74 / 94
第5章 新たな従魔探し
57-トリートの提案
しおりを挟む
ジョーンズさんの予想通り、朝から雨が降った。
まだ、大したことはないが、ひどくなる可能性もあるということで、ジョーンズさんが出発を躊躇していた。
「ジーンズさん、イリディが雨を防ぐ結界を張りますので、大丈夫ですよ。」
「そんなことができるのか?」
「はい。イリディ、お願い。」
「わかったなのです。」
結界は見えないが、雨が弾かれているので、その存在が確認できた。
それは、徐々に広がっているのがわかる。
「おお!これはすごいな。ユウマ君は何でもありだな。」
「それは、言い過ぎです。」
そもそも、僕がやっているわけじゃないしね。
段々雨がひどくなって来たが、イリディのお蔭で、ゆっくりだが順調に進んだ。
ヴァミリオは、さすがに強い雨の中は飛びにくい様で、僕の肩に戻って来た。
レモンは、相変わらず寝ている。
クレアは、今は先頭の馬に話し掛けている……と思ったら、こっちにやって来た。
「クレア、どうしたの?」
「今日は足場が悪いから、馬たちが少し休みたいらしいわ。」
「なるほど。さすが、クレア。ありがとう。」
「フフン!」
胸を張るクレア。チョロい。
僕は、ジョーンズさんにその事を伝えに行った。
クレアもなぜか付いて来た。
「わかった。クレアさん、伝えてくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
クレア、ジョーンズさんに褒めてもらうために来たのか。
「少し先に休憩所があるから、そこで休もう。」
「はい。クレア、馬たちに伝えて来てくれる?」
「わかったわ。」
しかし、足場が悪いのに、通常休憩する所までは来たということか。
矢張り、あの馬たちは体力あるな。
休憩所は、雨も凌げる様になっているため、イリディも結界を解いた。
「イリディ、お疲れ様。大丈夫?」
「大丈夫だけど、さすがにちょっと疲れたなのです。あなた、抱いてくれなのです。」
「こ、ここで?」
魔力の供給のためだろうけど、皆が見てる所ではさすがに恥ずかしい。
でも、イリディにはこの後も頑張ってもらわないといけないから、そのくらいしても良いかな。
ということで、休憩の間イリディを抱いた。
イリディは大きいので、抱くというよりくっついているだけという感じだが……。
結局、今日も雨が降った以外は何事も無かった。
途中休憩したので、いつもより時間が掛かったが、そこまで到着が遅くなったという訳でもない。
「お疲れ様。」
今日は、さすがに馬たちも疲れただろうから、撫でておいた。
撫でている間、馬たちも気持ち良さそうだった。
これくらいなら、特に問題ないよね?
「やっぱり、私は家にいても良かったわね。」
僕が馬たちから離れると、レモンがそう言いながら近付いて来た。
「いや。結果論だからね。」
レモンを抱き上げながら、僕はそう答えた。
というか、レモン今日もほとんど寝てたよね?
~~~
家に帰ると、またイリディが抱いてくれと言って来た。
皆がいる所で誰かを抱くと、反発があったりするのだが、今日はイリディが頑張ったのは皆わかっていたので、文句を言う者はいなかった。
僕も疲れたから、イリディのモフモフに埋もれて休ませてもらおう。僕は何もしてないけどね。
「ん?誰か来たみたいだな。」
こんな時に訪ねてくるとは、誰だろう?
