異世界でも馬とともに

ひろうま

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第5章 新たな従魔探し

59-リフィ巣立ちのとき

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家に帰ってゆっくりしてたら、リフィが近付いて来た。
「リフィ、どうしたの?」
「リフィ、大人になったの!」
「え?そうなの?リフィ、おめでとう!」
確認のため、ステータスを見てみた。

================
名前:リフィ
種族:ヒポグリフ
性別:♀
年齢:0歳
HP:5,000/5,000
MP:5,000/5,000
能力値:
 力:A
 体力:A
 知力:A
 精神力:A
 素早さ:A
スキル:時間魔法、飛行、即死耐性、翻訳、MP消費防御、魅了耐性
契約主:ユウマ
================

確かに、種族の「(幼体)」が取れていた。
「ありがとう、ご主人!」
「ご主人?これまで、パパって呼んでたのに。」
「だって、ご主人は本当のお父さんじゃないでしょ?」
「え、知ってたの?」
「今、わかったの。」
「そうなんだ……。」
なんだろう、この複雑な気持ちは……。
「でも、今リフィが生きてるのは、ご主人のお蔭だよね。ありがとう。」
「ど、どういたしまして。」
急にお礼を言われたから、微妙な返しをしてしまった。
「これからは、独りで暮らすね。」
「そうなの?」
「なぜか、そうしないといけないと感じるの。あ、でも、リフィはご主人の従魔だから、呼べば戻って来るよ。」
本能が巣立ちを促しているのだろうが、寂しくなるな。
あ、そうだ。
「リフィ。出掛ける前に、お母さんの所とカミルさんの所に一緒に行かない?」
お母さんというのは、クレアのお母さんのことだ。
「わかった。」
「今日はもう夕方だし、明日にしようか。あ、そうだ。今日は僕と一緒に寝る?」
「え、ホント?わーい。」
「勝手にき決めちゃったけど、皆も良いかな?」
「ボクは良いよ!」
今日一緒に寝る予定だったヴァミリオが即答した。
「ヴァミリオごめんね。」
ヴァミリオが最初に認めたこともあってか、他の者も異論は出なかった。
「ご主人、ちょっと外を飛んできて良い?」
「良いけど、あまり暗くならないうちに帰って来てね。」
「わかったー。」
成体になった身体を動かしたくて仕方ないんだろうな。

~~~
リフィが戻って来たので、一緒にお風呂に入るか聞いたが、やめておくということだった。
お風呂が何かわからなかったので、見せて説明したのだが、お湯は苦手なようだった。
普通に考えると、お風呂に入りたがる魔物の方が珍しいよね。
お風呂に入らなくても、クレアがクリーンを掛けてくれるから、皆清潔だ。
クレアは、家の掃除もしてくれるし、すごく助けられている。

「おやすみ、リフィ。」
「もう寝るの?」
リフィはもうエルミナと同じくらいの大きさなので、ベッドではなく、床に布団を引いて寝ることにした。
リフィの毛並みと羽毛が気持ち良く、直ぐに眠くなったのだが……。
まあ、最後の夜なのに寝るだけじゃあ、味気ないか。
「いや、まだ寝ないよ。お話ししようか。」
「うん!」
「リフィは、どうしても出ていくの。」
「うん。ちょっと寂しいけど、やっぱり出ていかないといけない気がする。」
「そうか……。」
「それに、今日外を飛んでみて、もっと色々な所を見たいとも思ったの。」
「……。」
「そんな悲しそうにしないで。呼ばれたら、直ぐに戻って来るんだから。」
「そうだね。ありがとう。」
とても気が利く子に育って、お父さんは嬉しいよ。って、もうお父さん扱いもされなくなったけど……。
「ご主人、これまで育ててくれてありがとう。」
「いや、僕は何もしてないよ。卵のときに温めたのはクレアのお母さんだし、ここへ来てからも皆が見ていてくれたんだから。」
「もちろん、お母さんにも皆にも感謝してるよ。でも、ご主人がいなかったら、リフィは今こうしていることもできないんだもん。」
そう言って、翼で僕を包み込むリフィ。
身も心も暖かくなるとは、こういうことかな。

