くいた。神獣に勝って、神獣を従わせる力を持つ者もな。」
「……。」
「そして、神獣たちは自分の意志とは関係無く戦わされ、ボロボロになった。」
「獣神様が何とかする事はできなかったんですか?」
神なら何とかできたんじゃないか?
そういう思いから、ついつい聞いてしまった。
「残念ながら、私も世界に直接干渉することはできないのだ。私も見ているしか無かった。」
「余計な事を言って、すみません。」
「いや、私も悔しかったから、そう思うのは当たり前だ。そして、私にできたのは、すべてが終わって神獣たちの契約も解除された後……。人間の支配下にあった時の記憶を消し、治癒に専念させるために封印する事だけだった。もちろん、それは、神獣たちの了承があったからできたのだが……。」
「……。」
何となく、封印したのは獣神様ではないかという気もしてたが、矢張りそうだったんだ。
「そして、封印が解ける条件だが……。地狐が推測したのが、ほぼ正解だな。本人が解きたいと思うことだ。」
「やっぱり。」
横で、レモンが呟いた。
「私を含め他人の意思で解けないのは、皆がそういう条件を付けたからだ。私は、治癒が終わったら、皆封印を解いて出て来ると考えていた。しかし、300年経っても封印はそのまま。私は焦った。このまま次の大規模な侵略が始まってしまう、と。」
神様でも焦るのか……。
待てよ?
「そのために、勇者がいるんですよね?」
「そうなんだが、今の勇者だけでは厳しいと思っている。」
「え?」
ちょっと驚いたが、まあ、何となくわかる。
勇者と言っても、元はほとんど平和な世界で暮らしてきた若者だろうからな。
力をもらって、訓練を重ねたとしても、たかが知れてるということだ。
よくあるラノベの主人公みたいに、無双したりということは、ほとんどないだろう。

少し間を置いて、獣神様は再び話し始めた。
「記憶を消したとはいえ、心の傷が大きかったということだろう。そんな時に目を着けたのが、ユウマだった。直観的に、この者なら神獣たちも気を許して、封印を解くのではないかと。」
「どうして、そう思ったんですか?」
「私も神だからな。どういう人間かということはわかる。ユウマは、人間と動物は対等であるべきと考えている。」
「確かに、そういうところはありますが。」
子供の頃から、人間は他の動物より上だという考え方は、おかしいと思っていた。
しかし、その考えを全く持ってないという訳ではない。
例えば、乗馬をしているというのは、人間が馬より上だと考えていると言えるのではないだろうか。
我ながら、矛盾していると思う。
あれ?でも、獣神様は、僕をどこで見たのだろう。
「あのー。失礼ですが、獣神様は僕たちの転移に関わったりしてます?」
「いや。あれは本当に事故だった。そして、私はその時たまたま巻き込まれたユウマとルナを見た。そして、調停者に、ユウマに神獣の封印を解く様に依頼してもらう事を頼んだのだ。」
「そういうことだったんですね。」
なぜ調停者がそのようなことを僕に頼んだのか、やっとわかった。
「そして、ユウマと神獣たちよ。これは私からのお願いだ……。この世界を守って欲しい。」
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