僕以外は人を迎えることはできないので、仕方無くイリディに断りを入れて、玄関に向かった。
尋ねて来たのはトリートさんだった。
そう言えば、この人が最初に訪ねて来たのも、雨の日だったな。
今のところ、トリートさんは僕たちの味方寄りだとは思うが、完全には信用していない。
皆も同じなのか、若干警戒をしている様だ。
「お久しぶりです。急に訪ねて来て、申し訳ございません。」
「どうかしましたか?」
「実は、お願いが有って来ました。」
『今日は、悪意は感じないわね。』
いつの間にか近くに来ていたクレアが、念話でそう伝えてくれた。
『そう?ありがとう。』
クレアが言うのなら、大丈夫だろう。
心が読めるレモンの方が確実ではあるが、彼女はまだ寝ている。
「お願いとは何ですか?」
「実は、エルミナさんのことを、元飼い主とその父親にしたのですが、信じてもらえなくて……。」
「普通、そうでしょうね。」
僕でも『馬があなたのことをこう言ってた』とか言われても、何を言ってるんだコイツは、みたいに思うだろう。
「しかし、息子の方は矢張り心当たりがあるのでしょう、少しそわそわしてました。それで、エルミナさんの言われることが、正しいと確信しましたよ。あ、もちろん、エルミナさんを信じてなかった訳ではないのですよ。」
「大丈夫です。本人の主観が入ってる以上、そのまま鵜呑みにする訳にはいかないですからね。」
「ご理解いただけて、助かります。それで、エルミナさんに直接話をしていただけないかと思いまして。」
「つまり、トリートさんと一緒にエラスに来いということですか?」
「はい。」
「もしかして、トリートさんは、エラスに僕たちを同行させることで、護衛費用を浮かそうと思っているのではないですか?」
「おや。バレてしまいましたか。」
この人、隠すつもりがないみたいだな。
「失礼ですが、僕たちにメリットはない様に思いますが。」
「いえ。父親の弱みを握ればユウマさんにもメリットが有ります。」
「どんなことですか?」
「彼はエラスでも力を持った商人なので、多少の我が儘は通ります。例えば、街に馬車を入れたいとか。ユウマさんも、例えば御者として街に入るなどということができるかも知れませんよ。」
「そんな事が通るんですか?」
エラスは、馬も入れないはずだけど。
「荷物を運ぶのに使うと言えば、断り難いでしょう。魔動車が行ける場所は限られますから。もちろん、普通の商人なら、当然認められません。」
「でも、弱みにつけこんでというのは、どうも……。」
「ならば、対価を支払うという条件なら良いのではないでしょうか?その場合でも、エルミナさんの件は、相手との交渉はやり易くなりますし。」
「なるほど。そうですね。」
たしかに、その程度なら良い気もする。
でも、エルミナは、元の飼い主には会いたくないんじゃないないかな?
「エルミナにも聞いてみますね。エルミナ、ちょっとこっち来てくれる?」
「エルミナさん、こんにちは。」
エルミナが来ると、トリートさんは、彼女に挨拶をした。
「こんにちは。今の話、聞いてました。ユウマさん、私は構いません。」
「本当に良いの?」
「はい。元の飼い主に会いたくないのは確かですが、逃げて来てしまって申し訳ない気持ちも有ります。今なら直接話もできるので、ちゃんと話をしておきたいと思います。」
「そう?無理してない?」
「大丈夫です。」
「ありがとう、エルミナ。トリートさん、この話お受けしようと思いますが、できれば指名依頼の形にしてもらえないでしょうか。」
「指名依頼ですか?」
「はい。ギルドを通して、依頼としてもらう方がやり易いです。もちろん、報酬は設定しないといけないでしょうが、支払ったことにしてもらうというのでも良いです。」
「わかりました。では、ワーテンのギルドに出しておきます。ちなみに、出発は5日後の朝の予定です。その時は、迎えに来させますので。」
5日後なら、急いでいるのはわかるな。僕が断ったら、護衛依頼を出さないといけない訳だし。
「わざわざ、すみません。」
「いえいえ。それでは、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「エルミナ、本当に良かったの?」
トリートさんが帰った後、改めてエルミナに聞いてみた。
さっきはああ言っていたが、実際には僕のために無理をしているんじゃないかという心配があったからだ。
「さっき言ったのは、本当のことです。でも、何より、私でもユウマさんの役に立てそうなので……。」
「エルミナ、ありがとう!」
思わず、エルミナに抱き付いた。
他の者も見てるけど、ここは空気を読んでくれたのだろう、誰も何も言わない。
「あのー。さっきの続きをお願いできなのです?」
と思ったら、そんなことを言ってくるのがいた。
もちろん、イリデイだ。
後ろで、皆が若干呆れた様に見ていた。
特に、クレアは何か言いたげだ。
後でお説教とかありそうだな。
~~~