~~~
翌日、カミルさんの所に行く前に、乗馬施設に行った。
今日はお休みさせてもらおうかとも思ったのだが、リフィが僕が馬に乗るところを見たいと言ったので、一緒に行くことにした。
ベルタスさんは、リフィを見て驚いていたが、見学を認めてくれた。
ただし、馬が驚くからあまり近付かないように、と注意されたが……。

乗馬施設の馬とエルミナのトレーニングを終え、リフィの所に戻ると、リフィは興奮した様子だった。
「ご主人、カッコ良かったよ!リフィも、いつかご主人を乗せてあげるね!」
「ありがとう。」
嬉しいことを言ってくれるな。
リフィの乗り心地ってどんな感じだろうか。

乗馬施設を後にした僕たちは、そのままカミルさんの所に行った。
「もう成体になったんですね。やはり、普通より成長が速いです。」
ミルクさんにじゃれついているリフィを見ながら、カミルさんがそう言った。
身体は成体になったリフィだが、こういう所を見ると、精神的には子供らしさが残っていると感じる。
リフィが大きいため、じゃれつかれているミルクさんは若干持て余し気味だが、嬉しそうだから良いかな。
「そうなんですか。」
他の魔物の幼体を知らないため、僕にはわからないが、何体も魔物を育てているカミルさんが言うのであれば、間違いないだろう。
「それで、リフィさんは、家を出なければいけないと言ったんですね。」
「はい。多分、本能的に巣立ちを促されているんだと思うんですが……。」
「そうでしょうね。ただ、私の経験上、人に育てられた魔物は人から離れようという行動は見られません。」
「そうなんですか?それは、育てた人を親と認識していないからかも知れませんね。」
そうは言ったものの、リフィも僕のことは親ではないとわかったみたいなので、そうだとすると、リフィが出ていく必要がなくなる気がする。
「そうかも知れませんね。それと、人は育てた魔物と離れたがらないというのもあると思います。本当の親は、成体になった子は突き放すような行動を取るらしいですから。」
「なるほどです。」
野生動物もそういう行動を取るからな。元の世界でメディアから得た知識でしかないけど……。
魔物と動物が同じとは限らないが、同じような面はあってもおかしくはない。
しかし、この点でも、リフィには当て嵌まらない。
僕たちは、誰リフィにそのような態度は取っていないからだ。

「はぁはぁ、リフィちゃん元気過ぎ……。」
いつまでもミルクさんにじゃれているリフィに帰るように伝えると、渋々ミルクさんを解放した。
ミルクさん、お疲れ様です。
「リフィさんについては、意思の疎通もできるので、大変参考になりました。わざわざ、連れて来ていただき、ありがとうございました。」
「いえいえ。少しでもお役に立てば、嬉しいです。」

カミルさんの所を後にした僕たちは、更に、そのままクレアのお母さんの所に向かった。
「お義母さん、久しぶりです!」
「今日は、どうしたのだ?」
「リフィが成体になって、家を出ると言ってるので、その前にお義母さんに会わせに来ました。」
「そうなのか?ありがとう。リフィちゃん、久しぶりだね。」
「うん。おばさん、これまでありがとう!」
『おばあさん』と呼ばれなくて良かったね……って、クレアのお母さんに一瞬睨まれた。読心術は使えないと思うんだけど……。
「私は何もしてないぞ。」
「リフィが無事孵ったのは、おばさんのお蔭だよ。」
「おや、そんな事まで知ってるのか?」
確かに、リフィが正確に事実を把握できているのは不思議だ。

~~~
「ご主人、そろそろ行くね。」
「う、うん……。気を付けてね。」
一度家に戻り、今度はリフィと僕たちとのお別れだ。
「そんな悲しそうな顔しないで。二度と会えない訳でもないんだし。」
「そうなんだけど、悲しいものは悲しいんだよ。あ、そうだ。従魔契約は無理に維持しなくて良いよ。」
「それはリフィがしたくてしたんだから、そのままにさせてよ。」
「そもそも、どうして従魔になったの?」
「何となく、この人と繋がりたいと思ったの。その時はお父さんだと認識してたはずだから、今考えると不思議だね。」
「確かに。」
その後すぐに、リフィは飛び立って行った。
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