翌日は、天気も良くなったので、移動は順調だった。
「間もなく、ワーテンだな。」
ジョーンズさんが、そう呟いた。
「そうですね。今日は良いペースで来ましたからね。」
『ユウマ。少し前の繁みに怪しい人たちが潜んでいるみたい。』
ヴァミリオから念話が入った。
上を見ると、高度を下げたヴァミリオが見えた。
前方に目を移すと、右手にまとまった繁みが有った。
『ヴァミリオ、ありがとう。あの、右前に見える繁みかな?』
『そうだよ。』
『何人位いる?』
『そんなに多くないね。1、2……6人かな。どうする?ボクが燃やしとこうか?』
『いやいや、やめておいてね。』
『そうかー。』
ヴァミリオは残念そうだが、そんなことしたら、辺り一面焼け野原になっちゃうからね。
しかし、6人とは少ないな。そんなに盗賊とは遭遇してないから、平均的な人数はわからないけど……。
『ヴァミリオは、ワーテンに行って、盗賊らしき人たちが現れた事をギルドの人に伝えてくれる?』
『わかったー!』
そう言って高度を上げるヴァミリオ。
ギルドなら、ヴァミリオが行っても対応してくれるだろう。
「ジョーンズさん、あそこの繁みに盗賊らしき奴等が待ち伏せしてるみたいです。」
「そうか。どうする?」
こういう時のためにレモンを連れて来たんだからな。
「お任せください。エルミナ、レモンの所にお願い。」
「わかりました。」
レモンが乗っている最後尾の馬車の所に行くと、レモンは相変わらず寝ていた。
「レモン、起きて!」
「うーん。どうしたの?」
「盗賊らしき人たちが現れたんだ。レモンの出番だよ。」
「フフフ。任せて!」
散々待たせたせいか、殺る気満々みたいだ。
「えーと。やり過ぎないでね。あと、ほぼ確実に盗賊だと思うけど、相手が襲って来るまでは待ってね。」
「わかってるわよ。ちなみに、人数は?」
「6人らしいよ。」
「少ないわね……あ、良い事思い付いた!」
絶対、良からぬ事だと思うけどね。
「ちなみに、どうするの?」
「それは、見てのお楽しみで!あそこの川原にに、岩がいくつも転がっているじゃない?あそこに行って休むように言ってもらえる?」
レモンの視線を辿ると、確かにそれらしい所が有った。
道から大分左に逸れることになるな。
「わかった。エルミナ、ジョーンズさんの所に戻って。」
「はい。」
お楽しみって、不安しかないけど……まあ、相手は盗賊だろうし良いかな。
まだ、大したことはないが、ひどくなる可能性もあるということで、ジョーンズさんが出発を躊躇していた。
「ジーンズさん、イリディが雨を防ぐ結界を張りますので、大丈夫ですよ。」
「そんなことができるのか?」
「はい。イリディ、お願い。」
「わかったなのです。」
結界は見えないが、雨が弾かれているので、その存在が確認できた。
それは、徐々に広がっているのがわかる。
「おお!これはすごいな。ユウマ君は何でもありだな。」
「それは、言い過ぎです。」
そもそも、僕がやっているわけじゃないしね。
段々雨がひどくなって来たが、イリディのお蔭で、ゆっくりだが順調に進んだ。
ヴァミリオは、さすがに強い雨の中は飛びにくい様で、僕の肩に戻って来た。
レモンは、相変わらず寝ている。
クレアは、今は先頭の馬に話し掛けている……と思ったら、こっちにやって来た。
「クレア、どうしたの?」
「今日は足場が悪いから、馬たちが少し休みたいらしいわ。」
「なるほど。さすが、クレア。ありがとう。」
「フフン!」
胸を張るクレア。チョロい。
僕は、ジョーンズさんにその事を伝えに行った。
クレアもなぜか付いて来た。
「わかった。クレアさん、伝えてくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
クレア、ジョーンズさんに褒めてもらうために来たのか。
「少し先に休憩所があるから、そこで休もう。」
「はい。クレア、馬たちに伝えて来てくれる?」
「わかったわ。」
しかし、足場が悪いのに、通常休憩する所までは来たということか。
矢張り、あの馬たちは体力あるな。
休憩所は、雨も凌げる様になっているため、イリディも結界を解いた。
「イリディ、お疲れ様。大丈夫?」
「大丈夫だけど、さすがにちょっと疲れたなのです。あなた、抱いてくれなのです。」
「こ、ここで?」
魔力の供給のためだろうけど、皆が見てる所ではさすがに恥ずかしい。
でも、イリディにはこの後も頑張ってもらわないといけないから、そのくらいしても良いかな。
ということで、休憩の間イリディを抱いた。
イリディは大きいので、抱くというよりくっついているだけという感じだが……。
結局、今日も雨が降った以外は何事も無かった。
途中休憩したので、いつもより時間が掛かったが、そこまで到着が遅くなったという訳でもない。
「お疲れ様。」
今日は、さすがに馬たちも疲れただろうから、撫でておいた。
撫でている間、馬たちも気持ち良さそうだった。
これくらいなら、特に問題ないよね?
「やっぱり、私は家にいても良かったわね。」
僕が馬たちから離れると、レモンがそう言いながら近付いて来た。
「いや。結果論だからね。」
レモンを抱き上げながら、僕はそう答えた。
というか、レモン今日もほとんど寝てたよね?
~~~
家に帰ると、またイリディが抱いてくれと言って来た。
皆がいる所で誰かを抱くと、反発があったりするのだが、今日はイリディが頑張ったのは皆わかっていたので、文句を言う者はいなかった。
僕も疲れたから、イリディのモフモフに埋もれて休ませてもらおう。僕は何もしてないけどね。
「ん?誰か来たみたいだな。」
こんな時に訪ねてくるとは、誰だろう?
僕以外は人を迎えることはできないので、仕方無くイリディに断りを入れて、玄関に向かった。
尋ねて来たのはトリートさんだった。
そう言えば、この人が最初に訪ねて来たのも、雨の日だったな。
今のところ、トリートさんは僕たちの味方寄りだとは思うが、完全には信用していない。
皆も同じなのか、若干警戒をしている様だ。
「お久しぶりです。急に訪ねて来て、申し訳ございません。」
「どうかしましたか?」
「実は、お願いが有って来ました。」
『今日は、悪意は感じないわね。』
いつの間にか近くに来ていたクレアが、念話でそう伝えてくれた。
『そう?ありがとう。』
クレアが言うのなら、大丈夫だろう。
心が読めるレモンの方が確実ではあるが、彼女はまだ寝ている。
「お願いとは何ですか?」
「実は、エルミナさんのことを、元飼い主とその父親にしたのですが、信じてもらえなくて……。」
「普通、そうでしょうね。」
僕でも『馬があなたのことをこう言ってた』とか言われても、何を言ってるんだコイツは、みたいに思うだろう。
「しかし、息子の方は矢張り心当たりがあるのでしょう、少しそわそわしてました。それで、エルミナさんの言われることが、正しいと確信しましたよ。あ、もちろん、エルミナさんを信じてなかった訳ではないのですよ。」
「大丈夫です。本人の主観が入ってる以上、そのまま鵜呑みにする訳にはいかないですからね。」
「ご理解いただけて、助かります。それで、エルミナさんに直接話をしていただけないかと思いまして。」
「つまり、トリートさんと一緒にエラスに来いということですか?」
「はい。」
「もしかして、トリートさんは、エラスに僕たちを同行させることで、護衛費用を浮かそうと思っているのではないですか?」
「おや。バレてしまいましたか。」
この人、隠すつもりがないみたいだな。
「失礼ですが、僕たちにメリットはない様に思いますが。」
「いえ。父親の弱みを握ればユウマさんにもメリットが有ります。」
「どんなことですか?」
「彼はエラスでも力を持った商人なので、多少の我が儘は通ります。例えば、街に馬車を入れたいとか。ユウマさんも、例えば御者として街に入るなどということができるかも知れませんよ。」
「そんな事が通るんですか?」
エラスは、馬も入れないはずだけど。
「荷物を運ぶのに使うと言えば、断り難いでしょう。魔動車が行ける場所は限られますから。もちろん、普通の商人なら、当然認められません。」
「でも、弱みにつけこんでというのは、どうも……。」
「ならば、対価を支払うという条件なら良いのではないでしょうか?その場合でも、エルミナさんの件は、相手との交渉はやり易くなりますし。」
「なるほど。そうですね。」
たしかに、その程度なら良い気もする。
でも、エルミナは、元の飼い主には会いたくないんじゃないないかな?
「エルミナにも聞いてみますね。エルミナ、ちょっとこっち来てくれる?」
「エルミナさん、こんにちは。」
エルミナが来ると、トリートさんは、彼女に挨拶をした。
「こんにちは。今の話、聞いてました。ユウマさん、私は構いません。」
「本当に良いの?」
「はい。元の飼い主に会いたくないのは確かですが、逃げて来てしまって申し訳ない気持ちも有ります。今なら直接話もできるので、ちゃんと話をしておきたいと思います。」
「そう?無理してない?」
「大丈夫です。」
「ありがとう、エルミナ。トリートさん、この話お受けしようと思いますが、できれば指名依頼の形にしてもらえないでしょうか。」
「指名依頼ですか?」
「はい。ギルドを通して、依頼としてもらう方がやり易いです。もちろん、報酬は設定しないといけないでしょうが、支払ったことにしてもらうというのでも良いです。」
「わかりました。では、ワーテンのギルドに出しておきます。ちなみに、出発は5日後の朝の予定です。その時は、迎えに来させますので。」
5日後なら、急いでいるのはわかるな。僕が断ったら、護衛依頼を出さないといけない訳だし。
「わざわざ、すみません。」
「いえいえ。それでは、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「エルミナ、本当に良かったの?」
トリートさんが帰った後、改めてエルミナに聞いてみた。
さっきはああ言っていたが、実際には僕のために無理をしているんじゃないかという心配があったからだ。
「さっき言ったのは、本当のことです。でも、何より、私でもユウマさんの役に立てそうなので……。」
「エルミナ、ありがとう!」
思わず、エルミナに抱き付いた。
他の者も見てるけど、ここは空気を読んでくれたのだろう、誰も何も言わない。
「あのー。さっきの続きをお願いできなのです?」
と思ったら、そんなことを言ってくるのがいた。
もちろん、イリデイだ。
後ろで、皆が若干呆れた様に見ていた。
特に、クレアは何か言いたげだ。
後でお説教とかありそうだな。
~~~
翌日は、天気も良くなったので、移動は順調だった。
「間もなく、ワーテンだな。」
ジョーンズさんが、そう呟いた。
「そうですね。今日は良いペースで来ましたからね。」
『ユウマ。少し前の繁みに怪しい人たちが潜んでいるみたい。』
ヴァミリオから念話が入った。
上を見ると、高度を下げたヴァミリオが見えた。
前方に目を移すと、右手にまとまった繁みが有った。
『ヴァミリオ、ありがとう。あの、右前に見える繁みかな?』
『そうだよ。』
『何人位いる?』
『そんなに多くないね。1、2……6人かな。どうする?ボクが燃やしとこうか?』
『いやいや、やめておいてね。』
『そうかー。』
ヴァミリオは残念そうだが、そんなことしたら、辺り一面焼け野原になっちゃうからね。
しかし、6人とは少ないな。そんなに盗賊とは遭遇してないから、平均的な人数はわからないけど……。
『ヴァミリオは、ワーテンに行って、盗賊らしき人たちが現れた事をギルドの人に伝えてくれる?』
『わかったー!』
そう言って高度を上げるヴァミリオ。
ギルドなら、ヴァミリオが行っても対応してくれるだろう。
「ジョーンズさん、あそこの繁みに盗賊らしき奴等が待ち伏せしてるみたいです。」
「そうか。どうする?」
こういう時のためにレモンを連れて来たんだからな。
「お任せください。エルミナ、レモンの所にお願い。」
「わかりました。」
レモンが乗っている最後尾の馬車の所に行くと、レモンは相変わらず寝ていた。
「レモン、起きて!」
「うーん。どうしたの?」
「盗賊らしき人たちが現れたんだ。レモンの出番だよ。」
「フフフ。任せて!」
散々待たせたせいか、殺る気満々みたいだ。
「えーと。やり過ぎないでね。あと、ほぼ確実に盗賊だと思うけど、相手が襲って来るまでは待ってね。」
「わかってるわよ。ちなみに、人数は?」
「6人らしいよ。」
「少ないわね……あ、良い事思い付いた!」
絶対、良からぬ事だと思うけどね。
「ちなみに、どうするの?」
「それは、見てのお楽しみで!あそこの川原にに、岩がいくつも転がっているじゃない?あそこに行って休むように言ってもらえる?」
レモンの視線を辿ると、確かにそれらしい所が有った。
道から大分左に逸れることになるな。
「わかった。エルミナ、ジョーンズさんの所に戻って。」
「はい。」
お楽しみって、不安しかないけど……まあ、相手は盗賊だろうし良いかな。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる